2016年04月30日14時58分掲載
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文化
【核を詠う】(番外篇・憲法詠) 九条歌人の会編『歌集 憲法を詠む 第八集』を読む 「征きし人の遺言かとも九条を抱き生きこしわが半生は」 山崎芳彦
「従来から、政府は、憲法第九条と核兵器との関係についての純法理的な問題として、我が国には固有の自衛権があり、自衛のための必要最小限度の実力を保持することは、憲法第九条第二項によっても禁止されているわけではなく、したがって、核兵器であっても、仮にそのような限度にとどまるものがあるとすれば、それを保有することは、必ずしも憲法の禁止するところではないが、他方、右の限度を超える核兵器の保有は、憲法上許されないものであり、このことは核兵器の使用についても妥当すると解しているところであり、・・・」(4月1日の安倍内閣が閣議決定した逢坂誠二衆院議員の質問主意書に対する答弁書)。この答弁書では、「我が国は、いわゆる非核三原則により、憲法上は保有することを禁ぜられていないものを含めて政策上の方針として一切の核兵器を保有しないという原則を堅持している。」、また核不拡散条約の非核兵器国としての義務を負っていることからも一切の核兵器を保有し得ないこととしている、ともしている。従来からの政府見解を維持した答弁書だといわれるのだが、現憲法のもとでも核兵器の保持と使用は認められているという見解である。
安倍首相の祖父である岸信介元首相は、1960年に日米安保条約改定を強行する2年前の国会答弁で、「核兵器はいろんな発達の段階があるから、種類によって、必要最小限度のものに入り得るものもあるだろう。」と答弁していることが想起される。
今回の政府答弁書は、核兵器の保有、さらに使用が憲法九条によって禁止されているものではなく、「非核三原則」を変更すれば「自衛」「安全保障」の名のもとに、この国が核武装することが可能になるというに等しいのではないか。従来の政府見解を踏襲したものというが、安倍首相は「戦後レジュームからの脱却、転換」を目指し、「任期中に憲法改正を成し遂げたい」と公言し、実際に安倍内閣発足後に、「武器輸出三原則」を「見直し」て「防衛装備移転三原則」なる武器輸出促進政策に転換し、歴代内閣が禁止してきた「集団的自衛権の行使」を容認する憲法解釈の変更を閣議決定で行ない、さらに「安全保障環境の変化」を「日米ガイドライン」をより軍事面での密接化をすすめ、違憲の「安保関連法制」を強行採決の連発で「成立」させ施行してきた。安倍政権が重ねて来た内政外交一体の「壊憲」政策は枚挙にいとまがない。「従来の政府見解」の踏襲ということは意味を持たない。「閣議決定」ひとつで、憲法解釈の変更、重要政策の改廃をする安倍内閣であり、それに同調・追随することに「利」を求めようとする勢力が支えている政府なのである。
筆者は、自衛隊は違憲の存在であり、日米安保条約体制は日本国憲法の精神を踏みにじっている、と考えるものの一人であるが、憲法九条をどのように読み、その心を考えても、核兵器の保有と使用が認められるはずがない、そのうえに立っているからこそ「非核三原則」があり、それを守ることは憲法九条を守ることを意味すると考える。安倍政権は、憲法を尊重し、その精神と内容を守ろうとする意志を持たない。そのことは自民党の「日本国憲法改正草案」に明らかだ。
その改憲への策動を重ねている安倍政治に対して「憲法を『改変』するのではなく真に憲法を『実現』させることをこそ、歌壇内外にいっそう大きく広げる」ための「九条歌人の会」が「短歌にたずさわる者にふさわしく『憲法九条』を守る心を創意をこらした幅広い工夫で表現し、平和と自由を願う国民の、大きな流れになるよう力を尽くす」(九条歌人の会アピール)取り組みの大切な一環である『歌集 憲法を詠む』の第八集を読んできたが、今回で終る。いま、同会は第九集への作品を募集しているという。多くの作品が生き生きと詠われることを期待する。
◇応募作品集(1人1首)�ぁ�
議事堂に真向かい凛として叫びたり「9条守れ」と十二万人(じゅうにまん)の中
(山梨 千葉洋子)
いくさ場にたおれし民の犠牲ありてとわの平和をと九条生まれり
(東京 土屋卓子)
若きらは憲法活かしパレードで「戦争イヤ!」と自由にコールす
(宮城 堤 智子)
「九条壊すな」「平和を守ろう」一万人の一人となりて
(埼玉 角田洋子)
十五年戦争まつぶさに生きて学びたる平和憲法こわすを許さず
(東京 遠山彌生)
主権者の「われら」は断じて認めない安全保障という戦争法
(東京 内藤ます子)
出征兵士の墓陰にさるすべり咲く欺瞞韜晦戦争法案
(千葉 中込勝則)
「アベ政治許さず」の声津々浦々裏切り、背信暴いて見せよう
(千葉 中條雅夫)
国民の楯となりくれし九条は傷つきつつもまた復活す
(京都 永田二三子)
戦地での苦労を父が語るたび聴くは辛しと泣きたる祖母よ
(東京 長澤久子)
リハビリの治療の手を休めずに青年はシールズがよきと話しかけくる
(大阪 長野 晃)
