2013年03月18日14時07分掲載  無料記事
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TPP/脱グローバリゼーション

TPP交渉参加を表明したものの  安部政権の交渉力発揮は幻想か

 安部政権がTPPへの交渉参加を決定した直後の3月17日付け各紙は一斉に世論調査の結果を掲載した。高率を誇っていた安部内閣支持率はさらに上昇、TPP参加についても60%以上の支持が集まった。政府はわが国の外交交渉力を信じろと胸を張る。しかし米国や交渉参加国の動向をみると、日本はほとんど交渉には参加できず、結果を受け入れるだけになりそうだ。米国の市民団体でTPP反対の論陣をはっているパブリック・シチズンのローリ・ワラックは「TPP参加は日本の主権の放棄」と警告する。 
(上林裕子) 
 
 「今がラストチャンス。この機会を逃すと日本は世界のルールづくりから取り残される」「TPPがアジア・太平洋の世紀の幕開けとなったと、後世の歴史家は評価するに違ない」……3月15日、安倍晋三首相はTPP(環太平洋経済連携協定)交渉参加を表明した。(会見の様子は http://www.kantei.go.jp/jp/96_abe/statement/2013/0315kaiken.html) 
 
 この中で安倍首相は、自民党は聖域なき関税撤廃を前提にする限りTPP交渉参加に反対することを明言してきたが、「先日の日米首脳会談でTPPは聖域なき関税撤廃を前提としない」ことを確認した、と述べている。 
 
 しかし、「遅れて参加したカナダやメキシコは、,垢任坊茲泙辰燭海箸紡个刑童鮠弔靴童鮠弔鮹戮蕕擦襪海箸呂任ない、交渉を打ち切る権利は先発9カ国にある、との念書にサインすることで交渉参加することができた。政府はその情報をつかんでいた」と3月7日東京新聞が報道、8日の衆議院予算委員会はこの報道をめぐって紛糾した。 
 
 日本維新の会の松野頼久議員が「政府はカナダ・メキシコがこうした不利な条件のもとで交渉参加したとの情報を得ていたのか」と質問、共産党・笠井亮議員が「安倍首相は日米首脳会談で農産物などの重要品目について米国に認めさせた、としているが翌日の米国のメディアを見ても、具体的なものは何もない。『聖域なき関税撤廃であり全ての品目が対象』と報じている」と指摘したが、政府側からの明快な説明はなかった。 
 
 さらに11日の予算委員会の質問に立った民主党の前原誠司議員は「野田政権がTPPに参加表明できなかったのは事前協議における米国側の要求があまりに不公平だったからだ」「ー屬亡悗靴討牢慇任鬚垢阿縫璽蹐砲垢襪里任呂覆猶予期間を設けるべき、安全基準に関しては米韓FTAのように枠を設けるべき、J欷韻砲弔い討魯ン保険だけでなく学資保険の中身なども変えるべき、などと言い出し、事前協議で合意しなければ(日本の参加の承認を得るために必要な)米国議会への通告はしないという。自動車などの問題は日本の農産物などそれぞれのカードを出し合って本交渉でやるべきものだから我々は妥協しなかった。安倍政権はこんな状況で参加をするつもりなのか」とただした。 
 
 安倍首相は交渉には守秘義務があるはずと前原議員をけん制、前原議員は守秘義務があることは認めながらも「国益にかなうかどうかで判断した」と切り返した。(予算委員会の質疑のVTRは衆議院HPで視聴できる)。 
 
 民主党議員で組織する「TPPを慎重に考える会」の篠原孝会長は「TPP交渉参加はもともと政府の専権事項で政府の責任。議員が関与するのは協定ができて批准する時になる。しかし我々が与党の時は、これではいかんと首相訪米時などは阻止の集会を開いて与党内部からストップをかけてきた。したがって本来は与党自民党がやるべきこと」と、安倍政権のTPP参加にブレーキをかけうるのは自民党内部の反対派であると指摘する。 
 
 自民党議員240名が参加、TPP参加の断固阻止を叫んでいた『TPP参加の即時撤回を求める会』は与党となった途端に「交渉参加の決定は政府の専権事項」であるとして「参加に当たっては、守り抜くべき国益(政権公約に記された6項目)をどう守っていくか明確な方針を示すべき」との条件闘争に変じた。 
 
 安倍首相は「決断したのは交渉への参加に過ぎない。国益をかけた交渉はこれからだ」と述べている。日本の国益を損なうようであればいつでも交渉を離脱する、との意味にとれるが、カナダやメキシコが参加の際にサインした念書には「交渉を打ち切る権利は先発9カ国にある」と記されており、後発国である日本が同様の念書へのサインを要求される可能性は高い。安倍首相は米国にとって同盟国の日本に対して特別な計らいがあると考えているようだが、交渉相手は11カ国で米国だけではないのだ。 
 
 3月4日〜13日までシンガポールで開催されたTPP交渉会合に米国のNGOパブリック・シチズンのスタッフとして参加、情報収集を行ってきたSTOP TPP!!官邸前アクションの内田聖子さん(アジア太平洋資料センター事務局長)は、米国の貿易担当者が他国の交渉官に対して次のように述べたと伝えている。「日本は、カナダとメキシコがTPPに参加するために強いられた、非礼であり、かつ不公正な条件と同内容を合意している。つまり、事前に交渉テキストを見ることもできなければ、すでに確定した項目について、いかなる修正も文言の変更も認められない。新たな提案もできない」。 
 
 しかも、例え今、参加表明しても、米国議会が日本の参加を認めるためには3カ月の猶予を必要とする。日本はどうにか9月の米国で行われる交渉会合に参加できてもほとんどのルールは決まった後で、日本はその決まったルールを「黙って受け入れるだけ」でしかないというのだ。 
 
 米国パブリック・シチズンの貿易担当ローリ・ワラックさんは「日本のTPP参加は主権の放棄」であると懸念を示す。「日本はルール作りに参加する権利も何に合意するのか知る権利すらないのに参加しようとしている。それは900ページもあるルールに、日本の既存及び未来における全ての法制度をあわせなければいけないということ」「なぜ安倍政権が日本にとってこんなに無礼で危険なプロセスに合意しようとしているのか不可解でなりません」と述べている。 


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