2008年09月04日10時45分掲載  無料記事
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【破綻した築地市場移転計画】(3) 東京都専門家会議の内容を検証する 畑明郎(日本環境学会会長・大阪市立大学大学院教授) 

  東京・築地市場の移転先とされている江東区豊洲の土壌汚染問題で、日本環境学会は8月20日、移転準備の即時中止などを求める声明を都に提出した。声明は8月9日に富山県射水市で開いた同学会総会で採択したもので、会長の畑明郎・大阪市立大大学院教授らが都庁を訪れ申し入れた。声明は、7月26日に土壌汚染対策の報告書をまとめた都の専門家会議について「調査の不備は多岐にわたり、内容は粗雑」と批判。新たに技術会議を設けて移転事業を進める東京都勢に対しては「都民の持つ不安と不信を助長するばかりで、解決策にもつながらない」と主張している。以下、『消費者リポート』に掲載された、畑明郎日本環境学会会長のレポートを紹介する。(ベリタ編集部) 
 
◆土壌で環境基準の4万3000倍のベンゼン検出 
 
  2008年2〜4月に実施された東京ガス豊洲工場跡地の詳細調査結果が、08年5月‐9日の第5回「豊洲新市場予定地における土壌汚染対策等に関する専門家会議」で報告されました。4122か所の土壌・地下水調査では、表層土壌でベンゼンが最高で環境基準の4万3000倍、シアン化合物が同860倍、地下水でベンゼンが同1万倍、シアン化合物が130倍検出され嗽 ました。 
 
  07年8−9月に実施された都の追加調査では、土壌でベンゼンが1600倍、シアン化合物が33倍、地下水でベンゼンが1000倍、シアン化合物が80倍でしたので、最高濃度をすべて更新しました。 
 
  1998〜99年に実施された東京ガスの調査では、最高濃度は土壌でベンゼン1500倍、シアン化合物490倍、地下水でベ◆ンゼン110倍、シアン化合物49倍でしたので、調査するたびに最高濃度が更新され、土壌汚染の深刻さが明らかになりました。 
 
  表層土壌の環境基準超過率(全調査地点に占める汚染検出地点の割合) ではベンゼンが0 ・8%、シアン化合物が2 ・2%、ヒ素が7・4% で、地下水ではベンゼンが13・6%、シアン化合物が23・4%、ヒ素が4・3%で、最大で予定地の約4分の1 (約10ha)が汚染されていました。 
 
◆地下土壌は4000倍のベンゼン、930倍のシアン化合物 
 
  詳細調査で表層土壌が環境基準を超えるか、地下水が排水基準(環境基準の10倍)を超える441か所では、地下1m間隔の土壌汚染調査(絞り込み調査)が実施されました。その結果、最高4000倍のベンゼン、930倍のシ 
アン化合物が検出され、環境基準超過率はベンゼンが21・3%、シアン化合物が23・7%と約4分の1でした。 
 
  さらに今後、東京都環境確保条例により、地下水が環境基準を超えた1034か所について、地下1m間隔の土壌汚染調査を行なう予定です。しかし、98―99年には、すでに都条例に基づく土壌汚染調査と対策を東京ガスが実施し、都はその結果を承認していました。今回が条例の適用条件3000平方メートル以上の土地改変時だからと言って、同じ土地に再び調査を実施することは、東京ガスの調査と対策が不十分だったことを都が認めることになります。 
 
  また、1000か所以上のボーリング調査を実施するのなら、その結果が出るのを待って対策案をまとめるべきで、すべての調査が終わっていない段階で対策案を決定することには問題があります。 
 
◆対策案の概要 
 
  08年7月13日の第8回専門家会議で報告された対策案は、以下のようなものでした。 
 
ヽ導攻茲亮縁部と建物の地下周囲を上水矢板で囲む 
旧地盤面(荒川基準水面=AP+4 m)から2 m(AP+2 0 までの土壌を掘削し入れ換え、さらに上部に2 ・5m盛土する 
AP+2 mより下部の操業由来の汚染により環境基準を超過した土壌を基準以下に処理する。 
し物建設地の地下水は、環境基準以下まで浄化する 
シ物建設地以外の地下水は排水基準以下まで処理する 
γ浪漆絨未鬘腺弌棕 mに管理する 
 
◆対策案の問題点 
 
  対策案には、次のような問題点があると考えます。 
 
〕楽町層調査の必要性 
絞り込み調査の土壌採取深度は深部シルト(粘性土)地層の有楽町層までとなっていますが、汚染物質は地層の境界付近に滞留することが多いので、有楽町層上部までボーリングすべきです。また、有楽町層に近づくに従って汚染物質の濃度が下がっているからといって、汚染が有楽町層まで達していないとは結論できません。 
 
地下水位管理の困難性 
有楽町層の深度差により、地下水位は区域によって高低差があります。このように水位勾配のある地下水位を全体でAP+2 mに保つことは技術的に困難です。従って、旧地盤面(AP+4 m) から2mの土壌を入れ換えても、地下水位の鉛直(重力方向)上昇や毛細管現象により再汚染される危険性があります。 
 
C浪漆綣弯紊虜て饑 
止水矢板で街区周縁部や建物周囲の地下水を遮水するとしていますが、矢板で完全に遮水することはできず、必ず漏水が生じます。ちなみに、専門家会議の平田健正座長も係わった大阪アメニティパーク土壌・地下水汚染事件では、厚さ50cmのコンクリート地下連続壁やSMW遮水壁でも建物下部の湧水を遮水できず、建設当初から約10㎥/日、5年後には約30㎥/日もの湧水が流入しました。 
 
っ浪漆緇化の困難性 
平田座長自身が、「膨大な金をかけるなら別だが、環境基準まで浄化するのは到底無理…」(『週刊金曜日』08 
年3月14日号)、「特に汚染地下水の修復には、長い時間とこれに比例して多額の経費が必要になってきます(『環境時代』08年5 ・6月号) としている通り、汚染地下水を環境基準以下にすることは非常に困難で、これは「机上のプラン」にすぎません。 
 
シ〆鐡攵軆萢の困難性 
少なくとも80万㎥の壌混じりの土壌が発生し、AP+2 mより下部の汚染土壌を加えると、100万㎥以上の汚染土壌を処理しなければなりません。これはひとつの産業廃棄物処分場に匹敵します。ちなみに、青森・岩手県境不法投棄事件の産業廃棄物87万立方メートルの処理には、10年間で660億円の費用がかかりますが、汚染土壌処理も困難な問題です。 
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