2008年03月31日16時49分掲載  無料記事
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ビルマ民主化

軍政の新憲法草案拒否を全世界の国会議員に訴える ビルマの国会議員連合

  ビルマ(ミャンマー)の国会議員連合は3月31日、同国の軍政が5月に予定している新憲法草案の国民投票の結果を国際社会が承認しないよう求めるアピールを、全世界の国会議員にむけて発表した。軍政は、民主化勢力の指導者アウンサンスーチーさんが率いる国民民主連盟(NLD)が圧勝した1990年の総選挙結果を認めず、当選議員による国会を一度も召集しないまま権力の座に居座りつづけている。議員連合にはNLD以外の少数民族政党も加わり、国民に「みせかけの憲法」への反対を呼びかけるとともに、各国議員がそれぞれの政府や国連にビルマの民主化への働きかけを強めてほしいと訴えている。(ベリタ通信) 
 
ビルマ(ミャンマー)の国会議員から 
全世界の国会議員へのアピール 
軍政の見せかけの憲法をビルマ国民は拒否する 
国際社会も承認するべきではない 
 
2008年3月31日 
 
国会議員の皆さま 
 
私たちは1990年の総選挙でビルマ国民から選ばれた国会議員です。 
ビルマを民主主義に導く任務を負っています。 
 
ビルマはミャンマーとも呼ばれています。軍事政権(正式名称は国家平和発展評議会=SPDC)によって国名が変更されました。軍政は、ビルマ全土で数百万人が民主主義、人権擁護、そして軍政の終結を求めて行ったデモを暴力によって弾圧した後、1990年に総選挙を行いました。軍政は、自らが背後で支援する民族統一党(NUP)の候補者に投票するよう、国民に脅しや圧力をかけましたが、選挙の結果、ノーベル平和賞受賞者アウンサンスーチー氏が率いる国民民主連盟(NLD)と、友党である民族政党が議席の85%を獲得しました。ビルマ国民は投票を通じて、軍事独裁政権から自由になり民主的な社会で暮らしたいという希望を明確に表したのです。ところがSPDCは選挙結果を今に至るまで尊重しないどころか、軍事独裁の恒久化を試みています。そのために、国軍による支配を合法化し、国軍最高司令官に最大の権力を与える憲法を制定しようとしています。 
 
アウンサンスーチー氏の指導の下、私たちはSPDCに対し、選挙の勝者であるNLDや民族代表らと、実質的な内容を伴う、期限を定めた対話を行うよう求めてきました。国連や各国政府もまた、国民和解と民主化をもたらし、数十年来の社会・政治・経済的危機からビルマを救うために、この種の政治対話を始めるよう、SPDCに繰り返し呼びかけてきました。国連安全保障理事会は2007年10月11日、全会一致でビルマについての初の議長声明を採択し「国連の直接支援の下、包括的な国民和解を実現させるために、ミャンマー政府はアウンサンスーチー氏などすべての関係者や民族団体と真の対話を行うのに必要な条件を整えなければならない」と強調しました。 
 
しかしこれまでのところ、軍政は国連や国際社会の度重なる要請を無視しています。現在でもビルマ国内にはアウンサンスーチー氏を始めとして1800人以上の政治囚が存在します。また2007年11月以降、百人近くの活動家が新たに逮捕されました。少数民族の民間人に対する軍事攻撃もやまないどころか、激しくなる一方です。攻撃により、ビルマ東部だけで非ビルマ民族数十万人が国内避難民(IDP)となり、数千もの村が焼き討ちなどで破壊されました。この結果、5才未満の乳幼児を含む数千人が殺され、2百万人以上が近隣国に逃れ、歓迎されざる難民となっています。また、18歳以下の子ども7千人以上がビルマ軍に強制的に入隊させられています。非ビルマ民族の成人女性と少女数千人がビルマ軍兵士に強かんされていますが、兵士側が罪に問われることはありません。 
 
