2010年03月12日13時49分掲載  無料記事
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199の市民団体が「高校無償化から朝鮮学校を除外することに反対する」共同署名を鳩山首相に提出

  12日付の朝日新聞は、鳩山内閣が11日、4月に実施予定の「高校無償化」をめぐり、全国の朝鮮学校を制度の対象から除外する方針を固めた、報じた。高校生を政治問題に巻き込む差別政策に対し、日本の市民団体・NGO199団体と個人1270人は鳩山首相と川端文部科学大臣に対し、<NGOと市民の共同要請>「私たちは朝鮮学校を「高校無償化」制度の対象とすることを求めます」を提出した。市民による共同要請は「日本人拉致問題という外交問題解決の手段として、この問題とはまったく無関係である日本に生まれ育った在日三世・四世の子どもたちの学習権を『人質』にすることは、まったく不合理であり、日本政府による在日コリアンの子どもたちへの差別、いじめです」と指摘。 
また、国際的にも日本が批准している自由権規約(第27条)や子どもの権利条約(第30条)、人種差別撤廃条約などの国際条約に違反する行為であると、批判している。(大野和興) 
 
  以下、市民団体・個人の共同署名・要請を紹介する。 
 
内閣総理大臣 鳩山由紀夫 様 
文部科学大臣 川端 達夫 様 
 
 
<NGOと市民の共同要請> 
私たちは朝鮮学校を「高校無償化」制度の対象とすることを求めます 
 
  私たちは、多民族・多文化社会の中ですべての子どもたちに学ぶ権利の保障を求めて活動するNGOであり市民です。 
 
  新政権のかかげる「高校無償化」制度においては、政権発足当初より各種学校である外国人学校についてもその範囲に含むことが念頭におかれ、昨秋、文部科学省が財務省に提出した概算要求でも朝鮮学校などの外国人学校を含めて試算されていました。 
 
  ところが今年2月、法案の国会審議を目前にしたこの時期、新聞各紙では「中井拉致問題担当相が、4月から実施予定の高校無償化に関し、在日朝鮮人の子女が学ぶ朝鮮学校を対象から外すよう川端達夫文部科学相に要請、川端氏ら文科省の政務三役が検討に入った」(2月21日)、「鳩山首相は25日、高校無償化で、中井洽拉致問題担当相が朝鮮学校を対象から外すよう求めていることについて『ひとつの案だ。そういう方向性になりそうだと聞いている』と述べ、除外する方向で最終調整していることを明らかにした」(2月26日)と報道されています。 しかし、日本人拉致問題という外交問題解決の手段として、この問題とはまったく 
無関係である日本に生まれ育った在日三世・四世の子どもたちの学習権を「人質」にすることは、まったく不合理であり、日本政府による在日コリアンの子どもたちへの差別、いじめです。このようなことは、とうてい許されることではありません。 
 
  朝鮮学校排除の理由として「教育内容を確認しがたい」との説明もなされていますが、これは、『産経新聞』2月23日付けの社説「朝鮮学校無償化排除へ知恵を絞れ」にも見られるように、朝鮮学校排除のために追加された名目にすぎません。 
 
  朝鮮学校は地方自治体からの各種学校認可や助成金手続きの際、すでにカリキュラムを提出していることからも、「確認しがたい」との説明はまったく事実に反します。また、日本 のほ 
ぼすべての大学が朝鮮高級学校卒業生の受験資格を認めており、実際に多くの生徒が国公立・私立大学に現役で進学している事実からも、朝鮮 高級学校が、学校教育法第1条が定める日本の高等学校(以下「1条校」という)と比べても遜色ない教育課程を有していることを証明しています。 
 
  そもそも、1998年2月と2008年3月の日本弁護士連合会の勧告書が指摘しているとおり、民族的マイノリティがその居住国で自らの文化を継承し言語を同じマイノリティの人びととともに 
使用する権利は、日本が批准している自由権規約(第27条)や子どもの権利条約(第30条)において保障されています。また、人種差別撤廃条約などの国際条約はもとより、日本国憲法第26条1項(教育を受ける権利)および第14条1項(平等権)の各規定から、朝鮮学校に通う子どもたちに学習権(普通教育を受ける権利、マイノリティが自らの言語と文化を学ぶ権利)が保障されており、朝鮮学校に対して、日本の私立学校あるいは他の外国人学校と比べて差別的な取扱いを行なうことは、そこに学ぶ子どもたちの学習権・平等権の侵害であると言わざるを得ません。 
 
  「高校無償化」制度の趣旨は、家庭の状況にかかわらず、すべての高校生が安心して勉学に打ち込める社会を築くこと、そのために家庭の教育費負担を軽減し、子どもの教育の機会均等を確保するところにあるはずです。 
 
  朝鮮学校は、戦後直後に、日本の植民地支配下で民族の言葉を奪われた在日コリアンが子どもたちにその言葉を伝えるべく、極貧の生活の中から自力で立ち上げたものです。いま朝鮮学校に通う子どもたちには朝鮮籍のみならず、韓国籍、日本国籍の子どもたちも含まれており、日本の学校では保障できていない、民族の言葉と文化を学ぶ機会を提供しています。 
 
  このような朝鮮学校に対して、1条校と区別するだけではなく、他の外国人学校とも区別して、「高校無償化」制度の対象から除外する取り扱いは、マイノリティとして民族の言葉・文化 
を学ぼうとする子どもたちから中等教育の場を奪うものであり、在日コリアンに対する民族差別に他なりません。 
 
