2014年02月07日13時33分掲載  無料記事
http://www.nikkanberita.com/print.cgi?id=201402071333475

中東

イスラエル大統領シモン・ぺレス氏のツイッター  〜イランとの交渉とパレスチナ問題の解決〜 パレスチナ問題は解決間近か?

  イスラエル大統領のシモン・ぺレス(Simon Peres,1923-)氏もツイッターでメッセージを発信している。ヘブライ語の時もあるが英文の時も少なくない。最新のメッセージでは世界の高校生9000人に向かってオンラインで講義を行った、というものだ。 
 
  ペレス氏は元イスラエル労働党党首だが、イツハク・ラビン氏が首相だった時代に外務大臣としてPLOの故アラファト議長と交渉を行い、「オスロ合意」を得た。これによりアラファト議長らと1994年にノーベル平和賞を受賞している。しかし、オスロ合意はその後、成果を上げることができず、イスラエルではネタニヤフ首相率いるタカ派のリクード党政権を生むことになった。現在、ペレス大統領はシャロン元首相が倒れる前に立ち上げた中道政党カディマに所属している。右派のリーダーだったシャロン氏が中道政党を作り、左派のリーダーだったペレス氏がそれに加わった構図である。ペレス氏は年齢は90歳と高齢だが意気軒昂のようだ。 
https://twitter.com/PresidentPeres 
  ペレス氏は1月23日のツイッターでイランの民衆は歴史的に見るとイスラエルの敵ではなかったし、イランと交渉する用意があると発言している。これはタカ派だったアフマディネジャッド大統領から穏健派のロウハニ大統領に政権が移行したことを受けているのだが、だからと言ってすぐに警戒心を失っているわけではないようだ。ロウハニ師にいくつも注文をつけている。 
 
  たとえばシリアの内戦に関して、ロウハニ大統領がヒズボラに武器や金を送らないと宣言していないこともその1つであり、それゆえ、イランは現在も「テロの中心」にあると発言している。これはイランと敵対してきたイスラエルにとっては普通に発信される言葉なのだろうが、世界から見るとインパクトのある言葉である。 
 
  レバノンの政治・武装組織ヒズボラはシーア派(アラウィ派)のアサド政権に組しており、そのヒズボラを同じくシーア派のイランが支援していると批判しているのである。ヒズボラはレバノン南部からイスラエルに向けてロケット攻撃を行ってきたとして、テロ集団であると見ているのである。しかも、隣国シリアの内戦がレバノン内部にも飛び火し、反シリア政府派の政治家が車に仕込まれた爆弾で暗殺されるなど、レバノン国内の緊張も高まっている。 
 
  ペレス氏のロウハニ師への注文は他にもある。中東の平和交渉(パレスチナを指しているのだろう)に関して平和的解決を支援する姿勢を見せていないと批判している。こちらがより本質的だろう。パレスチナ問題に関しては米国のケリー国務長官を中心とした多国籍によるコミットを得た上で、イスラエルとパレスチナが交渉によって解決することが目下最大のテーマであると訴えている。 
 
  昨年秋はシリア空爆寸前までになっていた。シリア戦争が始まればシリアを支援するイランも戦争に巻き込まれ、中東大戦争勃発の危機にあったが、ロシアと米国の交渉で危機は回避された。そのことでイランと米国の戦争も回避され、米政府とイラン政府は1979年のホメイニ革命以来の外交再開となった。 
  一方、これにイスラエルで実質的な政治力を有するネタニヤフ首相やスンニ派のサウジアラビアなどが強く不満を持っている。ペレス大統領とネタニヤフ首相のコミュニケーションがどのようなものか不明だが、イスラエルが穏健派とタカ派の二つの顔を巧みに使い分けている側面もあるかもしれない。いずれにしてもペレス大統領に実権がないからと言って無視できるものではないだろう。 
 
  ペレス大統領は1月12日には亡くなったシャロン元首相への追悼を込めて、「シャロンの死を惜しむ。シャロンを懐かしく思い出す」と個人的回想を交えている。シャロン元首相はレバノン侵攻では戦争を指揮した者として告発されてきたタカ派の政治家だったが、その最晩年はイスラエルとパレスチナの二国家による平和的共存を掲げていた。 
 
 
■シャロン元首相の追悼記事 2 〜領土問題〜 1949年の線をどうするか 
http://www.nikkanberita.com/read.cgi?id=201401150226203 
 
■シャロン元首相の追悼記事 〜なぜリクード党から中道政党にシフトしたのか?〜 
http://www.nikkanberita.com/read.cgi?id=201401140415252 
 
■イスラエルがE1地区にさらなる住宅建設へ  イスラエル紙が報じる 
http://www.nikkanberita.com/read.cgi?id=201212060000224 
 
■《インターナショナルヘラルドトリビューンの論客たち》(1)  イラン抜きの中東の平和はありえないと説く<ロジャー・コーエン> 
http://www.nikkanberita.com/read.cgi?id=200908100010251 


Copyright (C) Berita unless otherwise noted.
  • 日刊ベリタに掲載された記事を転載される場合は、有料・無料を問わず、編集部にご連絡ください。ただし、見出しとリード文につきましてはその限りでありません。
  • 印刷媒体向けの記事配信も行っておりますので、記事を利用したい場合は事務局までご連絡下さい。