ほれぼれと憲法前文声に出し読めばおのずと涙わきくる
(大阪 長畑望登子)
八月は喪の日同期のひめゆり部隊は海と空しか無かったのです
(東京 中村静子)
兵たりし日の悔恨を声低く詠いし柊二の歌集読みつぐ
(大阪 中村惟行)
子を抱きママはマイクに「戦争いや」スマホの原稿とつとつと読む
(東京 中山洋子)
花が好き温泉が好き落語好き 好きの数だけ憲法が好き
(北海道 那須愛子)
たたかいに果てし魂告げたまえ繰り返す愚を憑依して人に
(千葉 名取二三江)
九条に一票の格差や擁護義務違憲だらけの政治となりぬ
(大阪 西野防人)
青波の立つごと無数に差し上げしプラカードは記す「九条壊すな!」
(千葉 野田忠昭)
争わぬひと日ひと日を積み重ね戦後百年迎えるが夢
(埼玉 橋本一枝)
夕食時電話のありて雑音の中から友の「わたし今国会前」
(東京 原田慶子)
絶え間なき騒乱の地に発信の急「共生」築く九条の愛
(茨城 針谷喜八郎)
若者を魚雷に仕立て敵艦に体当たりさせし教育の恐ろし
(東京 林れい子)
原発と原爆同じ放射能きっぱりやめて清貧ぐらし
(東京 樋口明弘)
イェメンの空爆実にきなくさし日本巻き込まれまいぞ守れ九条
(神奈川 廣石正子)
「九条守れ」と全国つらぬく示威のときじんじんと夏の時間が移る
(茨城 深谷武久)
七〇年戦後の傷もなお深し命あるもの語り続けよ
(千葉 福島恵子)
人の世のさだめ司る神ありて、もの言はば「憲法九条守れ」
(神奈川 ふくだゆきを)
うたびとが滂沱の涙ぬぐいつつ十六歳の八・一五を語りき
(東京 藤木倭文枝)
平和とう風呂敷にくるみて押し売りす安倍政権の「戦争法案」
(埼玉 藤島眞喜子)
人類が核戦争に滅ぶさま縮図となってフクシマの事故
(千葉 藤田貴佐代)
生涯の仕事の一つと思いいてチラシを配る朝日の中に
(神奈川 二上光子)
九条を世界に誇れと教えてくれし恩師の家に蔓草の這う
(山口 古川千恵子)
「我が軍隊」とうとう出たよ腹のうち九条守れ七十年の平和を
(茨城 古橋ミツ)
天を突く欅の緑よ誇り高くあれ 赤紙に命を托す悪夢を許さず
(茨城 星野とみ子)
打ち鳴らせ平和の鐘を80年90年100年を越えて
(高知 細木 良)
もったいないほどに私を自由にし育みくれし憲法と父母
(千葉 本田幸世)
呟くはほんの小さな思いだが憲法9条言わずにおれぬ
(静岡 松浦直巳)
「許さない」ひときわ太き墨痕の兜太の叫びを玄関に貼る
(山口 松野さと江)
武器持たず殺傷なき七十年平和憲法の力あればこそ
(大阪 松村誠一)
「終わりなき悲しみ」語る金田茉莉十二万余の戦争孤児の一人
(東京 松村伸子)
憲法をないがしろにする者たちに政治を託すわけにはいかぬ
(大阪 光田幸子)
はちぐわつの帽子かぶればいっせいに遠き呻きが駆けよってくる
(兵庫 南 輝子)
平和なるみちは憲法壊さずの思ひを辿る奥平(おくだいら)康弘逝く
(東京 南川よし子)
惑星の大気の組成変えること憲法9条改釈変更
(東京 紫 あかね)
百害をもたらす政権消え失せよ憲法九条日本の宝
(岡山 目賀和子)
九条の非戦の決意を想うべしひとを殺むる国となるまじ
(埼玉 本木 巧)
枇杷の実が似合ふ夏雲が似合ふこのあおぞらに軍機ふさはず
(千葉 森 みずえ)
征きし人の遺言かとも九条を抱き生きこしわが半生は
(兵庫 安武ひろ子)
戦争をしないと言い切る日本の光る憲法孫と詠み上ぐ
(埼玉 �盆圭膸�)
征く父を送りし朝のバンザイを忘れざるまま八十路を生きる
(東京 山影和子)
『かわいそうなぞう』この夏も読み聞かす同じ場面に声詰まらせて
(東京 山口信子)
幼孫の限りない笑顔日本国憲法九条ここにぞあらん
(東京 山下摂治)
試験にて憲法前文読み込みし若き発見今確信に
(東京 山田富美子)
ちゃぶ台を囲み安保を論議した旧友(とも)との再会ゼッケン九条
(東京 山田秀夫)
長崎は父の故郷娘らの心にひびけ語り部のことば
(東京 山本さき子)
猛暑にも負けずつどうおれたちは戦争はイヤと連日デモる
(宮崎 弓削 敏)
分かりやすく丁寧に説明するといふ戦争法案如何なる言葉で
(東京 柚木まつ枝)
アメリカにすべての基地を返還し九条発信の日本にしたし
(東京 横井妙子)
普天間か辺野古かわれら騙される昨日神風今日抑止力
(東京 横田晃治)
九条のもとの自衛隊を「吾が軍」とのたまふ戦後最低の総理
(奈良 横山季由)
七十年経(た)ちて今だに沖縄の青く住たる海荒らさるる
(東京 和田トメ)
戦争は悪だこの悪地球から追放しよう一つこころに
(福島 渡部軍治)
七十年守り続けし9条なれば孫らに渡さん無疵のままで
(東京 渡辺久子)
戦場へ行かない人が決めていく安保法制国会審議
(千葉 渡辺正夫)
九条歌人の会編『歌集 憲法を詠む 第八集』の作品を読んできたが今回で終る。この集には、故人歌人9氏と川柳作家の作品を歌人10氏が抄出しているが、省略させていただく。
次回から、原子力詠作品を読む。 (つづく)
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