2014年06月13日12時55分掲載  無料記事
http://www.nikkanberita.com/print.cgi?id=201406131255495

TPP/脱グローバリゼーション

【ほんまやばいでTPPその1】市場囲い込みと新植民地主義 大野和興

 今日はTPPについてお話しするのですが、いったいTPPは何者なのかということを改めて掘っていって、幾つかの側面から考えてみたいと思っています。一つは、貿易協定としてのTPPというのはいったい何なんだいうことです。 
 
 2点目が、もっと根源的なことなんですが、私たちが生きていく上での生存権といいますか、基本的人権といいますか、そうしたところから見て、TPPていったい何なんだろうというのが2点目です。それから3点目は、今、実は交渉だけを見ていますとほとんど進んでないということで、今度オバマが来て、安倍が「お土産」を出すんじゃないかという程度の話しなんですが、実は「お土産」を出そうが出すまいが、実は実質的なTPPは、国内で進んでいる。僕は「TPP体制化」と言ってるんですけれども、それに対する闘いがずい分遅れています。もう一つ、最後の論点は、TPPを相対化するといいますか、われわれ国内だけの議論をしてしまうんですけれども、そうじゃなくって、全世界でグローバリゼーション、グローバル化が進んでいる。TPPだけじゃなくっていろんなものがあります。そうしたTPPのもつ世界的な広がりの中で、いったい何が起ころうとしているのか、起こっているのかということを、特にアジアにそれをおきまして、考えてみたい。 
 
 これはたいへん大事な論点でありまして、国内だけの問題に縛りますと、すぐに国益論になってしまう。日本の国益が大変だ、関税自主権がなくなる、日本の国家としての権限をどうするのだというみたいな話が飛び交い、だんだんだんだん深みに入り込んで国家主義に陥ってしまう。「在特」なんてのは「TPP反対」ですからね。彼らは最初から反対なんですよ。すぐ日の丸もって出てくる。私たちの運動は、こうした排外主義とははっきりと一線を隔したものでなければならない。最近はTPP反対の市民の運動に「一水会」が入り込んできています。「一水会」は排外主義じゃないと銘打ってるんですけれども、国家主義、民族主義であることは変わりないんで、そこんところは少しきちっとしなきゃあいけないなと思っています。 
 以上四つの論点でお話しできればと思っています。 
 
1.TPPは何かと聞かれたら 
 
 まず経済的な側面といいますか、貿易協定・経済協定としてのTPPはいったい何なんだということです。今の世界の政治状況と重ねてみますと、これは確実に市場争奪戦と市場囲い込み、という姿が浮かび上がります。TPPはそう規定付けしなければいけないと考えているのですが、そういう規定付けが、今、ないのです。第二次世界大戦の大きい遠因の一つに、ブロック経済化、つまり市場囲い込み、という帝国主義間の熾烈な争いがあった。イギリス、フランス、ドイツ、イタリア、アメリカ、日本、ロシアなどの列強が生き残りをかけて市場競争といいますか、囲い込みをやっていた。市場を囲い込む時にはやっぱり武力というのがどうしても必要ですから。権益を守るということで。それが一つの大きい要因になって、遅れた資本主義国であるドイツ、イタリア、日本、それから進んだ資本主義国であるヨーロッパ、アメリカとの対立に収斂されていって、世界大戦につながっていくということがありました。 
 
 戦後世界の中で、この教訓を生かさなければいけないということでケインズが提唱してブレトンウッヅ協定が動き出します。これは、アメリカ合衆国ニューハンプシャー州北部に位置する片田舎のブレトン。・ウッズというところで大戦終了直前の1944年に開催された連合国通貨金融会議(45ヵ国参加)で締結されたもので、国際的協力による通貨価値の安定、貿易振興、開発途上国の開発を行い自由で多角的な世界貿易体制をつくることを目的としていました。この協定によって国際通貨基金(IMF)と世界銀行がつくられ、少し遅れて自由貿易推進のための「関税と貿易に関する一般協定」(GATT)がつくられます。 
 
 こうして第一次世界大戦後の経済秩序の基盤がつくられました。それが40年、50年経ちますと制度疲労を起こしますから、当初のそれなりの理想をもって出発したものが崩れてきますし、時代状況も大きく変わります。ひとつの変わり目は1980年代以降です。世界の半分が市場競争の時代に入る。サッチャーとかレーガンとか中曽根なんかが出てきまして、新自由主義が唱えられる。すべてが市場で決まるというイデオロギーが世界に広まり、それにつれて資本の暴力がむきだしで出てきます。90年代以降、それがさらに顕著になる。ソ連が解体し、ベルリンの壁が崩壊して、東ヨーロッパが解体して、戦後世界を規定してきた東西冷戦が終わる。中国も市場経済へと舵を切ります。それまでの世界は資本主義陣営の西側と共産主義陣営の東側というとふうに二分されていたのですが、それが資本主義経済に統合されて世界のマーケットがひとつになる。そしてより強力に自由貿易を進めるためにGATTに代わる国際機関WTO(世界貿易機関)が1995年に生まれます。WTOはある種の司法権まで持つ強力な国際機関なのですが、各国の利害が絡まり合って動きがとれず、機能停止の状態にあります。 
 
 そして、しれでは埒があかないということで、地域内あるいは2国間の自由貿易協定(FTA)主役として出てきました。TPPはそのな中でも最も激烈にモノ、カネ、サービスの自由化を徹底してすすめようというもので、それをアメリカの主導でやっていく。交渉参加国は12ヶ国ですが、経済的な力はアメリカ、そして日本が抜きんでている。結局、この二カ国が自国の経済権益にアジア・太平洋諸国を丸ごと取り込んでいくということで進んでいるということです。新しい形の植民地主義という側面がそこにはあります。そこのところをきちっと見なければいけないんじゃないか。これがTPPを考えるにあたっての第1の論点です。 


Copyright (C) Berita unless otherwise noted.
  • 日刊ベリタに掲載された記事を転載される場合は、有料・無料を問わず、編集部にご連絡ください。ただし、見出しとリード文につきましてはその限りでありません。
  • 印刷媒体向けの記事配信も行っておりますので、記事を利用したい場合は事務局までご連絡下さい。