2017年05月21日08時02分掲載  無料記事
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文化

プラシド展 〜 デフォルメの真実 〜コリーヌ・ボネ画廊 Exposition of Placid at Galerie Corinne Bonnet

イラストレーターや漫画家で同時に絵画も描く人がいるが、パリの14区にあるコリーヌ・ボネ画廊はそうした画家をよく扱っている。今、展示を行っている画家のプラシド(Placid) もそうした画家の1人で漫画集もたくさん出版してきた人である。 
 
  プラシドの絵画を見ると、そこでは強烈なデフォルメが行われている反面、非常にリアルでもある。何がリアルなのか、と言えば表情である。パリの街角で確かにこういう表情を見るよな、こういう眼差しに出会うよな、と思える表現が随所にあるのだ。だから、1枚1枚の絵画を見ても見飽きることがない。見飽きないための何かをプラシドの絵は持っていると思う。それは恐らく、先述の通り、写真的リアリズムとは異なって非常に大きなデフォルメと非常にリアルな表情の描写が両立する、という不思議さにあるように思えてならない。 
 
  プラシドの今回の個展はいずれもカラーなのだが、コリーヌ・ボネ画廊のテーブルに並べられたプラシドの過去の出版物の中に、白黒のデッサン集がある。それは「私はそこにいた」というタイトルなのだが、このデッサンこそプラシドの原点というか、純粋な原点のように感じられた。その線はピカソのキュビスムを踏襲しており、同時にピカソのデッサンのパロディでもある。だが、ピカソが試みたものがここに見事に受け継がれている、と言うこともできるのではなかろうか。だから、プラシドのデッサンを見ると、世界の見方が変化するくらい非常に強いインパクトがある。 
 
  プラシドはコリーヌ・ボネ画廊のメモを参照すると、北西部のカーン育ちで、感性豊かな15歳の頃にやはり後に漫画家で画家となるMuzo(ミュゾー)と出会い、二人で同人誌を8号まで続けて出したと言う。その後、彼らは80年代以後、パリで活躍することになるのだが、ウィレム(Willem)やジェべ(Gebe)と言った風刺漫画で知られる人々の後ろだてを得たことが大きかったようだ。 
 
  パリは人種のるつぼで様々な姿・形の人間がいるのだが、プラシドはそうした様々な特色を見事に描き分けている。そして、そこには憎しみが見受けられない。どんな人も非常に愛情を注いで描いている人だと言うことがわかる。 
 
 
※Placidのウェブサイト 
http://toutplacid.tumblr.com/ 
■Galerie Corinne Bonnet 
Cite artisanale, 63 rue Daguerre - 75014 Paris 
+ 33 (0)1 43 20 56 06 / + 33 (0)6 82 66 08 89 
www.galeriecorinnebonnet.com 
du mardi au vendredi de 14h a 19h et le samedi de 15h a 19h 
 
Vernissage de l'exposition "Placid - Scenes Pittoresques" jeudi 11 mai 2017, exposition jusqu'au 10 juin 2017 
 
 
村上良太 
 
 
■パリのジャン=フィリップ・ミュゾー(Jean-Philippe Muzo)氏  芸大1年で個展を開いて中退 好きなイラストを描いて50年 
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