2014年05月25日06時59分掲載  無料記事
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経済

日本の大手3銀行がそろって最高利益を出す 〜アベノミクスと銀行〜

  5月になって日本のメガバンク3行がそろって最高利益を出したという記事が出た。今の日本はそれくらい景気がよいのだろうか?多くの庶民はさっぱりわからないだろう。なんといっても「最高利益」である。 
 
  日本経済新聞によると、最高益を3メガバンクがあげた要因は次のようになる。 
 
 ・貸し倒れに備えていた資金をそれほど使わずに済んだ 
 ・投資信託などの手数料が増えた 
 ・海外向けの融資で利益を出した。特に大型M&Aが貸出増に 
  つながった 
 
  もちろん、銀行が保有している日本企業の株価がアベノミクスで高騰していることも銀行の追い風になっている。 
 
  さて、銀行絶好調の要因の中で、気になるのは最後の海外向け融資、とくに大型M&A案件である。これらの絶好調の銀行では国内向けの貸出は伸びていないとされる。つまり、日本国内で銀行融資はあまり伸びていない。それとは対照的に日本企業が海外でM&Aを手掛ける時の資金融資で利益が上がっているというのである。昨今、日本企業が外国企業を買収しているらしいのである。ここに日本のメガバンクが絶好調である理由がある。 
 
  安倍総理がアベノミクスなる経済政策を始めたのが2012年12月の就任以後だが、その頃にはすでに円高対策として、政府は「円高対応緊急ファシリティ」なる政策を行っていた。それは「政府が外国為替資金特別会計の外貨資金を国際協力銀行を通じて融資する制度。2011年8月に創設し、利用実績は11月末時点で36件、1兆8000億円。」(日経 2012年12月16日づけ)内訳としてエネルギー資源確保、海外企業の買収などが柱となっている。円高を利用して海外の資源やエネルギー、さらには企業を買い進めようというのである。つまり、安倍政権誕生以前から、日本政府は国際協力銀行を通して、円高対策として外国企業の買収を促進していたのである。それはもちろん安倍政権になって一層勢いがついたと言ってよいだろう。 
 
  国際協力銀行(JBIC)とはかつての日本輸出入銀行や海外経済協力基金などが合体した組織、前身は日本政策金融公庫である。国策を行っているのだが形態は株式会社の形を取っている。この国際協力銀行が3年前から「円高対応緊急ファシリティに基づき日本企業の海外M&A及び中堅・中小企業の海外における安定的な事業継続を支援」しているのである。国際協力銀行のホームページを見ると、メガバンクから地方銀行まで様々な金融機関と海外でのM&Aを進めるための融資協調体制の確立を進めている様子がわかる。 
http://www.jbic.go.jp/ja/information/press/press-2012/0824-6511 
  もちろん民間金融機関が独自に海外でM&Aを進める側面もあるだろうが、国策の円高対策として海外資源の確保や海外の大型企業買収のために国の音頭のもと、民間金融機関が投資を進めているのである。特にアベノミクスでは円高対策が最初の大きな柱だった。そこで円を市中銀行に投じて、その資金で海外の土地や企業や資源を買い増せば円を売って外国のマネーを買うわけだから円安に振れる。 
 
  こうしてアベノミクスで日本国内に低利で市中に投じられたマネーが海外企業買収に大量に使われていたのである。それが今年メガバンク3行が最高利益を出すまでに膨らんでいたらしい。その一方で、肝心の日本の大多数を占める中小零細企業のもとには資金があまり回っていないのが実情のようだ。国内投資から海外投資へと国策が転換しているのである。 
 
  この大規模金融緩和政策の利益は本来日本国民に還元されるべきものである。というのも円安になって損を被る企業も少なくないからだ。それにも関わらず、円高対策で一部の企業が得をしていると言えなくないだろうか。それは国民の総意なのだろうか。海外展開のできる大企業が利益を出し、国内で操業している小さな事業体は今後調印される自由貿易協定によって、世界の巨大資本に飲みこまれていく恐れももっているだろう。 
 
  金融の倫理を研究している京都大学名誉教授の本山美彦教授はこの傾向について、次のように述べた。「邦銀は、ナショナリズムを捨てたのです。海外でM&Aの仲介をすることしか考えていません。」 
 
 銀行は国内で儲からないと見て、グローバル化で利益を得るようになった。日本国内の工場は空洞化する一途である。海外企業の大型買収は今後も増加する可能性があり、円安が進む可能性もある。そして今後は食料品も、通信機器やパソコン、その他の機械類も円安で割高となって、給料が上がらない中厳しい世帯が増える可能性もある。 
 
 
■日本企業の今後占う?サントリーの大型M&Aが金融市場に与える影響とは(現代ビジネス) 
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/38126 
■日本企業の相次ぐ海外大型買収と経常収支改善への道(nippon.com) 
http://www.nippon.com/ja/currents/d00112/ 
 
■本山美彦著 「金融権力 〜グローバル経済とリスク・ビジネス〜」 
http://www.nikkanberita.com/read.cgi?id=201401170608015 


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