2009年03月01日14時01分掲載  無料記事
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文化

【自著を語る】『司法殺人ー「波崎事件」と冤罪を生む構造−』  根本行雄

  ようやく、『司法殺人』を出版できることになりました。副題は、「『波崎事件』と冤罪を生む構造」です。「波崎事件」はまったく物証がなく、目撃証人もなく、自白がないのにもかかわらず、有罪となり、死刑の判決を受けたという点において、日本の冤罪の歴史なかでは、とてもめずらしい事件です。しかし、この「波崎事件」も、日本の冤罪の歴史をみてきますと、例外的な特殊なケースではないということがわかってきます。日本の、冤罪を生み出しやすい、その構造とそのメカニズムが、この事件においても歴然としており、明々白々であることがわかるからです。 
 
  本書では、その例証として、波崎事件を中心的に取り上げながら、これまでの、日本の主な冤罪事件を適宜、例証としてあげ、「冤罪を生む構造」を明らかにしています。冤罪を生みやすくしている構造とそのメカニズムとは、警察、検察、報道機関、裁判所の4者のそれぞれが問題点を抱えており、しかも、この4者が複雑に融合し癒着しているということです。 
 
  私たち一般市民にとっては、警察に被疑者として逮捕され、取り調べを受けることも、そして、被告人となって裁判を受けることも、きっと生まれて始めての体験です。そういう体験をする読者を想定し、高校生以上ということで、日本の司法制度についてわかりやすい説明を心がけました。 
 
  本年5月に「裁判員制」の実施の日を迎えようとしています。しかし、冤罪を生む構造とそのメカニズムを抜本的に改善することは、ほとんどされていません。そのうえ、この新しい制度は、死刑という重い刑罰を課すかどうかの量刑判断までも市民に義務付けるものです。それは私たち一般市民にとっては、不当に重い責務であると言わずにはいられません。 
 
  本書の目次は、次のようになっています。 
第1章 波崎事件とは 
第2章 冤罪を生む構造 〃抻,砲弔い董
第3章 冤罪を生む構造◆仝〇,砲弔い董
第4章 冤罪を生む構造 報道機関について 
第5章 冤罪を生む構造ぁ〆枷十蠅砲弔い董
第6章 陪審制と参審制、そして裁判員制 
第7章 司法殺人 
 
  巻末には、「付録」として、本文で取り上げた冤罪事件についての簡略な説明文を付けました。「白鳥決定と財田川決定」の説明と、最高裁で死刑が確定しながら、再審で無罪を獲得した、「免田事件」、「財田川事件」、「松山事件」、「島田事件」、以上の4つの事件。再審請求をしている事件として、「帝銀事件」、「名張毒ぶどう酒事件」、「狭山事件」、「袴田事件」、「布川事件」。さらに、戦後の、主な冤罪事件として、「吉田岩窟王事件」、「弘前大学教授夫人殺し事件」、「松川事件」、「二俣事件」、「青梅事件」、「菅生事件」、「徳島ラジオ商殺し事件」、「八海事件」、「甲山事件」、「松本サリン事件」を説明しておきました。 
 
  裁判員制度については、そのテーマだけで一冊の本を書くことができるところを、五十枚程度に、簡略でありながら、わかりやすい説明をしました。そして、陪審制と参審制、そして裁判員制との共通点と相違点が容易にわかるように「表」を挿入し、裁判員制の特徴と問題点と改善すべき点が一覧できるようにしてあります。 
 
  裁判員制度については、本年5月の実施前に、そして、実施後にも、いくつもの波乱が、最高裁や法務省が予想もしないような大きな波乱が起こってくることは必然です。そして、裁判員の候補者である私たち一人一人にも、その波乱の影響は及んできます。裁判員制度について議論する時、この本はきっと参考にしていただける内容になっていると思います。また、本書は死刑廃止の主張もわかりやすく述べております。この本を多くの方々に読んでいただきたいと思っております。 
 
(影書房2009年2月刊、2000円+税) 


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