2011年02月18日17時23分掲載  無料記事
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やさしい仏教経済学

(33)地産地消型自然エネルギーへ転換を 安原和雄

  持続的発展を軸とする循環型社会づくりの決め手となるのが、エネルギーのグリーン化、すなわち現在の石油・石炭・天然ガス・原子力発電依存型から自然エネルギー活用型への転換である。石油・石炭・天然ガスは環境汚染・破壊型で、再生不能の枯渇性エネルギーである。すでに多くの犠牲者を出し、しかも事故が続発して安全性に疑念がつのっている原子力発電に必要なウランも再生不能の枯渇性資源である。 
 これら再生不能エネルギーを抑えて、低環境負荷型の再生可能、つまり無限の利用を期待できる自然エネルギー(太陽光、風力、バイオマス、水力、地熱、潮汐力、波力など)へと重点を移していく必要がある。これは地域が主役となる「地産地消型」自然エネルギーへの転換を意味する。その現状と将来図を考える。 
 
▽ 小さな地域の大きな挑戦 ― 自然エネルギー自給へ 
 
 毎日新聞(2011年2月8日付)によると、映像作家の鎌仲ひとみさん(注)が「反原発の小さな島の挑戦」という見出しで自然エネルギーに取り組む離島としての祝島の実情を描いている。さらに同紙(同年1月31日付)は足立旬子記者が祝島をはじめ、エネルギー自給を試みる国内外の現状を報告している。「小さな地域の大きな挑戦」と評価できよう。以下、そのいくつかを紹介する。 
(注)鎌仲ひとみさんは1958年生まれ。08年から2年かけて祝島とスウェーデンを舞台に「ミツバチの羽音と地球の回転」という映画を製作した。このほか「ヒバクシャ 世界の終わりに」「六ケ所村ラプソディー」などの自主製作映画の監督を務めた。 
 
*反原発と自然エネルギー100%で自立宣言 
 瀬戸内海に浮かぶ山口県上関(かみのせき)町の祝島(いわいしま)が11年1月、日本の離島では初めて、自然エネルギー100%で自立すると宣言した。この島の3.5疎亟澆肪羚馘杜呂両經惴胸厠枠電建設計画があり、島民は10億8000万円の漁業補償金の受け取りを拒否し、これまで30年間も計画に反対してきた。 
 島民約500人の多くは無農薬のびわを育て、ひじきを採り、半農半漁で自給自足的な生活を営んでいる。原発建設予定地・田ノ浦は環境破壊が進んだ瀬戸内海にあって「奇跡の海」と呼ばれ、希少生物がひしめく生物多様性の宝庫とされる。破壊すれば取り返しがつかないと、日本生態学会など四つの学会が環境アセスメントの見直しを求めている。海域には日本で約5000羽しかいないという絶滅危惧種「カンムリウミスズメ」、同じ絶滅危惧種で体長2旦瓩で鬚ぅぅ襯「スナメリ」などが棲(す)んでおり、その絶妙な生態系を破壊しないタイの一本釣り漁法を祝島の漁師たちは誇りにしている。 
 
 今回スタートさせた「祝島自然エネルギー100%プロジェクト」の概要は次の通り。 
・住宅100戸にそれぞれ3〜4銑匹梁斥枦澱咾鮴瀉屬垢襦 
・し尿を生かすバイオマス(生物資源)発電、小型の風力発電、太陽熱温水器を順次導入する。 
・10年間ですべての島民が暮らすのに必要な約1000銑匹亮給を目指す。 
・必要資金は趣旨に賛同する企業やアーティストらから売上の1%を寄付してもらう。 
 このプロジェクトによって島に若者の働く場を作り出し、豊かな自然を生かしたエコツーリズムや海産物などで経済的自立を目指し、島を持続可能な地域にしていくことが期待されている。 
 祝島の新しい挑戦には成功した先例がある。デンマークのサムソン島がそれで、1998年から10年間で100%自然エネルギーの自給を目指した。陸上と洋上の風力発電、太陽光発電などですでに電力自給100%を達成しており、世界の先駆けともなった。 
 