軍政は2008年2月9日、今年5月に憲法を承認するための国民投票を行い、2010年に総選挙を行うと発表しました。国連事務総長は3月6日にイブラヒム・ガンバリ特使をビルマに送り、説得的な手続きで国民和解を始めるように軍政に働きかけることを目指しました。しかし、軍政を説得し、アウンサンスーチー氏率いる民主化勢力や国連と建設的な協力をさせようとしたガンバリ氏の努力は功を奏しませんでした。情報大臣で渉外担当チームの責任者のチョーサン准将は2008年3月7日、国連事務総長と国連からの勧告すべてを拒否する、と特使に伝えたのです。 
 
1991年からこれまで18年間、国連はビルマ軍政に対し、人権侵害をやめて前向きな改革を始めるように働きかけてきました。働きかけは、国連総会や国連人権委員会(現国連人権理事会)、国連経済社会理事会、そして国際労働機関が採択した約30の決議や協議の結果、また最近では国連安保理の議長声明などの形をとりました。しかし国連の努力は実らないまま、ビルマの状況は一層悪化しています。そして軍政は今、見せかけの憲法を使って軍事独裁支配を続けようと計画しています。安保理は国連の最高機関ですが、有効な策を講じることができず、軍政の一方的な行為を阻止し、真の国民和解と民主化改革を始めさせることに失敗しています。潘基文事務総長もほとんど何もせず、事務総長という立場を活用して、安保理がビルマに対して強く有効な措置を取るよう呼びかけることもしていません。また事務総長の特使であるガンバリ氏も、軍政に有利な形で国連を誤解に導いているようです。中国は軍政の主要な貿易相手国で武器提供国でもありますが、安保理がビルマについて何もできないように拒否権を発動するとの警告を発し続けています。 
 
このような状況の下、私たちはビルマ国民と国会議員とを代表して、世界中の国会議員に対し以下の緊急の要請をするものです。 
 
(1)国連安保理の勧告に直ちに全面的に従うよう、軍政に働きかけること。アウンサンスーチー氏率いる民主化勢力や国連と全面的に協力するよう、軍政に外交的・経済的圧力をかけることをそれぞれの政府に要請すること。 
 
(2)軍政の憲法を受け入れず、承認もしないよう宣言すること。それぞれの政府に対しても同様の宣言をするよう働きかけること。憲法草案起草にあたり、国民民主連盟(NLD)や民族政党代表の参加はありませんでしたし、諸民族の要望も取り込まれていません。 
 
(3)国連安保理の勧告に全面的に従うことについて、軍政に拘束力のある決議を採択するよう、安保理に働きかけること。国連事務総長のマンデートを強化するよう、同じく安保理に働きかけること。またそれぞれの政府に対しても同様の働きかけを求めること。 
 
(4)それぞれの政府に対し、軍政への武器や諜報手段の売却を直ちにやめ、国連安保理が国際的な武器禁輸措置および金融・銀行措置を取るように働きかけるよう求めること。武器禁輸措置、金融・銀行措置については、南アフリカのツツ大司教やコスタリカのアリアス大統領ら10人のノーベル平和賞受賞者が2008年2月19日付の声明でこれを支持しています。 
 
(5)中国政府に対し、ビルマ軍政をかばうのをやめ、ビルマが包括的・民主的なプロセスを通じて改革の方向に向かうように国連安保理理事国と協力するよう働きかけること。それぞれの政府に対しても同様の働きかけを行うよう求めること。 
 
1988年の民主化蜂起の際には、平和的にデモ参加者のうち、少なくとも1万人が殺されました。ビルマの人権状況に関する国連特別報告者のピニェイロ教授によれば、2007年8〜9月に仏教僧が中心となって行った平和的なデモの際には、少なくとも31人が死亡し、約百人が行方不明となっているほか、それ以前からの1100人の政治囚に加えて、新たに700人が投獄されました。ヒューマン・ライツ・ウォッチとアムネスティ・インターナショナルは、8〜9月のデモでの死亡者数はピニェイロ報告よりもずっと多いと推測しています。民主化を求める19年間に渡る非暴力運動で、数万人もの無実の人々が殺されました。 
 
