2016年06月14日21時07分掲載  無料記事
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TPP/脱グローバリゼーション

アメリカ議会のTPP批准か否決かを決める投票はいつ?  市民団体が危惧する米大統領選直後の「特別な時期」 (レイムダック)の議員たちの投票を検討するTPP賛成派

  TPP(環太平洋パートナーシップ協定、あるいは環太平洋経済連携協定)の明暗の鍵を握るのがアメリカ議会での批准の投票です。すでに協定に署名こそしているものの、議会の承認がなければ発効しえないのです。そもそもTPPを今のような巨大なものにスケールアップした推進力は米国であり、その意味では米議会での批准投票はTPPの明暗を握っていると言えます。 
 
  さて、昨年10月にアメリカのアトランタで大筋合意に至ったTPPですが、意外にも共和党の大統領候補のドラルド・トランプ氏も、民主党候補のヒラリー・クリントン氏もTPPに反対の表明を掲げたことでTPPを進めてきた日本の関係者を驚かせたことは記憶に新しいところです。新しい大統領にどちらがなったとしてもTPPに反対の立場であり、TPPから米国が撤退するか、あるいは協議をやり直すか、いずれにしても新大統領が口を出してくると大きな波乱があることは間違いありません。 
 
  そうした中で議会のTPP推進派議員たちが提唱しているのは今年11月初旬の米大統領選の直後に、TPP批准投票をせよ、というものです。来年1月になると新大統領が登場しますから、11月の大統領選から、来年1月の新大統領の登板までの期間に批准をすませよう、というのです。 
 
  TPPに反対している市民団体のパブリック・シチズンではこの大統領選から新大統領登板前のいわゆる「レイムダック」(死に体)の時期に批准をするのはやめてほしい、という請願活動を民主党下院のリーダーであるナンシー・ペロシ議員に送っているのです。現在、上院も下院も共和党が多数派を構成しているのでペロシ議員は下院少数派のリーダーに過ぎませんが(民主党議員188人、共和党議員246人)、それでも第二党のリーダーとして大きな力を依然持っていることには変わりありません。パブリック・シチズンによると、ペロシ議員は目下、この問題については沈黙しているそうです。そこでペロシ議員に請願が寄せられているようです。 
 
  そもそも、TPPを進めてきたオバマ政権は民主党で、民主党議員の中にも一定数の賛成派がいます。今年は大統領選だけでなく、日本の衆議院に相当する定数435の下院議員(任期2年、解散なし)は11月に全員改選、また定数100の上院(任期6年)も11月に3分の1が改選されます。そこでTPP反対派の声が反映して、現役のTPP賛成議員が多数落選する可能性もあります。そのため、もはや任期をわずかに残す議員たちが「レイムダック」の期間に国や地域の大きな運命にかかわるTPP批准投票を行うことはいかがなものか、と訴えているのです。 
 
  その意味ではアメリカがTPPの批准投票をいつ行うかを日本の関係省庁や内閣も注視しており、そのことが最近会期を終えた日本の国会でTPPが審議されなかった理由でもあります。アメリカがTPPにどう出てくるか、それによって日本政府が再び修正とか廃止などの対応を余儀なくされることになるのです。 
 
 
■Petition: No Lame-Duck Vote on TPP 
http://action.citizen.org/p/dia/action3/common/public/?action_KEY=13204 


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