2008年03月15日14時28分掲載  無料記事
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チベット問題

北京五輪控え人権問題を国際社会にアピール? 各地でチベット人が抗議行動

  【パリ14=飛田正夫】チベットのラサで14日起きた暴動に先立ち、このところ世界各地で中国の圧制に抗議するチベット人たちの行動が続いていた。フランスのメディアはそれを詳しく報じ、チベット仏教の最高指導者ダライ・ラマ14世の支持者らが、あと5ヶ月後に迫った北京オリンピックを前に、チベットの人権問題を国際社会の舞台に持ち込む戦略に出たのではないかと見ている。 
 
 ダライ・ラマは、亡命から49周年目にあたる3月10日、チベット亡命政府のある北インドのダルムサラで支持者を前に演説し、チベットは「中国の恒常的な圧制下の恐怖の中で60年近くにわたって生きてきた」が、これは「驚くべき重大な人権無視である」と中国の圧制を激しく批判した。 
 
 また、ダルムサラからチベット僧とインド生まれのチベット人亡命者100人(内5人は女性)ほどが、国土の正当な継承権を持つチベットへ向かって抗議のデモ行進を開始したが、中国のチベット支配を承認するインド政府によって逮捕されダルムサラにトラックで連れ戻された。13日のフランスのA2テレビ、「リベラション紙」等が伝えている。 
 
 ギリシャでは12人ほどのチベット人がオリンピック発祥の地であるオリンピアを訪れ、象徴的に聖火に点火するという事件があった。聖火は20カ国ほどを通ってチベット国境近くを通過することになっている。ネパールでは、在中国大使館へ向かったチベット僧のデモが警官隊に阻止された。 
 
 フランスの3チャンネルテレビの12日の報道によると、3月10日チベットの首都ラサで起きた僧侶の抗議に対し中国側が圧力をかけた。中国の外務省スポースクマンは、今後もこのような「非合法の行為に対し取り締まる」とし、また「チベットは古来から中国の一部である」とも発言したという。 
 
 ダライ・ラマはこれまでチベットの独立要求の発言は表向き控え、中国への要求は言語や文化の保護、ヒマラヤの環境保全などについてに留めていたと見られていた。しかし、最近は欧米の支持を背景に、中国に対する人権抑圧の連続抗議デモを展開するまでになっており、チベット「独立への意思を新たに表明」した(フランスの「リベラション紙」3月11日)。一連の動きについて、ダライ・ラマにくわしい専門家は「中国にチベットの文化的自治権の交渉を拒否された不満」を「北京オリンピックの国際舞台の遡上に乗せた」ものと分析している(フランスの経済紙「レゼエコー紙」3月11日)。 
 
 中国は9日パキスタンとアフガニスタン国境付近の新疆で、北京オリンピック反対を準備するイスラム主義者のテロリストを逮捕したと発表したが、これは、ダライ・ラマの中国に対する抗議から国際社会の注視を逸らせるためと推測されている(「フィガロ紙」3月10日)。 
 
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