  去る2月24日、ジュネーブで行なわれた国連の人種差別撤廃委員会の日本政府報告書審査では、委員たちから「朝鮮学校は、税制上の扱い、資金供与、その他、不利な状況におかれている」「すべての民族の子どもに教育を保障すべきであり、高校無償化問題で朝鮮学校をはずすなど差別的措置がなされないことを望む」「朝鮮学校だけ対象からはずすことは人権侵害」などの指摘が相次ぎ、朝鮮学校排除が国際社会の基準からすれば人権侵害であることはすでに明らかになっています。 
 
  外国籍の子も含めてすべての子どもたちに学習権を保障することは、民主党がめざす教育政策の基本であるはずです。私たちは、朝鮮学校に通う生徒を含めたすべての子どもたちの学習権を等しく保障するよう強く求めます。 
 
2010年3月11日 
 
<呼びかけ> 
外国人学校・民族学校の制度的保障を実現するネットワーク 
在日韓国人問題研究所 
みどり共同法律事務所 
神戸学生青年センター 
 
<賛同団体> 
コリアNGOセンター/日本キリスト教協議会(NCC)教育部/樹花舎/全国在日外国人教育研究協議会/市民外交センター/エルクラノの会/外登法の抜本的改正を求める関東キリスト者連絡会/日朝友好促進京都婦人会議/朝鮮学校を支える会・京滋/特定非営利活動法人保見ヶ丘ラテンアメリカセンター/RAWAと連帯する会/カラカサンー移住女性のためのエンパワメントセンター/NPO法人 印旛同和教育研究会/全国在日朝鮮人教育研究協議会広島/ナヌムの家/日本軍『慰安婦』歴史館/NPO中学高校生の日本語支援を考える会/全国在日外国人教育研究協議会/在日韓国青年同盟大阪府本部/カラバオの会/市民外交センター/長崎在日朝鮮人の人権を守る会/アクティブ・ミュージアム「女たちの戦争と平和資料館」(wam)/部落解放同盟中央本部/国籍条項撤廃を考える会 松江/神戸学生青年センター/全統一労働組合/移住労働者と連帯する全国ネットワーク/中小労組政策ネットワーク/特定非営利活動法人東京労働安全衛生センター/アジェン 
ダ・プロジェクト/戦後責任を問う・関釜裁判を支援する会/早くつくろう!「慰安婦」問題解決法・ネットふくおか/日朝協会群馬県支部/北九州がっこうユニオン・うい/新宿区教職員組合執行委員会/朝鮮学校の生徒を守るリボンの会/子どもの人権埼玉ネット/神奈川朝鮮学園オモニ会連絡会/ピースサイクル全国ネットワーク/フィリピン元「慰安婦」支援ネット・三多摩/NPO 長居公園元気ネット/ピース・フィロソフィー・センター/朝鮮問題を学ぶ江東区民の会/憲法を読む会inにいざ/日朝友好連帯埼玉県民会議/朝鮮学校を支える会・埼玉/人権平和・浜松/反差別国際運動(IMADR)/中崎クィアハウス/福岡地区 
合同労働組合/中野の教育を考える草の根の会/部落解放同盟全国連合会茨城県連/市民の意見30の会・東京/在日高麗労働者連盟/毒ガス島歴史研究所/かながわ平和憲法を守る会/海老名解放教育研究協議会/海老名教育懇談会実行委員会/海老名平和 
憲法を守る会/湘北教組今泉中学校分会/聖公会平和ネットワーク/外登法の抜本的改正を求める神奈川キリスト者連絡会/アジア人権・平和・多文化センター/多文化共生教育研究協議会ふくおか/時をみつめる会/四国労働者・民衆センター/特定非営利活動法人東大阪国際共生ネットワーク/日韓問題を考える東大阪市民の会/なかまユニオン大阪府・市学校教職員支部/へいわとふくしを見つめる会/小松基地問題研究会/在日コリアン青年連合/「つくる会」教科書を中学生の手に渡したくない市民・保護者の会/アジア女性資料センター/外国人学校・民族学校の制度的保障を実現するネットワーク・埼玉/国際環境アートムーブ川口/自由空間創楽邑/難民・移住労働者問題キリスト教連絡会/子どもの未来を望み見る会/靖国問題 横浜・川崎祈祷連絡会/カトリックさいたま教区正義と平和協議会/民族教育ネットワーク/鳥取県在日外国人教育研究会連絡会/アイヌ・ラマット実行委員会/強制連行強制労働犠牲者を考える北海道フォーラム/みのお・平和のまちをつくる会/多文化共生教育ネットワークかながわ(ME-net)/不戦へのネットワーク/平和・人権・環境を守る岐阜県市民の声/朝鮮大学校 管弦楽団/朝鮮大学校 吹奏楽部/グローバルウォッチ パリ/Tama Copithorne/ごまめ通信舎/東北アジア情報センター/在日本韓国YMCA/奈良県外国人教育研究会/ハムケ・共に/東南アジアの子供達を支援する会/よこはまシティユニオン/フォーラム平和・人権・環境/カトリック大阪大司教区社会活動センター・シナピス/NGO神戸外国人救援ネット/社団法人アムネスティ・インターナショナル日本/hand-in-hand ちば (滞日外国人と連帯する千葉の会)/日本アジア・アフリカ・ラテンアメリカ連帯委員会(日本AALA)/NPO法人コリア人権生活協会/奈良平和フォーラム /東京都学校ユニオン/郷土教育全国協議会東葛支部/ねりま日朝女性の会 
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(2010年3月10日現在:199団体) 
 
<賛同個人>1270人(2010年3月10日現在) 


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