 祝島のほかに自然エネルギーの自給にすでに取り組んでいる地域を紹介すると― 。 
*岩手県葛巻町=10年前から風力発電や、牛ふんなどを利用したバイオガス発電を進め、町内の約7割のエネルギーを賄っている。 
*徳島県上勝町=人口1940人のうち、65歳以上の高齢者が約半数を占める。山の手入れが不十分で、建材に向かないスギなどが広がる。これを活用したバイオマス発電、急峻な川の流れを利用する家庭用の小規模発電、太陽光などを組み合わせる。自然エネルギー普及に伴う雇用確保も目指す。 
*滋賀県東近江市=太陽光発電設置の世帯は約4%で、全国平均の1.1%を上回る。この太陽光による発電電力に見合う金額を市内商店で使える地域商品券として市が交付し、商店街にも自然エネルギー活用の恩恵が回るような新しい試みに乗り出している。これは「売り手よし 買い手よし 世間よし」を「三方よし」という近江商人の「商売道」の発想に根ざしている。 
 
<安原の感想> ― 地産地消型エネルギーは「三方よし」の実践 
 
 上に紹介した離島や地域の自然エネルギー自給の試みは、地産地消型、すなわちその地域で産出され、その土地で消費されるエネルギーへの転換を意味する。これは現在主役を担っている巨大電力会社による送電ロスの多い広域電力供給方式と違って、小型の地域分散型、地域密着型そのものといえる。地域貢献型でもある。 
 関心を引くのは、東近江市に伝わる江戸時代・近江商人の「三方よし」であり、その今日的実践がほかならぬ地産地消型エネルギーとはいえないか。「三方よし」の経営理念は、末永國紀同志社大学経済学部教授によれば、現代の今、次のように読み解く。 
 
 商品に自信をもって、すべての人々に気持ちよく使ってもらうように心掛け、人々の役に立つことを願う。損得はその結果次第と思い定めて、自分の利益だけを考えて一挙に高利を望むようなことはせず、何よりも人々の立場を尊重することを第一に心がける。欲心を抑え、心身ともに健康に恵まれるためには神仏への信心を厚くしておくことが大切である、と。 
 地産地消型エネルギーは仏教経済学のキーワードでいえば、知足、簡素、共生、利他、持続性などの実践にもつながる。 
 
▽ 自然エネルギー活用が世界の新潮流 ― 非暴力の世界へ 
 
 自然エネルギー(=再生可能エネルギー)の利用促進をめざす国際自然エネルギー機関(IRENA=International Renewable Energy Agency、09年1月設立)には欧州各国、多くの発展途上国のほか、インド、韓国、フィリピンなど75カ国が参加しているが、日本をはじめ米国、ロシア、中国などは参加していない。 
 この自然エネルギーを普及させるには、その電力供給を安定・拡大させるための新しいシステム(固定価格買取制など)が必要不可欠である。環境先進国、ドイツはいち早くこのシステムを導入し、自然エネルギーの普及に力を入れている。このような自然エネルギーの活用が世界の新潮流である。ところが日本は太陽光発電では世界的に優れた技術水準を誇っているにもかかわらず、折角の技術が活用されていない。その背景には石油や原発など再生不能の枯渇性エネルギーへの依存にこだわっているという事情がある。 
 
 米国はオバマ大統領の登場と共に「グリーン・ニューディール」、つまり石油重視から自然エネルギー重視への転換、環境保全、雇用の増大 ― を三本柱とする新政策を打ち出した。このままでは日本は世界の新潮流に乗り損ねる懸念が強い。一次エネルギー総供給に占める自然エネルギー、つまり国産エネルギーの割合(2007年)をみると、日本は3〜4%で最低レベルにとどまっている。 
 
 WWF(地球環境保全団体)は2011年2月3日「エネルギー・レポート」を発表し、「2050年までに100%再生可能エネルギーの社会は実現可能」としてそのシナリオを示している。その骨子を以下に紹介する。 
・エネルギー需要は、省エネルギー策の徹底によって2050年には2005年よりも15%削減が可能であること 
・現在ある技術をべースに、その需要の95%を再生可能エネルギーで供給することが可能であること 
・化石燃料、原子力、旧来型バイオマス(薪炭材など)は、太陽光、風力、地熱、バイオマスなど多様な再生可能エネルギー源を組み合わせることによって、ほぼ完全に代替できること 
・これにより世界のエネルギー由来のCO2排出量は、2050年に80%以上削減されること 
 なおこのシナリオは、以下の条件を想定している。 
・国連の人口増加の予測(2050年90億人超)に基づき、現在電気のない生活をしている14億人を含む地球の全人口に電気を供給できること 
・初期の新規設備投資は必要だが、長期的には燃料費の低下で運用費も低減され、2040年以降は正味でコストの節約となる。 
 
