2018年09月18日19時17分掲載  無料記事
http://www.nikkanberita.com/print.cgi?id=201809181917432

移民大国ニッポン

もはや日本は移民/外国人なしには生き残れない!

<成長戦略と「外国人材」の活用> 
 
 2012年12月の第二次安倍内閣発足以降、成長戦略の名のもとに「外国人材」の活用が推進されている。 
 オリンピック・パラリンピック開催準備と震災復興に向けた建設・造船分野の外国人労働者の時限的受入れ以降、 
日本人女性活躍のための国家戦略特区における外国人家事労働者の受入れ 
製造業の国際競争力強化と国内製造業空洞化防止のための外国人労働者受入れ 
介護分野における留学生活躍を目指した在留資格「介護」の創設 
途上国への技能等の移転を目的とする技能実習制度の拡大 
強い農業の実現に向けた国家戦略特区における外国人農業就労者の受入れ 
日本と現地日系社会との結びつきを強めるための日系四世の受入れ 
――政権発足後の6年足らずのうちに、極めて迅速な政策実行である。 
 これらのうち、労働者逼迫への対応を公式に掲げているのは建設・造船就労者のみであるが、それ以外の「活用」にも、受入れ職種や受入れ地域をみれば、背後に労働力不足解消への期待を読み取ることができる。 
 さらに、新たな受入れのほとんどが、滞在期間に上限を設定した単身者、すなわち「還流型(rotation-type)」であることも、その特徴である。 
 一方、深刻な人口減少への対応も、現政権の重要な政策課題であるが、主な取組みは、 
少子化対策 
若者の流出と高齢化が進行する地方の活性化 
――であり、移民受入れによる社会増加という選択には否定的である。 
 それゆえ、「外国人材の活用は移民政策ではない」ことが強調され、「還流型」での外国人受入れが選択されている。 
 
<日本社会を支える外国人「単純労働者」> 
 
 周知のとおり、専門的・技術的労働者は受け入れ、いわゆる「単純労働者」は受け入れないことが、日本の外国人労働者受入れの基本方針である。 
 かつて送出し国であった日本が外国人労働者受入れ国へと転換した1980年代後半、受入れの是非が議論された結果、専門的・技術的労働者のみをフロントドアから受け入れる方針が閣議決定され、1989年12月、入管法が改定された(翌90年6月施行)。 
 けれども、実際には、日系人など就労に制限のない外国人や国際貢献を目的とする技能実習生、アルバイトする留学生などのサイドドアからの外国人労働者が、公式には受け入れていない「単純労働」を担ってきた。 
 さらに、2003年12月の「不法」滞在者半減計画を契機とした取締り強化により、非正規滞在者は激減したが(2018年1月現在、わずか7万人弱)、1990年代には、20万人を超えるバックドアからの外国人労働者が「不法に」働いていた。 
 2017年10月末現在の外国人雇用状況の届出(*)によれば、専門的・技術的労働者は、およそ128万人の外国人労働者の18.6%を占めに過ぎず、留学生などのアルバイト(23.2%)や技能実習生(20.2%)よりも少ない。コンビニやスーパー、居酒屋など、日頃私たちが目にする職場のみでなく、総菜工場や宅配の仕分け、建設現場や産業廃棄物処理場、ビル清掃やホテルなどのリネンサプライ、農家や水産加工場など、さまざまな場所で外国人「単純労働者」は働き、日本社会を支えている。 
 
〔* 2007年10月より、雇用主は、外国人(在留資格「外交」と「公用」及び在留の資格「特別永住者」を除く)の新規雇用と離職に際して厚生労働大臣に届け出ることが義務づけられている〕 
 
 それにもかかわらず、労働政策においても、国境管理政策においても、外国人労働者の受入れは、労働力不足とは異なる文脈に位置付けられ、それゆえ、「単純労働」に対する労働力需要は、サイドドアやバックドアの労働力供給に頼らざるをえないのであった。 
 
<持続可能な社会に向けて> 
 
 日本国内の深刻な労働力逼迫を背景に、経済団体や各業界から外国人労働者受入れ拡大を求める声が高まるなか、2018年6月、政府はついに、労働力不足に対応するために新たな分野の外国人労働者をフロントドアから受け入れることを閣議決定した。 
 これまで否定してきた「単純労働者」という言葉を避け、新たに受け入れる労働者を「一定の専門的・技術を有する外国人材」と呼ぶ一方で、従来の専門的・技術的労働者とは異なり、最長通算5年の単身で受け入れるというのである。 
 一定の要件を満たせば、専門的・技術的分野の在留資格への移行が認められ、家族の帯同や在留期間の延長、すなわち「定住型(settlement-type)」への移行が可能な設計になっているものの、具体的な要件等は今後の検討課題である。「以上の政策方針は移民政策と異なる」と殊更に明記されており、当面は、引き続き「還流型」主体の受入れ拡大が続くであろう。 
 労働力不足への対応の必要性を認めながらも、いまだ彼/彼女らを「人間」として受け入れることを拒んでいるかのようである。このような政府の姿勢は、「外国人材」という用語の使用にも端的に示されている。つまり、外国人を労働力という「商品」として捉え、その有用性のみを「活用」しようとする意図である。 
 けれども、シンガポールや台湾、韓国など受入れ国における少子高齢化が進行すれば、アジアにおける外国人労働者の争奪が激化するであろう。中国をはじめとする送出し国の経済も発展しつつあり、日本への労働力供給は無尽蔵ではない。持続可能な社会に向けて、「使い捨て労働力」のように都合よく「活用」するのではなく、外国人労働者が日本人同様に「活躍」できる環境を整え、その家族も含めて、日本社会の「構成員」として迎え入れる必要があるのではないだろうか。(国士舘大学教授 鈴木江理子) 
 
       ★       ★       ★ 
 
<執筆者プロフィール> 
 
鈴木 江理子(すずき えりこ) 
 
〔略歴〕 
一橋大学大学院 社会科学研究科 社会学 博士課程修了 博士(社会学)(専門分野:社会学) 
立教大学 兼任講師(2006年4月〜) 
武蔵大学 兼任講師(2012年4月〜) 
国士舘大学 文学部 教育学科 教授(2015年4月〜) 
 
〔所属学会〕 
移民政策学会 事務局長(2017年5月〜) 
 
〔受賞学術賞〕 
平成21年度冲永賞(2010年3月) 
 
〔著書・論文〕 
著書『日本で働く非正規滞在者−彼らは「好ましくない外国人労働者」なのか?』(単著)2009年4月 
著書『東日本大震災が問う多文化社会・日本』(単著)2012年2月 
論文『日本の外国人政策−線引きをめぐるタテマエと本音をめぐって』(単著)2015年3月 
論文『人口政策としての外国人政策−将来推計人口から考える』(単著)2014年7月 
著書『外国人選別政策の展開−進行する選別的排除』(単著)2017年3月 


Copyright (C) Berita unless otherwise noted.
  • 日刊ベリタに掲載された記事を転載される場合は、有料・無料を問わず、編集部にご連絡ください。ただし、見出しとリード文につきましてはその限りでありません。
  • 印刷媒体向けの記事配信も行っておりますので、記事を利用したい場合は事務局までご連絡下さい。