私たちはビルマ国民に、来る国民投票で軍政の見せかけの憲法を承認しないよう「反対票」を入れるよう呼びかけており、投票する多くの人々がそのように反対票を入れるでしょう。しかし同時に私たちは、軍政が詐欺やごまかしをしてでも勝利を宣言するだろうことも予測しています。軍政に対する不満を国民が募らせるにつれ、そして軍政が見せかけの憲法を利用して自らの支配を合法化しようとする動きに対決する用意を国民が整えるにつれ、平和的な手段による非武装の抗議者と、軍政の残虐で無慈悲な軍隊との間で衝突が起きるのは避けられそうにありません。皆さんが、私たちの願いを真剣に検討し、これ以上ビルマで人が無残に殺されないように、ただちに行動を取ってくださることを願います。 
 
国会代行委員会(CRPP) 
ビルマ(ミャンマー)議員連合 
 
連絡先 
 
(1)プーチンシアンタン 
国会議員(チン州ティデイム第二選挙区) 
ゾミ民族評議会(ZNC)議長 
国会代行委員会(CRPP)委員 
統一諸民族連合(UNA)委員 
 
(2)ナイントゥンテイン 
国会議員(モン州タンビュザヤ第二選挙区) 
モン民族民主戦線(MNDF)議長 
国会代行委員会(CRPP)委員 
統一諸民族連合(UNA)幹部会委員 
 
(3)タウンコタン 
国会議員(ザガイン管区タム選挙区) 
所属:諸民族民主連盟(UNLD) 
国会代行委員会(CRPP)委員 
 
(4)テインペ 
国会議員(ザガイン管区カンバル郡第一選挙区) 
無所属 
国会代行委員会(CRPP)委員 
 
(5)ソーウィン 
国会議員(バゴー(ペグー)管区バゴー(ペグー)第一選挙区) 
民族民主党(PND)書記 
国会代行委員会(CRPP)委員 
 
(6)ミンナイン博士 
国会議員(ザガイン管区カンバル郡第二選挙区) 
所属:国民民主連盟(NLD) 
 
(7)ニープ 
国会議員(アラカン(ヤカイン)州グワ郡選挙区) 
所属:国民民主連盟(NLD) 
 
(8)ティンミントゥ博士 
国会議員(イラワディ管区パンタノー郡第一選挙区) 
所属:国民民主連盟(NLD) 
 
(9)テインミン 
国会議員(ラングーン管区タムウェ区第二選挙区) 
所属:国民民主連盟(NLD) 
 
(10)ティンアウンアウン 
国会議員(マンダレー管区マンダレー北西区第一選挙区) 
所属:国民民主連盟(NLD) 
 
(11)オンマウン 
国会議員(バゴー(ペグー)管区ニャウンレビン郡第一選挙区) 
所属:国民民主連盟(NLD) 
 
(12)ナンキントウェミン 
国会議員(カレン州パアン郡第三選挙区) 
所属:国民民主連盟(NLD) 
 
(13)キンテイチュエ 
国会議員(モン州チャウンゾン郡第二選挙区) 
所属:国民民主連盟(NLD) 
 
(14)ニュンフライン 
国会議員(マグエー管区アウンラン郡第一選挙区) 
所属:国民民主連盟(NLD) 
 
日本語訳:ビルマ情報ネットワーク 
 
出典:An Appeal Letter from Members of Parliament from Burma (Myanmar) to Parliamentarians around the World, March 31, 2008 
 
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配布元: BurmaInfo(ビルマ情報ネットワーク) 
    http://www.burmainfo.org 


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