 米国のイラク攻撃・占領の狙いの一つが中東などの石油確保にあったように、石油など再生不能エネルギーへの過度な依存は暴力(=戦争)を伴いやすい。しかし再生可能な自然エネルギー活用型への転換は、エネルギー利用の持続性確保にとどまらず非暴力(=平和)、いのち尊重の実現にも貢献する。 
 WWFの描く「100%再生可能エネルギーの社会」へのシナリオが実現して、石油や原子力発電などいのち軽視と暴力に走りやすいエネルギーと縁を切ることのできる日の遠くないことを待望したい。 
 
▽ 在日米軍基地跡地に太陽光発電所を ― ローカリズムの復権へ 
 
 農文協編『TPP反対の大義』(農山漁村文化協会)に「ピーク・オイルに備える文明の転換」を説く次のような主張がある。 
 日本経済のアキレス腱はエネルギーと食料の大半を輸入に頼っていること。今の世界情勢ではこれらを今後も支障なく輸入できる保証はどこにもない。 
 国際エネルギー機関(IEA)は2010年11月、「世界の原油生産は2006年にピーク(増産の限界点)を超えたとみられる」と発表した。もう経済成長はありえない。今後は原油生産の逓減で、工業経済はガス欠状態に陥り、徐々に収縮していくだろう。貿易を支える海運も燃料の高騰で、採算がきつくなる。ピーク・オイルの厳然たる事実は、今世紀はエネルギーと食料の危機の世紀であること、そして人類の未来は長期的には農業中心の地域共同体にあることを示している、と。 
 
 長期的視野で将来を展望すれば、反原発と石油枯渇を背景に自然エネルギーを基盤とせざるを得ない地域共同体は恐らく農業重視型になるほかないだろう。ただその地域共同体には農業と並んで、地元の人材や資源などの地域力を生かす多数の中小企業(=わが国総企業数の99%、雇用者の70%、工業出荷額の50%を担っている)が健在でなければならない。これは地域の人々の暮らしを第一に重視するローカリズムの復権であり、一方、利益第一を掲げて新自由主義的な世界規模での貧困、失業、格差、地域軽視・破壊をもたらすアメリカ流グローバリズムへの批判を広げずにはおかない。 
 言い換えれば、地域の疲弊などをもたらす新自由主義的路線を転換しない限り、多様な地域力を生かす経済の発展は期待できない。地域発展のためには地域に密着した地産地消型自然エネルギーの活用がどこまで普及するかが重要な尺度になるだろう。 
 
 具体策として例えば在日米軍基地(その総面積は1000平方銑叩砲近未来に返還され、その跡地にすべて太陽光発電所を建設すると、どれだけの電力を産み出せるだろうか。試算によれば、年間1000億銑瓢の電力が得られる。日本の全発電電力量9000億銑瓢の9分の1にのぼるという計算である。また沖縄の米軍基地を撤去して、太陽光発電所に置き換えると、現在沖縄電力が供給している電力量の約3倍の発電電力量が得られる。(吉井著『原発抜き・地域再生の温暖化対策へ』から) 
 もっともこの構想を実現させるには米軍基地を容認している現行の対米従属的な日米安保条約を解消し、米軍基地を置かない対等の日米平和友好条約に切り替えることが必須条件となる。日本におけるローカリズムの復権は、アメリカ流グローバリズムの軍事的尖兵、在日米軍基地の完全撤去とともにたしかなものとなるだろう。 
 
<参考資料> 
・牛山 泉「原発のない社会は可能か」(循環型社会研究会通信NO.30、2011年1月号) 
・吉井英勝著『原発抜き・地域再生の温暖化対策へ』(新日本出版社、2010年) 
 
*本稿は「安原和雄の仏教経済塾」からの転載です。 
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