2015年08月27日07時11分掲載  無料記事
http://www.nikkanberita.com/print.cgi?id=201508270711364

アフリカ

【西サハラ最新情報】ISの人買い人と買われ人として活躍するモロッコ人 平田伊都子

  2015年8月21日、特急列車が一人のモロッコ人テロリストに襲われました。死人も出ず犯人も次の停車駅で簡単にフランス警察に引き渡されたのに、BBC、CNN、CBS、、などなど世界中のプレスが一週間経っても大騒ぎをしているのです。それは、犯人を取り押さえたのが3人のアメリカ軍関係者と一人の英国人だったからです。まるで過激派組織ISとの戦争に勝利したような、はしゃぎぶりです。オバマ・アフリカ・アメリカ大統領は夏休み中にもかかわらず、アメリカ人3名に電話をいれるし、オランド・フランス大統領は勲章を手渡しするしで、4人を世紀の大英雄に仕立て上げました。 
 
(1) 特急列車内の捕り物: 
 2015年8月21日夕刻、オランダのアムステルダムを出発しパリに向かっていた国際特急列車が、フランスの国境を通過した。ロイター通信によると、列車内でカラシニコフ銃を構えた男を発見し、米兵3人とイギリス人ひとりが男を取り押さえたという。その時、男は発砲した模様で、銃声を聞いた乗務員は乗務員室に退避し、中から鍵をかけた。扉を叩いて乗客たちは「出てこい」と、大声をあげたが、応じなかったそうだ。 
 
(2) 犯人アユーブ・アルカッザーニ: 
  8月25日、フランスの検事フランソワ・モリンは記者会見で、「テロ容疑者アユーブ・エルカッザーニは25才のモロッコ人で、270発の弾丸とカラシニコフ・アサルト・ライフル(強襲ライフル)、ガソリンひと瓶、ルガー・ピストル、そしてボックス・カッターナイフを持っていた。容疑者はブルッセル駅構内で切符売りから現金でファーストクラスのチケットを買い、一番早く出るアムステルダム~パリ間の特急列車に乗り込んだ。容疑者が襲撃直前に携帯で過激派の映像を見ていた形跡がある」と、語った。さらに検事は、「容疑者は否定しているが、過激派組織にリクルートされたと見られる。これから洗い出していく、、」と、鼻の孔を膨らませていた。 
 
(3) モロッコとスペインの大捕り物: 
 8月21日、フランス特急列車テロ事件が起こったと同じ日に、モロッコとスペインが、テロリスト大捜査をやった。かねてから目をつけていた14人の過激派組織リクルート組員を逮捕した。彼らは戦闘要員を集め洗脳し、イラクやシリアなど過激派組織ISの戦場へ送り込んでいた。スペインはマドリッドで、モロッコはフェズ、カサブランカ、ナドル、アルホセイマ、ドゥリウチなどで、パトカーの警笛がけたたましく鳴り響いた。8月24日、スペイン対テロ当局者はカデナ・セル・ラジオ・ネットワークで、「シリアやイラクから帰ってきたイスラム過激派の約800人が、ヨーロッパで襲撃準備を整えている」と、語った。 
 
(4) アユーブは麻薬密輸団の一員: 
 アユーブは北モロッコのテトゥアンに生まれ、2007年からスペインのマドリッドなどに住み始めた。スペイン当局は早くから、アユーブが麻薬密輸に絡んでいることを突き止めていた。アユーブは過激派のモスクに出入りしたり過激派サイトに投稿したり、イスラム過激派と頻繁に接触していた。アユーブをテロ・ブラックリストに載せたスペインは、2014年2月に要注意人物としてフランス当局にも警告を発していた。 
 「モロッコの麻薬密輸団は、北アフリカに展開するイスラム過激派組織MUJAO(The Movement for the uniqueness and Jihad in West Africa )と繋がっていて、麻薬の密輸だけではなく誘拐にも手を染めている」と、西サハラ難民政府首相アブデルカデル・オマルは記者会見で明言した。MUJAO(西アフリカ唯一の聖戦運動)とは、AQIM(北アフリカのアルカイダ)から分裂したイスラム過激派組織で、2013年にアルジェリアの石油プラントを襲撃したムフタール・ベルムフタールが率いていると言われている。 
 
 このところ、テロだの誘拐だの人買いだの、、闇の世界でモロッコ人が活躍しています。 
 でも、「モロッコ人は悪い」というのは悪いです。筆者はカサブランカを出発し、アガディール、マラケシュ、ラバト、メクネス、フェズ、タンジェ、テトゥワンと、列車やバスを乗り継いで旅をしたことがあります。 
 フェズからタンジェまで、三等列車の中で乗り合わせたモロッコの青年から、アラブ式のパン・ホブズを食べさせてもらいました。タンジェからスペインに出稼ぎに行く彼のために、お母さんが一週間分のパンを焼いてくれたとか、、「カビないといいね、、」と筆者。「カビたらそこだけ取ればいい」と、青年。納得しました。 
 
文:平田伊都子 ジャーナリスト  写真構成:川名生十 カメラマン 


Copyright (C) Berita unless otherwise noted.
  • 日刊ベリタに掲載された記事を転載される場合は、有料・無料を問わず、編集部にご連絡ください。ただし、見出しとリード文につきましてはその限りでありません。
  • 印刷媒体向けの記事配信も行っておりますので、記事を利用したい場合は事務局までご連絡下さい。