2008年03月27日14時07分掲載  無料記事
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二極化社会を問う

29日に都内で”反貧困フェスタ” 人びとに貧困の実相を伝え、行動を呼びかける

  個別の問題の枠や政治的立場を超え、「反貧困」の旗を掲げて結び付き、連携・連帯して貧困問題を社会的・政治的に解決することを目指して活動する、東京発のネットワーク組織「反貧困ネットワーク」は3月29日(土)、千代田区立神田一橋中学校を会場に「反貧困フェスタ2008」を開催する。 フェスタは「貧困をどう伝えるか」をテーマに掲げ、貧困問題に取り組む様々な団体がそれぞれシンポジウムや講演会、ワークショップ、映画祭、演劇・演奏、よろず相談会、フリーマーケットなどを催すという、とてもバラエティに富んだ構成になっている。会場へは地下鉄半蔵門線・都営新宿線「神保町駅」、東西線「竹橋駅」が便利。(坂本正義) 
 
<反貧困フェスタ2008の意義> 
 
  反貧困ネットワークは「日本に貧困が存在すること、そしてその実態を伝えたい」と、ワーキングプア、ネットカフェ難民、派遣労働者、障害者、生活保護受給者、多重債務被害者、DV(ドメスティック・バイオレンス)被害者、シングルマザーなど、さまざまの困難な状況に置かれた人たち、当事者への支援活動に関わってきた市民団体・労働組合関係者や法律家・学者などが集まり、2007年10月に発足した。 
 
  その反貧困ネットワークが3月18日(火)、弁護士会館において記者会見を開き、フェスタの意義やイベント内容を発表した。 
 
  反貧困ネットワーク代表を務める宇都宮健児弁護士は、「マスコミ等で貧困・格差問題に関していろいろと報道されていますが、貧困の実態に対する理解は、まだまだ社会に広がっていないと強く感じています。貧困問題については、未だ自己責任論が根強い状況です。私たちは、社会に貧困の実態を伝え共有していくことが、貧困問題を解決するためにとても重要だと思うのです。フェスタには、70を超える団体が参加します。フェスタの様々な企画を通じて、日本にある貧困問題を伝えていきたく思っています」と訴えた。 
 
 また、事務局長を務める湯浅誠氏(NPO法人自立生活サポートセンター・もやい事務局長)は、「貧困問題は、一昨年末あたりから徐々にマスコミなどで取り上げられるようになってきました。その結果、『貧困問題という事実を認めた上で、いろいろな立場を超えて何か行動を起こさなければならないのではないか』といった考えが、社会に広まってきたように思います。以前は『貧困』という言葉をほとんど見かけることがなかったので、日本社会も随分様変わりしたなと思っています。しかし日本政府は、依然として『日本の中の貧困は大したことはない』という態度を変えていません。日本政府に貧困問題の存在を認めさせた上で、今後どうするかを語るためには、まずはもう一歩、一般の人たちに貧困問題への関心を寄せてもらい、『何か行動しなければ』と思ってもらう必要があります。貧困問題の解決の鍵を握っているのは、我々のような活動者ではなく、一般の人たちなのです」と語った。 
 
 さらに、フェスタを企画した理由について、「一般の人たちが参加し易いように、フェスティバルという形式を採用しました。一般の人たちに気軽に参加してもらいたいと思っています。フェスタは、我々活動者にとっては『貧困問題をどのように伝えるか』を考える機会であり、参加者にとっては『貧困問題が今、どうなっているのか』を学ぶ機会なのです」と説明した。 
 
 
 
<湯浅事務局長に聞く反貧困ネットワークの今後の展望> 
 
 フェスタ直前の3月26日(水)、フェスタの準備に忙しい合間を縫って、湯浅氏に反貧困ネットワークの今後の展望について語ってもらった。 
 
 まず反貧困ネットワークの役割について。 
 
「反貧困ネットワークは、貧困問題に関して、良くも悪くも象徴的な役割を担っていくことになると思います。反貧困ネットワークの役割は、それぞれに現場を抱えている各団体の個々の運動にもう一つ上乗せする、つまり社会全体に向けて情報発信していくことに重点を置くことになるでしょう。そうした役割を担い続けていくとすると、これはあくまで私個人の意見ですが、今後も反貧困フェスタ2008のような、貧困問題に関する象徴的なイベントを不定期に繰り返していくという活動スタイルが、今の反貧困ネットワークの力量を鑑みて一番効果のある方法ではないかと考えています」 
 
 また別の役割として、「今回のフェスタにも当てはまることですが、これからはいろんな運動体の間にあるしがらみを揺るがすような役割を担っていきたく思ってます。我々のように運動の現場、それも末端で活動している人たちの間では、連合系だとか全労連系といった運動系列へのこだわりは薄いように感じています。それに、今は運動系列の違いを強調する時期でもないと思うのです。あくまで貧困問題という分野に限ったことですが、反貧困ネットワークを通じて、運動系列間のしがらみに対し、少しでも地殻変動を促したいと思っています。これは、決して新しいナショナルセンターを作るということではありませんし、反貧困ネットワークが一つのセクトのようになってしまわないよう気を付けなければいけないと思っています。連合体形式を採って、個々の団体の活動をサポートしたり、連携を促していく役割を担っていこうと思っています」と語った。 
 
 さらに、「記者会見でも話しましたが、貧困問題の解決には、やはり一般の人たちにどれだけ働きかけることができるかにかかっていると思います。ですから反貧困ネットワークは、個々の運動団体と社会全体もしくは個々の一般人との橋渡しの役割を担いたいと思っています」と、「橋渡し」としての役割も強調した。 
 
  反貧困ネットワークのような運動を、いかにして全国に拡げていくかを尋ねたところ、湯浅氏は、「どれほどの影響があるかは未知数ですが、反貧困フェスタ2008の中で、反貧困ネットワークのような運動を全国に拡げようという感じの呼びかけを発信したいと思っています。私のイメージとしては、9条の会のように、どこかに中心となる本部を構えるのではなく、いろいろな場所で『反貧困』の旗を掲げて運動していくようになればいいなと思っています」と答えている。 
 
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貧困という状況に追い込まれていない人が、貧困問題を「自分には関係ないから」とか、「嫌なものは見たくない」などと考え、目を背けようとするのは人情かもしれない。 しかし反貧困フェスタ2008は、「フェスタ」と銘打っていることからも分かるように「お祭り」的な要素をふんだんに盛り込んでいるので、楽しみながら貧困問題を学ぶことができそうだ。湯浅氏が言うように、気軽に会場へ足を運んでみてはいかがだろうか。 


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