2016年03月17日15時06分掲載  無料記事
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文化

思想史講座で「江戸思想を読む」 子安宣邦(近世日本思想史 大阪大学名誉教授)

  4月からの思想史講座で「江戸思想を読む」を始めます。その理由を書きます。福沢諭吉は明治の変革に際し、「一身にして二生を経るが如し」といっています。これは明治維新の体験を文明論的転換の体験としていったものです。 
 
  しかし明治維新を文明論的転換としていうとき、その転換は非文明的な前近代社会から文明的な近代社会への転換として理解され、自覚されることになります。福沢だけではない。多くの日本人における明治の変革の体験というものは、そうした文明論的な転換の体験であったように思います。だが昭和の日本人にも継承されてきたこの文明論的転換の自覚は、はたして日本の近代を文化的、精神的に豊かにしたでしょうか。 
 
  維新を文明論的転換として見るとき前近代として否定的に見られる江戸時代は知的、文化的に一つの成熟に達した時代です。この江戸を否定的にしか継承しない近代日本は自らを貧しくさせていると思わざるをえません。精神的にいよいよ貧しい現代日本にあって、己れ自身を豊かにするものとして、「一身にして二生を経る」体験をもう一度、受け身ではなく積極的に追体験してみようではありませんか。これが私の思想史講座で「江戸思想」を読む理由です。 
 
 
子安宣邦(近世日本思想史 大阪大学名誉教授) 
 
 
■子安宣邦さん 
  思想史家として近代日本の読み直しを進めながら、現代の諸問題についても積極的に発言している。東京、大阪、京都の市民講座で毎月、「論語」「仁斎・童子問」「歎異抄の近代」の講義をしている。近著『近代の超克とは何か』『和辻倫理学を読む』『日本人は中国をどう語ってきたか』(青土社) 
(子安氏のツイッターから) 
 
■子安宣邦のブログ -思想史の仕事場からのメッセージ- 
http://blog.livedoor.jp/nobukuni_koyasu/ 
 
 
■「中国問題」と私のかかわり 〜語り終えざる講演の全文〜 子安宣邦(大阪大学名誉教授 近世日本思想史) 
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■<大正>を読む 子安宣邦 和辻と「偶像の再興」−津田批判としての和辻「日本古代文化」論 
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■丸山眞男「超国家主義の論理と心理」を読む 〜丸山の「超国家主義」論は何を見逃したか〜 子安宣邦(近世日本思想史 大阪大学名誉教授) 
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■「日本思想史の成立」について−「台湾思想史」を考えるに当たって 子安宣邦(近世日本思想史 大阪大学名誉教授) 
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