2011年11月12日11時36分掲載  無料記事
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文化

ベルリンフィルとナチスの「蜜月」を検証するドキュメンタリー映画

  ドイツのベルリンフィルは2007年に創設125周年を迎えたが、この機会をとらえて、映画監督のEnrique Sanchez Lansch 氏がベルリンフィルがヒトラーの第三帝国とどう関わったのかを検証するドキュメンタリー映画を作った。タイトルは「The Reichsorchester」で、「第三帝国の交響楽団」となる。この映画はベルリンフィルが営んでいるディジタルコンサートで視聴可能だという。当時の巨匠、ヴィルへルム・フルトベングラー、ハンス・クナッパーツブッシュ、エーリッヒ・クライバーら指揮者による演奏が挿入されている。 
 
  ’Soon after the Nazis seized power, the Berliner Philharmoniker were engaged by the regime for high-profile events, including the Olympic Games in 1936 and party rallies in Nuremberg. What was it like to be a member of the Berliner Philharmoniker at that time? How did they deal with the Nazi party members in their own ranks- of which there were less than one would perhaps expect. And how did they react to the exclusion of Jewish colleagues?’ 
 
  ベルリンフィルの説明によると、ナチが政権を握るとすぐにベルリンフィルはナチ党の主催するシンボリックなイベントで演奏させられるようになった。1936年のベルリンオリンピックや、ニュールンベルグにおけるナチ党大会などである。その頃、楽団から、ユダヤ系の音楽家が次々と排除されていた。この状況を当時の楽団員たちはどう見ていたのか?そこには音楽と政治という普遍的なテーマがある。 
 
  ’Interviews with concertmaster Hans Bastiaan and double bassist Erich Hartmann, the only surviving Philharmonikers from this time, provide us with the answers. There are also contributions from family members of other musicians, such as the cellist Joseph Schuster, who emigrated to the U.S.’ 
 
  当時の演奏家が2名生き残っていた。コンサートマスターの Hans Bastiaan 、ダブルベース奏者のErich Hartmannだ。彼らにその頃のベルリンフィルについて監督がインタビューをしている。また、アメリカに亡命した音楽家の家族の証言も挿入されている。たとえばチェリストの Joseph Schusterの家族などによるとされる。 
 
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■ベルリンフィルがネット配信ビジネス 
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■宝塚歌劇団とナチス 
 
  宝塚歌劇団は日独伊防共協定を祝って初の欧州公演を企画した。1938年のことである。当時の宝塚歌劇団の主力女優・ダンサーたちを擁した一行が船で出発、イタリアに入国した。ムッソリーニの前で公演を行ったのち、ドイツに向かった。1938年の11月、宝塚歌劇団がベルリンで公演していた頃、ユダヤ人を組織的に各地で襲う「水晶の夜」が起きている。宝塚歌劇団員の女性たちも物音を聞きつけている。演出家の岩淵達治氏がこの経緯をドラマにしている。 
 
・『雪のベルリンタカラヅカ 岩淵達治戯曲集 宝塚についての宝塚では上演できない歴史喜劇』(カモミール社)2002 
・ 『水晶の夜、タカラヅカ』(青土社)2004 
 
■指揮者ダニエル・バレンボイム氏のブログから「ワグナー、イスラエルそしてパレスチナ人たち」 
 
  ナチスに利用されたワグナーの音楽についてユダヤ人の指揮者のバレンボイム氏がブログで書いている。バレンボイム氏はイスラエルでワグナーを指揮したことで以前、物議をかもした。「2001年7月7日、バレンボイムはエルサレムにおいて、イスラエル音楽祭の一環として、ベルリン国立歌劇場を指揮して、ワーグナーの楽劇『トリスタンとイゾルデ』の一部を上演した。場内は騒然となり、バレンボイムは数名のイスラエル人から「ファシスト」のレッテルを貼られた。イスラエルにおいてワーグナーの音楽はタブー視されていた。」(ウィキペディア) 
http://www.danielbarenboim.com/index.php?id=72 
  このブログの中で、バレンボイム氏はワグナーの反ユダヤ的言辞はワグナー個人の反ユダヤ主義というよりも、当時のドイツの文化的文脈の中で見る必要があるとしている。そして、物議をかもした2001年のイスラエルにおけるベルリン歌劇場の「トリスタンとイゾルデ」の演奏については、アンコールに答えて演奏したのであり、ワグナーの曲を演奏することに対して、観客と41分にわたる議論を交わしたのちに演奏したとしている。その時、聞きたくない人は立ち去っていただいて結構だということになった。席を立ったのはわずか20〜30人の観客だったとバレンボイム氏は書いている。そして、今日のパレスチナ人の戦いはナチ時代の反ユダヤ主義ではなく、権利を求める戦いであるとしている。 


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