2008年11月07日22時00分掲載  無料記事
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文化

証拠写真欲しさに警察がフリーカメラマンからフィルムを押収 あれから34年、日本の報道を自由を問うて写真展とシンポジウムを開催  

  警察が証拠写真ほしさに立場の弱いフリーカメラマンに目を付け「殺人及び公務執行妨害」の家宅捜索令状で踏み込み、フィルムを押収していった事件があった。1971年11月10日、本土復帰に向け10日沖縄全島をあげてのゼネストがあり、その渦中で一人の警察官が火炎瓶を浴びて死亡した。その事件をめぐっての出来事だ。成り行きを危惧したメディア関係者有志は「報道の自由・吉岡カメラマンを守る会」(以降、守る会)を結成し、運動を進めた。あれから37年。「表現・報道の自由」をめぐる現在の状況を危惧する当時の有志約30人が真展+シンポジウム『写真眼2008―それは沖縄復帰からはじまった―』を開く。(ベリタ編集部) 
 
  1972年の沖縄復帰に向け、前年11月10日沖縄全島をあげてのゼネストがあり、その渦中で一人の警察官が火炎瓶を浴びて死亡する事件が起きた。当時、現場でフリーカメラマン吉岡氏らが写真取材をしていた。琉球警察は、証拠写真ほしさに立場の弱いフリーカメラマンに目を付け「殺人及び公務執行妨害」の家宅捜索令状で踏み込み、フィルムを押収していった。 
 
  このことを受け、成り行きを危惧したメディア関係者有志は「報道の自由・吉岡カメラマンを守る会」(以降、守る会)を結成し、フィルムの押収を「報道の自由の侵害」として那覇地裁に提訴した。 
 
  守る会には、延べ300人を超える人々が参加し、東京や沖縄で街頭での訴えやシンポジウム、出版活動など行い裁判闘争を支援した。法廷には、石川文洋氏(当時朝日新聞社)や上田哲氏(当時社会党、参議院議員)のほか、水俣の取材にあたっていたW・ユージン・スミス氏らが証言台に立った。 
 
  1974年、判決があり原告(吉岡攻)が勝訴した。「守る会」は、勝訴を獲得するまでの約2年半の活動で解散した。結集した仲間たちは、決して先鋭ではなく、蝸牛のごとき運動ではあったが、その後、取材とは、写真とは、報道とは、表現とは何かについて心に刻み、自分自身の腹の底に捉えるべき問題としてその後それぞれの活動を支えてきた。 
 
《写真展+シンポジウム》 
『写真眼2008―それは沖縄復帰からはじまったー』 
 
《東京展》 
◆日時:2008年11月18日(火)〜11月30日(日) 
《24日(月)休み、開場時間11:30〜23:00、ただし日曜は18:00まで》 
◆場所:東中野 ポレポレ坐ビル1F (Space&Cofé ポレポレ坐) 
東京都中野区東中野4−4−1ポレポレ坐ビル1F  TEL 03−3227-1405 
 
 
《沖縄展》 
◆日時:2009年1月27日(火)〜2月1日(日) 
◆場所:沖縄県立博物館・美術館 沖縄県民ギャラリー(1・2) 
      那覇市おもろまち3−1−1 TEL 098−941−1321 
 
●写真展+シンポジウムの趣旨 
あれから、37年が過ぎたが「表現・報道の自由」の今日的なもろもろの環境を思うにあたり、はたしていかなるものかと、当時の有志約30人が今一度参集し、写真展+シンポジウム『写真眼2008―それは沖縄復帰からはじまった―』を開催する運びとなった。写真展の内容及び会期中に行うシンポジウムの内容は別紙を予定している。 
 
■写真展出品内容 
  W・ユージン・スミス+アイリーン・スミス 「水俣」 
芥川 仁  「水俣の肖像」 
浅田恒穂  「オキナワ―サイゴン、34年」 
池宮城繁夫 「祭りの女たち―琉球文化を繋ぐ」 
石川文洋  「戦場の村の少女との再会(ベトナム)」 
岩尾克治  「東京六価クロム」 
  牛尾喜道  「夕張 1965年−2008年」 
  小川 卓  「同行四人(ベトナム)」 
大城弘明  「おばあー(祖母)」 
及部靖人  「石油基地と環境汚染の都市(アフガニスタン)」 
鍵和田良輔 「ベトナム―ベトナム戦争終結」 
神浦元彰  「憲法九条の現場」 
 川田文子  「『従軍慰安婦』の肖像」 
楠山忠之  「米軍の無差別空爆を追う―2003年夏・アフガニスタンの人々」 
国吉和夫  「KOZA 1970」 
桑原史成  「沖縄―復帰前後」 
小山博孝  「働く知的障害者たち」 
塩田武史  「水俣―深き渕より」 
新藤健一  「四川大地震」 
豊崎博光  「核時代の現場」  「広島(1955年・2007年)」 
橋本賢司  「上海の街角」 
真栄田弘一 「世替わり・沖縄・那覇」 
松村久美  「沖縄・離島 1972、2008」 
松本路子  「沖縄の布作家たち(『魂の布』2007年刊より)」 
宮城 護  「『鉄の暴風』が荒れ狂った沖縄」 
本橋誠一  「3つの後ろ姿―チェルノブイリ」 
森口 豁  「沖縄 糸満にて 1957」 
山崎陽一  「私の仕事―1969〜2008」 
山城博明  「馬喰(ばくろう)」 
吉岡 攻  「沖縄の始め」 
渡辺直之  「幻のダム計画―よみがえる五木村―」 
                             以上、計33人の写真家 
 
■シンポジウム内容 
1)「沖縄を語る」 
  山城博明・大城弘明・真栄田弘一・石川文洋・森口豁・吉岡攻ほか 
  18日(火)18:30〜 
2)松永優・森口豁・及部克人・新藤健一 
  「表現の自由の意味―松永裁判からの視点―(映像神話の解体)」 
  19日(水)18:30〜 
3)鎌田 慧×本橋成一  「気になるから書きたい、写したい」 
  22日(土)14:00〜17:00 
4)桑原史成  「水俣・韓国・ベトナム・沖縄」 
  23日(日)14:00〜 
5)古居みずえ 「パレスチナの女たち」 
  25日(火)19:00〜 
6)川田文子  「『従軍慰安婦』のオモニたちから伝えられたこと」 
  26日(水)19:00〜 
7)楠山忠之×鍵和田良輔  「ベトナムと沖縄」 
  27日(木)19:00〜 
8)中谷吉隆  「『広島』から『フォト×ハイ句』まで」 
30日(日)13:00〜 
9)神浦元彰  「なぜ長井さんは殺されたか」 
  29日(土)14:00〜 
10)新藤健一 「関東大震災と四川大地震を語る」 
  29日(土)19:00〜 
11)牛尾喜道 「弟子から見た土門拳の仕事」 
  18日(火)13:00〜14:30 
12)豊崎博光 「世界の『核の現場』を追い続けて」 
  20日(木)19:00〜 
13)石川文洋 「ベトナムを語る」 
  19日(水)13:00〜30分ほど 
14)エンディング・パーティー 
   大討論会  30日(日)16:00〜   などを予定 
*シンポジウム参加費:¥1,000円(ワンドリンク付) 
 
■問い合わせ先 
加藤賀津子 090−9318−2059  kk-kame8@hotmail.co.jp 
松村久美  090−5995−8573 


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