2015年06月23日14時04分掲載  無料記事
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TPP/脱グローバリゼーション

TPPとジェネリック医薬品 TPPが国民皆保険の脅威となる可能性も

  国民健康保険が日本で確立されたのは1961年(昭和36年)のことで、この制度によって日本の大衆が高度の医療を安心して受けられるようになりました。しかし、この医療費が高齢化や成人病に由来する様々な疾病の進行とともに年々高騰してきていると言われています。 厚生労働省は次のように述べています。 
 
  「近年の国民医療費の動向を見ると、その支出は国民所得の伸びを上回る勢いで増えています。2009(平成21)年度の国民医療費は、36兆円を超え、10年前と比較して2割近い増加となっています。医療技術の進歩、高齢化等により、今後も医療費の上昇が見込まれる中、国民皆保険を堅持していくためには、必要な医療を確保した上で、効率化できる部分は効率化を図ることが重要です。」 
 
  その1つの柱がジェネリック医薬品と言われるもので、特許期間が切れた医薬品を後発メーカーが製造するものです。安全性や効果、信頼度を高める必要があることは言うまでもありませんが、特許料を支払う費用がないことによって安価の薬を庶民が利用することが可能となります。朝日新聞の報道ではジェネリック医薬品の価格は「先発薬の5〜6割」と報じられていますから半値に近い。これを利用しない手はありません。ちなみにこの医薬品の特許期間は原則20年(販売体制の確立までに時間がかかった場合は最長で5年間まで延長できる)です。 
 
  現在のジェネリック医薬品の日本での数量のシェアは46.9%(2013年9月現在)で、国はこれを2020年度末までに80%に高める目標を持っています。最初は2017年3月末までに60%を目標としていましたが、その目標期日を1年前倒しにした上に、さらに80%という目標数値を掲げたわけです。これを見ても国民皆保険を維持するために、厚生労働省がジェネリック医薬品の普及を死活の急務と考えていることがうかがえます。 
 
  しかし、ここに来て、大きな問題が浮上しています。アメリカが動かしている環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)の条項の中に、ジェネリック医薬品の制度改定があるというものです。アメリカの報道番組「Democracy Now!」によれば、医薬品特許を持っている製薬メーカーは特許期間が切れても薬に小さな変化を加えればさらに20年間特許期間を継続できる条項があるとのことです。米市民の中に市民の安価な医療が妨げられ、健康悪化につながるという不安や、発展途上国の人々が安価な医療が受けられなくなり、結果的に死を意味すると言った懸念が生まれています。アメリカでこの問題が報じられたのは米担当官かあるいは企業などの関係者がリスクを覚悟でウィキリークスに条項の一部を情報開示し、内部告発したからです。 
 
  TPPは単なる貿易協定ではなく、ISDS条項と言われるものがあり、協定を結んだ国々の法制度や規制までも実質的に覆す力すらを持っていますが、その中身が市民になかなかわからないことが大きな問題になっています。ジェネリック医薬品の問題1つとっても、日本の厚生労働省が掲げる5年後に数量シェアを80%にする目標はTPPと正面からぶつかりあうのではないでしょうか。これが真実なら国民皆保険に対する脅威になりうるものです。 
 
 
■暴露されたTPPの条項に怒る米市民 市民の健康への危惧が高まる 特に発展途上国の市民にとっては致命的な条項が… 
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