2011年06月24日14時26分掲載  無料記事
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経済

日銀から発せられる「原発再稼動」の声  

  マネー資本主義の中枢機関の一つ、日本銀行でも危機にある原発の再稼動を後押しする動きが続けられている。ロイターによると、6月23日、東電取締役出身の日銀審議委員の森本宜久氏が長崎で行われた金融経済懇談会の際の記者会見で、仮に原発が全て停止した場合は「日本経済の先行きに大変大きな影響を与える」と懸念を表明し、「そうした事態にならないように、安全面で議論が尽くされることを願っている」と繰り返したという。 
 
  森本氏は2010年7月に日銀審議委員に就任。1967年4月に東京電力入社、2001年6月に取締役に就任し、翌年に常務、04年6月から副社長。副社長退任後は、電気事業連合会副会長を務めた原子力政策の中枢にいた人物の一人である。 
 
履歴 
1967年 3月 東京大学法学部卒業 
1967年 4月 東京電力(株)入社 
2008年 6月 東京電力(株)電力契約部長 
2001年 6月 東京電力(株)取締役エネルギー営業部長 
2002年 6月 東京電力(株)常務取締役 
2004年 6月 東京電力(株)取締役副社長 販売営業本部長 
2007年 6月 東京電力(株)取締役・電気事業連合会副会長 
2010年 7月 1日 日本銀行政策委員会審議委員 
 
  福島原発事故の犠牲という悲しみを胸に、日本と世界の人々が脱原発社会へと向けて希望ある一歩を踏み出そうとするなか、原発の再稼動にむけて絶望的な努力を続ける「原子力マフィア」の有力な一員として、日本の金融経済の中枢中の中枢である日本銀行も原発推進の姿勢をいよいよ明らかにした、といえるのではないか。 
 
  日本銀行は大震災大津波後に襲った福島原発事故を受けて、巨額のマネー供給を行っている。23日の記者会見の前に行われた懇談会での森本氏の講演でもそのことが語られている。 
 
「震災後最初の営業日、つまり週明けの〔3月14日〕月曜日に21.8兆円というリーマン危機時の3倍近い規模の資金供給をオファーしました。その後も、連日多額の資金供給を続けた結果、民間金融機関が日本銀行に預ける日銀当座預金残高は、3月24日時点で42.6兆円と、過去最大の規模となりました。日銀当座預金残高は震災前まで17兆円前後でしたから、いかに手厚い資金供給であったかご理解いただけるかと思います。こうした日本銀行による潤沢な資金供給を背景に、金融市場は震災後も安定して推移してきました。」 
 
  この巨額のマネー供給を受けて、三井住友銀、みずほコーポレート銀行、三菱東京UFJ銀行、住友信託銀行、三菱UFJ信託銀行、中央三井信託銀行、みずほ信託銀行、信金中央金庫、日本政策投資銀行があわせて2兆円もの資金供給を東電に行っている。 
 
参照「原発マフィアを支えつづける金融システム」 
http://attackoto.blog9.fc2.com/blog-entry-204.html 
 
  記者会見で森本氏は、東京電力の社債について「東電の資金調達の面というよりも、被害者に対し確実に損害が賠償されて電力の安定供給がはかられるという視点から、金融市場が安定し、東電にも資金が行き渡る仕組みが議論されるのではないか」との見方を示したとも報道されている。だが、本当に被害者に対して確実に損害場賠償され、電力の安定供給が図られるためには、電力価格の引き上げや社債やメガバンクなどからの巨額融資などに頼るのではなく、無賠償の全面国有化を行い、国の責任で被害者すべてに納得の行く補償を行わなければならない。それを言わない森本氏のこのような発言は、被害者よりも東電の株主や役員に向けた発言でしかない。 
 
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  長崎市から約85キロにある佐賀県東松浦郡玄海町の玄海原発は、いままさに再稼動を巡って大きく揺れている。玄海原子力発電所のPR館の館長の息子で現在は佐賀県知事を務める古川康氏は、玄海原発2、3号機の再開に向けてこれまでの慎重姿勢から一転し、推進へと動き出しつつある。 
 
  玄海原発プルサーマル裁判の会(ウェブ/ブログ)は果敢にプルサーマル計画と再稼動の反対を訴え、再稼動のための一方的な「説明会」(参加できるのは7人の県民だけ!)を強行しようとする海江田経済産業大臣大臣に「玄海原発の再稼働要請」発言の撤回を求める抗議文を送っている。 
 
  また26日には福島市で脱原発1万人集会が呼びかけられ、28日には東京電力株主総会にむけて福島の地元から脱原発にむけた政策転換を訴えにやってくる。 
 
  森本審議委員の原発再稼動擁護とも取れる発言は、このような人々の思いを無視するかのように行われているのである。こんな審議委員にはいますぐに辞めてもらいたい。日銀の役員は、衆参両院の同意の上で内閣によって任命される。任期中は日銀法の規定により処罰された場合や禁固以上の刑に処せられたとき等以外では、解任させることができない(日銀法)。原発とともにこの国の社会システムから自ら進んですぐに退場してもらうことを強く願わずにはいられない。 
 
attacこうとう(準備会) 
http://attackoto.blog9.fc2.com/blog-entry-207.html 


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