2012年01月19日02時28分掲載  無料記事
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緊急連載

アメリカのサイバー新法  国際的なメディア法の論壇サイトは・・・

  インターネットでメディア法を国際的に議論しているサイト「メディア法」ではハンガリーで進められる新メディア法と並んで、今、米議会で導入が検討されているメディア法案について論じている。これは今年に入った1月17日付のレポートである。 
  http://www.medialaws.eu/the-battle-for-sopa-stop-on-line-piracy-act-who-is-going-to-control-the-internet/ 
  記者によると、現在、下院で検討されている法案SOPA(Stop Online Piracy Act)の概要は以下のようだ。昨年11月末にニューヨークタイムズの社説が懸念した点が多少修正されているようである。しかし、本質は変わっていないと見られる。 
 
  「メディア法」の上の記事(抜粋)によると、現段階の法案では他人の著作物を著作権者の了解を取り付けることなく使用したコンテンツは重罪に処せられる可能性がある。米司法長官が著作権侵害だと指摘したウェブサイトが使っているIPS(インターネットサービスプロバイダー)や決済機関に取引をやめるように命じることができるようになる。また、著作権侵害を訴える著作権者は裁判所に提訴し、問題のウェブサイトが対処するように命令を下すこと求めることができるようになる。この結果、米政府はウェブサイトのブラックリストを作り、これらのウェブサイトに消費者(ユーザー)がアクセスできないようにDNS(ドメインネームサーバー)をコントロールすることができるようになる。 
 
  11月末にニューヨークタイムズが社説で法案を危惧した時は、著作権者が直接、IPSや決済機関に著作権を侵害しているウェブサイトを指摘して、措置を取らせることができるとするものだった。たとえそれが実際には著作権侵害に当たらないと後で判断されても、IPSや決済機関が訴えられることはないように法案はなっていた。しかし、今、審議されている法案は裁判所の決定を要するということになっているから、その点は軟化している。 
 
  とはいえ、米政府がブラックリストを作り、インターネットのシステムから当該ウェブサイトを切り離す措置を実行できるとする意味で、インターネット媒体が米政府のコントロール下に置かれることになる。これはオーウェルの「1984」のビッグブラザーにアメリカが一歩近づいていることを示している。 
 
  「メディア法」によれば、この法案を支持しているのは映画産業だけではない。そんな限られた勢力ではない。多岐にわたる企業がSOPA法案を支持しているとされる。映像コンテンツ企業だけでなく、コカコーラやキット・カット、ティファニー、それに任天堂まで並んでいる。合わせると1000社近くに上るそうである。 
 
  今、アメリカではこの法案審議によって、インターネット世界における著作権侵害と、自由・プライバシー・創造性との線をどう引くかが問われているとこの記事の筆者が述べている。 
 
  これらはアメリカの、あるいは英文によるインターネット世界に限られたことかと言えば、そんなことはない。むしろ、アメリカ国内にはすでに著作権侵害に対する法律があり、SOPAが狙っているのは海外のウェブサイトだとされる。現在、法案をもんでいる最中で現時点の法案内容を手にしているわけではないが、いくつかの報道から推察すると、法案が今のまま可決されれば日本のウェブサイトでも、インターネット新聞でも、個人のブログでも、米法人や個人が新法を下に著作権侵害を訴えることが可能になるものと思われる。ウェブサイトの言語は英語に限らないだろう。日本語のウェブサイトでも米企業やアメリカ人の著作権を侵害していると見なされると対抗措置の対象になると思われる。その際、著作権侵害かどうかは日本の著作権の基準ではなく、アメリカ国内法に乗っ取ってその判断がなされることになるのではないか。 
 
  ひとたび日本のウェブサイトでも「Rogue Web Site(ならずものサイト)」と判断されると、米検索サイトから排除されたり、VISAのような米決済機関を使うことができなくなる。この場合のRogue(ならずもの)という言葉はテロ国家に使われてきた用語である。海外メディアやウェブサイトでも「ならずもの」と見なされたら、米司法長官がその権限で措置を決定するのだから、米政府のインターネットメディアに対する権力は絶大になるだろう。 
 
  米司法長官がいわゆる「テロとの戦い」でどれほどの権限を持つようになったのかを思い返してみれば、この法案の怖さがわかるだろう。 
 
■ウィキペディア(英文)がブラックアウトに突入 米規制法案に抗議 <その中身とは?> 
http://www.nikkanberita.com/read.cgi?id=201201181707383 
■ウィキペディア(英文)が米法案に抗議のブラックアウト予告 
http://www.nikkanberita.com/read.cgi?id=201201181056273 


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