2015年11月25日19時54分掲載  無料記事
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文化

テロと報復戦争の時代に ベルギー出身の作家ジャン=フィリップ・トゥーサン氏は・・・

  かつてフランスの哲学者・作家・批評家のサルトルは「飢えた子供の前で文学に何が可能か」と問いかけたことがあった。今、身近に進行しているテロや戦争といった危険な空気の中で、ベルギー出身でフランスで出版活動を続けてきた作家のジャン=フィリップ・トゥーサン氏は新作「フットボール」(サッカー)の中から、次の引用をして、自分の思いを伝えている。 
 
  "Qu’est-ce que creer, aujourd’hui, dans le monde dans lequel nous vivons ? C’est proposer, de temps a autre, dans un acte de resistance non pas modeste, mais mineur, un signal - un livre, une oeuvre d’art -qui emettra une faible lueur vaine et gratuite dans la nuit. Ce que je faisais, en poursuivant, avec obstination, mon travail d’ecrivain depuis trente ans, c’etait simplement m’efforcer d’affirmer une voie humaine possible, un chemin, une attitude, une finesse, une tenuite, une douceur, une dignite. " (Football, 2015) 
Cette attitude, cette finesse, cette tenuite, cette douceur, cette dignite, dont nous avons, aujourd'hui plus que jamais, grand besoin. 
(※文字化け対策のため、アクセント記号は消しています) 
 
  「『今日、創作することは何を意味するのでしょうか?私たちが生きているこのような世界において。それは時に応じて時代に抗して何かを提案することだと思うのです。しかし、それは抵抗というような大それたことというよりも、むしろささやかな試み、あるいはかすかな信号とでも言えばよいでしょうか。一冊の本が、1つの作品が弱々しくもある光を発するわけです。その光には特定の政治的な意図といったものはないのです。ただ、夜の闇の中に微弱な光を発するのです。 
  私が作家として行ってきたことは、そして今も継続していることは、30年来、断固として私がやってきたことの延長線上にあるものです。それは実にシンプルなことなのですが、今日において可能な、人間として生きる道を作家として描こうと試みることです。それは進むべき道であり、望ましい態度であり、洗練であり、弱々しいことであり、優しさと穏やかさであり、人間の尊厳であったりします。』(「フットボール」より) 
  このような態度こそが、このような洗練こそが、このような弱々しさ、優しさ、人間の尊厳こそが、私たちにとって今日、かつてないほど必要になっているものだと考えています。」 
 
(ジャン=フィリップ・トゥーサン) 
 
■トゥーサン氏、新作を語る(Youtube) 
https://www.youtube.com/watch?time_continue=100&v=F207dpwVVMQ 
 
■ルモンドの書評(Jean Birnbaum, Le Monde, 18 septembre 2015) 
  'Tous les souvenirs de match sont des souvenirs d’enfance. ・・・・’ 
  「サッカーの試合に関する思い出はすべて少年時代につながっている・・」(Jean Birnbaum = ルモンドの書評担当ジャーナリスト) 
  トゥーサン氏の新作「フットボール(サッカー)」は小説とエッセイの中間にある本だという。書評によれば本書の中でトゥーサン氏は書く事への欲求と丸いボール(サッカー)に対する耽溺を双方絡め合わせて語っている。2002年に日本で開催されたワールドカップの、日本V.S.ベルギーの試合のことにも触れているようだ。 


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