2008年12月13日17時00分掲載  無料記事
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ビルマ民主化

「政治囚解放もとめビルマ訪問を」 国連総長に世界の元指導者112人とアジアの国会議員241人が書簡

  世界各国の元大統領・首相112人が3日、ビルマ(ミャンマー)の政治囚解放のため潘基文(パン・ギムン)国連事務総長が同国を訪問するよう求める書簡を、同総長に送った。5日にはアジア諸国の国会議員241人も同趣旨の書簡を総長に送った。これに対して潘総長は、訪問したいが、政治改革が進む見込みがない限りはむずかしいと述べた。日本からは小泉元首相、国会議員30人が書簡に賛同署名している。(ベリタ通信) 
 
 元大統領らの書簡はノルウェーの元首相ボンデビック氏が呼びかけたもので、ブレア元英首相、カーター元米大統領、ゴルバチョフ元ソ連大統領、金大中元韓国大統領、アキノ元フィリピン大統領ら50カ国以上の国々の元指導者が署名している。 
 
 書簡は、2008年末までにすべての政治囚を解放するよう、国連総長がビルマの軍政に働きかけることを求めている。 
 
 国会議員の書簡は東南アジア諸国連合(ASEAN)の国会議員でつくるミャンマー議連(AIPMC)が各国の議員へ呼びかけ、日本、韓国、カンボジア、タイ、マレーシア、 フィリピン、インドネシア、シンガポールの8カ国から計241人が賛同した。ビルマの民主化を支援するNGO、ビルマ市民フォーラムによると、国を超え、これほど多くの国会議員がビルマの民主化を求めて共同姿勢を示したのは初めてだろうという。 
 
 両書簡によると、ビルマの政治囚は昨年6月の1200人から現在は2100人以上へとほぼ倍増した。軍政は今年11月、昨年8〜9月の僧侶らを中心とした反軍政デモで逮捕した民主化活動家や僧侶200人以上に相つぎ長期の禁固刑を下した。 
 
 AIPMC議長でタイの国会議員のクライサック・チュンハワン氏は、「人びとの苦しみをこれ以上放っておくべきではない。世界は自然災害による壊滅的な被害時のみ支援するのではなく、こうした苦しみを一刻も早く止めるべく、行動するべきだ」と述べている。 
 
 潘事務総長は今年5月、サイクロンに襲われたビルマへの国際的な救援活動を受け入れるよう軍政を説得するため同国を訪問したが、そのさいは民主化促進などの政治問題は話し合わなかった。軍政はその後も、内外の批判を無視して、軍の権力維持を保障する新憲法の国民投票を強行するなど、民主化への姿勢はまったく見せていない。 
 
 国連安保理は昨年10月、政治囚の解放をふくむビルマの民主的改革を求める声明を採択したが、安保理による軍政へのこれ以上の強い措置には中国とロシアが反対している。このため潘総長がビルマを再訪しても、現状では具体的な成果を引き出せる保障はない。 
 
 事務総長は、元大統領らの書簡を受け、5日にビルマに関する関係国の会合を招集。その後の記者会見で、ビルマで政治改革が進んでいないことに失望感を覚えているとし、ビルマと関係を持つ政府や企業に軍政に対して影響力を行使してほしいと述べるにとどまった。た。 
 
▼『国連事務総長への書簡』・原文と賛同議員241名のリスト(英語) 
http://www.aseanmp.org/news/wp-content/uploads/2008/12/letter-to-un-asian-mps-namelist.pdf 
 
『国連事務総長への書簡』・日本語訳(翻訳・ビルマ情報ネットワーク、ビルマ市民フォーラム) 
 
 私たちアジア諸国の国会議員は、それぞれの国の市民を国政そして世界の場で代表するために選ばれました。今日、ビルマ(ミャンマー)で2,100人以上の政治囚が獄中にあるという深く懸念すべき事態について、この書簡を送ります。 
 ご存知のとおり、国連安全保障理事会、国連総会、そして国連人権理事会はビルマ軍事政権に対し、直ちにすべての政治囚を釈放するよう求めています。 
 軍政は国際社会の要請を露骨に無視し、政治囚の釈放を行わず、実質的対話も始めませんでした。それどころか、この1年間で政治囚の数はほぼ倍に増え、2,100人を超えています。 
 それだけでなく、ビルマ軍政は政治囚の存在を政治策略に利用してきました。国連代表者の訪問中や訪問後に数人の政治囚を釈放するのです。 
 真の国民和解をするにはすべての政治囚を釈放するべきですが、それはしません。国連の代表者がビルマを去ると必ず、新たに逮捕される者が出ます。 
 事務総長が今年12月にビルマを訪問する可能性があると理解しています。是非、予定通り訪問していただきたいと思います。そして訪問の機会を利用して、2008年末までにすべての政治囚が釈放されるように事務総長が働きかけを行うことを求めます。 
 すべての政治囚が釈放されることは(ビルマの政治改革の中で)大きな前進となり、国民和解プロセスの開始に向けた明確で具体的な第一歩となるでしょう。 
 しかしながら、軍政が(事務総長の訪問を機に)ほんの数人の政治囚を釈放するようなことがあれば、それは見せかけで、軍政がこの数十年間、権力を保持するために使ってきた戦術と何も変わりません。 
 ビルマ国民はもう何十年間も苦しんできました。私たちには、ビルマ国民が平和で持続可能な政治的解決に至るためにできる限りのことをする道徳的義務があります。このためには何の努力も惜しむべきではありません。 
 すべての政治囚の釈放という具体的な結果を出すために、事務総長が直接、そして特使を通じて努力してくださることを信じています。私たちも全面的に協力する用意があります。 
 
▼ 日本の賛同議員(敬称略) 
 
中川正春 
糸数慶子 
辻元清美 
池田元久 
今野東 
中村哲治 
ツルネンマルテイ 
江田五月 
菅野哲雄 
照屋寛徳 
阿部知子 
岡崎トミ子 
山田正彦 
金田誠一 
藤田幸久 
鈴木恒夫 
土肥隆一 
細川律夫 
西博義 
 羽田孜 
浜四津敏子 
末松義規 
郡 和子 
加賀谷 健 
武正 公一 
松野 信夫 
福島みずほ 
小宮山洋子 
川田龍平 
鳩山由紀夫 
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▼アセアンの国会議員によるミャンマー議連 ウェブサイト 
ASEAN Inter-Parliamentary Myanmar Caucus (AIPMC) 
http://www.aseanmp.org/news/index.php 


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