2015年12月18日13時49分掲載  無料記事
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文化

コンゴ出身の作家アラン・マバンクウ氏がコレージュ・ド・フランス教授に 3つの大陸で黒人の生と文学を見つめる 3月17日に就任記念講義

  コンゴ出身の黒人作家アラン・マバンクウ氏がフランスの高等文化教育機関コレージュ・ド・フランスの教授に選出されました。来年3月17日に就任記念講義を行う予定です。講義のテーマは「アフリカの黒人に焦点を当てた、植民地における文学について」。 
 
  マバンクウ氏には「黒人のすすり泣き」(Le sanglot de l'homme noir)という自伝的なエッセイ集があります。パスカル・ブリュックナーという作家による「白人のすすり泣き」という本のもじりのようですが、「僕らは国家独立の太陽の時代の子じゃない。僕らはルワンダの虐殺の後の子なんだ」とマバンクウ氏は語りかけます。1960年の独立時代から50年以上が過ぎた今、アフリカに存在するすべての悪を白人ひとりに帰することはできない、というのです。一斉にアフリカが独立した1960年ころから、アフリカがどう歩んできたのか、その過去、現在、未来を自らの歩みをもとに語りかけている本です。 
 
  コレージュ・ド・フランスの教授には哲学者のアンリ・ベルクソンやミシェル・フーコー、歴史学者のフェルナン・ブローデル、人類学者のクロード・レヴィ=ストロース、社会学者のピエール・ブルデューなど、フランスを代表する知識人が就任しています。しかし、一般の大学と異なり、講義が市民に開かれているのが特徴です。 
 
  マバンクウ氏はフランスで大学教育を受け、フランスで作家デビュー。「青・白・赤(Bleu-Blanc-Rouge)」、「ヤマアラシの思い出(Memoires de porc-epic)」、最新作には「小さな唐辛子(Petit Piment)」などがあります。マバンクウ氏はルノードー賞など、いくつかの重要な賞を受けた後、この数年はカリフォルニアの大学(UCLA)で文学を講じていました。 
 
  アメリカに渡った収穫の1つが、「ジミーへの手紙」です。アメリカの黒人作家ジェームズ・ボールドウィンについて綴った作品です。アフリカ、欧州、北米と3つの大陸をはしごする黒人作家の活躍は稀有なものと言ってよいのではないでしょうか。地域性にとらわれない、より普遍性を持った黒人の生き方というものが探求できます。そして、欧州とは違って、アメリカでは黒人の血の入ったオバマ大統領が就任するなど、時代は大きく変わってきています。 
 
  マバンクウ氏はコレージュ・ド・フランスの教授に就任したことで、来年からフランスで講義を行うことになります。ちなみにマバンクウ氏の友人であるハイチ出身でカナダで作家活動を続けてきた黒人作家のダニー・ラフェリエール氏はアカデミー・フランセーズに選出されたばかりです。 
 
 
■マバンクウ氏の就任演説の詳細 (入場無料 470席) 
http://www.college-de-france.fr/site/alain-mabanckou/inaugural-lecture-2016-03-17-18h00.htm 
 
 
■文学の集いでのマバンクウ氏の対談 
https://www.youtube.com/watch?v=oK1iGqclmmM 
 ジャーナリストのフランソワーズ・ロシノ−氏が質問を出している。1時間近い対談で、マバンクウ氏の文学観や経験などがよく紹介されている。ロシノー氏は「本の現場」という作家との対談シリーズを行っており、フランス文壇について垣間見ることができる。 
 
■アラン・マバンクウ著 「黒人のすすり泣き」(Le sanglot de l'homme noir) 
http://www.nikkanberita.com/read.cgi?id=201310290930502 
 
■アラン・マバンクウ著 「ジミーへの手紙」〜黒人作家の生〜 
http://www.nikkanberita.com/read.cgi?id=201502051431074 


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