2008年09月30日22時21分掲載  無料記事
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経済

米金融危機緊急救済法案の不成立 苦い経験を新自由主義見直しの好機に

  米下院で金融安定化法案が、政府その他からの圧倒的な圧力があったにも拘らず不成立に終わったことは、非常に興味深い。投票の寸前まで、政府は成立を確信していたようである。その上非常に興味深いことは、政府/財務省(共和党)から提出されたにも拘らず、反対は民主党よりも共和党の議員の側の方に多かった。賛成したのは、共和党では3分の1にすぎなかったのに対し、民主党議員の60%が賛成にまわった。解説者によれば、11月の総選挙が近く、選挙地盤の市民の法案に対する痛烈な批判と反対を無視するのが得策ではないと判断した共和党議員が多かったらしい。国民の意思がある程度反映されたことになる。しかし、民主党議員の現体制への批判力は完全に失われているようである。(バンクーバー=落合栄一郎) 
 
 市民からの反対の理由は、先の筆者の記事のごとく、基本的には、この法案が呻吟する多くの国民ではなく、すでに十分懐の肥えた少数者を救済するという馬鹿げた法案だからである。しかも、法案提出者自らが認めるように、7000億ドルというまことに莫大な数値には確たる根拠もなく、したがって、救済策が具体的にどういう風に使用され、どういう効果をあげることが期待されるかなどについても確たる予想すらない。 
 
 さて、これで金融危機はさらに混乱に向かうようで、そのとばっちりで市民(世界中の市民にも程度の差こそあれ)にもその影響が及ぶことは必定である。この苦い経験が、これまでの新自由主義/市場原理主義といういびつな経済体制を見直すよい機会になればと考える。ただ単なる付け焼き刃的対応策をのみ弄するのではなく、根本的な改革への取り組みを始めるべきである。このコメントはアメリカに追従してきた日本経済にも当てはまる。 


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