2008年07月20日14時23分掲載  無料記事
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インドネシアのユドヨノ大統領に難題出現?

 インドネシアのユドヨノ大統領が、来年実施される大統領選挙で“出馬資格”という厄介な問題に直面しそうな雲行きだ。その問題とは、国会で現在審議中の大統領選挙に関する新法案が原因。この法案のポイントは、大統領選挙に立候補する者は、その所属政党が直近の総選挙で15%の得票率を獲得している必要があるというもの。ユドヨノ大統領の所属政党は、前回の2004年総選挙で、7・5%しか獲得しておらず、このままでは、ユドヨノ大統領の出馬資格がなくなってしまうからだ。(クアラルンプール=和田等) 
 
 マレーシアの英字紙ニュー・ストレーツ・タイムズのエミー・チュー記者(女性)が、同紙のコラムでこの辺の事情を伝えている。 
 
 インドネシアでは7月12日に、来年4月9日に総選挙が実施される選挙運動が7月12日にスタートした。国会で審議中の次期大統領選に関する新法案が、8月にも国会を通過する見込みだけに、各政党とも得票率にアップに懸命にならざるを得ない情勢にある。 
 
 前回7・5%の得票率を獲得しただけの、ユドヨノ大統領の所属政党である民主党は、総選挙の後に実施される大統領選をにらみ、得票率の大幅かさ上げが至上命令になる。 
 
 直近の総選挙での得票率を現行の3%から5倍の15%に引き上げるのは、大統領選挙への立候補者乱立を防ぐための措置。しかし、ユドヨノ大統領が党首を務める民主党は、得票率を2倍以上に高めなければならないが、これは単独では無理との悲観的な見方が既に広がっている。 
 
 総選挙前に急きょユドヨノ大統領が創設した民主党は、ユドヨノ氏が大統領に就任してから人気を高めてきた。しかし、04年の大統領選で6割の支持を集めたユドヨノ大統領は、最近の世界的な石油価格の急騰を受け、補助金削減のため同大統領の燃料価格を2回引き上げた。1回目が2005年で平均125%の引き上げ、2回目が今年5月で平均29%引き上げだった。このため、大統領の人気が低下し、民主党が得票率を前回の倍以上に増やすことは不可能との観測が有力だ。 
 
 その場合、民主党は大統領選挙立候補に必要なだけの得票率が得られなかったほかの政党と連合を組み、合計得票率を15%以上にすることでユドヨノ大統領の再選を狙うという選択肢が既に浮上している。 
 
 しかし、連合を組み政党が増えれば増えるほど、ほかの政党への配慮が必要になり、妥協を強いられる余地が大きくなり、大統領の立場が弱くなる、ユドヨノ大統領の選挙参謀たちは、心配している。 
 
 世論調査機関インド・バロメーターが7月9日に発表した世論調査によれば、民主党の支持率は9・6%で3位だった。支持率1位はメガワティ前大統領率いる闘争民主党で28・8%、ユソフ・カラ副大統領率いる、スハルト政権時の与党ゴルカルが2位につけ、支持率は12%。 
 
 民主党の現在の国会での議席数は総議席数(560)の10%にあたる56議席にしかすぎない。同党は来年の選挙では、一応100議席以上の強気の目標を設定している。 
 
 同党のスタン・バトゥガナ国会議員団秘書官は、2004年の選挙前に設立された民主党は、新党として、ほとんどゼロの状態から出発したものの、56議席を獲得した。それ以降、基盤固めをしてきたので次回選挙での100議席の獲得も可能との楽観的な見通しを示している。 
 
 また、このところ大統領の支持率低下に対しても「不安は感じていない」として、「選挙の投票まではまだ時間がある。時期がくれば大統領の人気がまた上がると確信している」と述べている。 
 
 これに対してインド・バロメーターのムハンマド・クォダリ氏は、「燃料価格や食料価格の上昇のほか、失業率が9・1%(約2000万人)に達し、1日あたりの収入が1・55米ドル(5リンギ相当)以下の貧困層が3900万人存在することにみられるように、庶民の生活が苦しくなっていることに大統領の支持率低下の原因がある」と指摘。 
 
 「大統領はアチェ自治州での和平交渉やテロリスト摘発などの治安面で成功を収めたとみられているが、今後草の根の庶民の胃袋をどう満たしていくかの手腕を問われることになる」としている。 
 
 一方、民主党の足踏みとは対照的に、国会第2党の闘争民主党の支持率が高まっている。これは、闘争民主党以外の政党は、政権よりとみなす見方が、国民の間で根強いためだ。闘争民主党を唯一の野党としてとらえ、政府に対する不満の受け皿として考えているようだと、ムハンマド氏は指摘する。 
 
 スカルノ初代大統領の娘で、スハルト政権の末期に「反独裁」のシンボルとして祭り上げられた観のあるメガワティ前大統領の庶民の間での人気は依然として高い。 
 
 来年の大統領選挙は、ユドヨノ大統領とメガワティ大統領の一騎打ちになる公算が大きいが、現時点ではユドヨノ大統領がやや有利と見る向きも多い。 
 
 しかし、「メガワティ前大統領がコンビを組む副大統領候補に誰を指名するかで形勢が逆転する可能性もある」(闘争民主党党員で、アブドゥルラフマン・ワヒド元大統領の弟のハシム・ワヒド氏)との声もあり、ユドヨノ大統領が再選されるかどうかはまだまだ予断を許さない情勢にある。 


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