2009年04月02日22時05分掲載  無料記事
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世界経済

G20金融サミット、最終合意間近 ―避けている「本当の」問題とは?

 2日朝から、開催地ロンドンで本格的な討議が始まったG20金融サミットに出席している首脳陣は、昼食に入る直前までに、最終合意にほぼ合意した模様だ。サミット開催の提唱者ブラウン英首相が希望していた、国際通貨基金(IMF)の資金の大幅増加や、貿易金融支援の拡大にも支持が得られる見込みだ。世界的な信用収縮を受けて、雇用安定や成長回復の支援に向けた政策協調を目的として開催されたサミットは、当初、参加国間の亀裂が予想されたが、ブラウン首相はかろうじて面子を保てる可能性が出てきた。しかし、「本当の問題」を避けているという指摘もある。(ロンドン・サミット会場にて=小林恭子) 
 
 英メディアが伝えたところによると、サミット首脳陣がほぼ合意したのは以下。 
 
―IMFの資金を増額。緊急事態に陥った国を支援するため、7500億ドルを追加する(約74兆円、以前、2500億ドルの増額が決まっていたため、5000億ドルを新たに加える)。先の増額は東欧諸国救援で使い果たしている。 
―規制が及ばないタックスヘイブン(租税回避地)の監視強化。タックス・ヘイブンとなっている場所を抱える国への制裁。どの国がこれに該当するかのリストを公表するかどうかに関してはまだ議論中。 
―2500億ドルを貿易支援策として拠出。 
―新たな財政出勤は合意に至っていないが、各国は景気回復のために「全力をつくす」という文言が入る予定。 
―自由な貿易行為を妨げる保護主義を非難。 
―ヘッジファンドを監督下に置くなど、金融監督・規制をより厳しくする。 
―銀行経営陣の報酬を見直す。 
 
 今回のサミットの開催はブラウン首相の主導によるものだった。英国内では「もっぱら国内政治で利を得るために提唱した」というのがほぼ定説だ。首相は、2010年5月までに総選挙を行うことになっており、すでに予備選挙段階に入ったとも言われている。ビジネスがグローバル化したとは言え、各国の景気悪化の状況はそれぞれ異なり、世界の首脳陣が集まって会議をしても、有効な策を提示できない、という否定的な意見が大半を占めていた。 
 
 しかし、サミット開催でロンドン市場はこれを好意的にとらえ、株価が上昇。各国間の思惑が錯綜してまとめきれないだろうという予想を裏切り、誰もが一定の満足を得られる、つまりは国に戻って「自分がこれだけのことをした」と言えるような、サミット宣言が出る可能性が出てきた。 
 
▽銀行の不良資産の巨大さ 
 
 一方、フィナンシャル・タイムズ紙のジリアン・テット記者は、2日付の記事の中で、信用危機を打開するための規制監督の強化や財政出勤、あるいはタックスヘイブンの監視強化がサミットで大きな議題になっているものの、本当の問題は銀行が抱える「不良資産」だと指摘する。 
 
 その額は「数兆ドル規模」と予測されるものの、「誰も正確な額がわからない状態だ」。銀行の業務がグローバル化し、ビジネスが数カ国に渡っている点からも全体像がつかめない状況だ。しかし、テット氏は、「これを棚上げにしては本当の問題は解決できない」と述べる。かつてフィナンシャル・タイムズ紙の東京支局長でもあったテット氏は、銀行の不良債権問題に苦しんだ日本も、最終的に額を算出し、必要な資金をあてることで危機を乗り切ったと説明する。 
 
 数年前、米系証券会社の銀行専門のエコノミストが「日本の銀行の不良債権の大きな問題は、誰も額がわからないこと」と語っていたことを、筆者は思い出していた。一つには経済の状況によって、今日の安全な資産が次の日には不良資産に変わってしまうという面があり、査定者の判断によっても、ある資産が不良かそうでないかが変わるからだった。テット記者自身も記事の中で、「瞬時に増える不良資産」という点を指摘している。 
 
 抜け落ちた問題=増える不良債権は、果たして最終の合意宣言に入るだろうか? 
 
 (「ニューズ・マグ」同時掲載) 


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