2018年11月25日12時20分掲載  無料記事
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移民大国ニッポン

今こそ、包括的な移民政策を! 移住連が院内集会開く(11/21)

 安倍政権は今国会に新たな外国人労働者の受け入れを可能とする出入国管理法の改正案を提出した。 
 法案の前提とされた法務省の「失踪技能実習生の現状」調査が不正に改ざんされた問題をめぐって国会が紛糾した後にようやく11月21日に衆議院での審議が始まった。 
 この日、国会の議員会館で「移住労働者と連帯する全国ネットワーク(移住連)」主催の集会が開かれた。国会議員多数を含め200名が参加した。 
 
 冒頭、鳥井一平(移住連代表理事)は、 
「人類は移動することによって進歩してきたのであり、移民を労働者また人間として受け入れる必要がある。日本社会の現状は多数の外国人労働者の存在なくして成り立たない。政府は深刻な問題のある技能実習生制度や留学生に名を借りた外国人の雇用などを放置して、まともな移民政策を論議してこなかった。今こそ正面から移民の受け入れをまともに議論すべき時だ」と訴えた。 
 
 次に指宿昭一さん(外国人労働者弁護団代表)は、 
「これまで政府は、専門的・技術的分野以外の非熟練労働(いわゆる「単純労働」)としての外国人労働者を受け入れないという方針を堅持してきた。しかし、実際には、技能実習生や留学生といった、本来は就労を目的としない在留資格を有する者が、非熟練労働の分野において就労し、日本経済を支えてきた」が、「従前の方針を実質的に転換し、非熟練労働者を含めた外国人の受け入れを行うことを表明」したのであり、「今後あらゆる分野に拡大される可能性が極めて高い」と解説した。 
 
 これまでの外国人実習生を前提にした新たな制度は以下の課題が存在する。職場移転の自由、民間団体の関与と中間搾取、家族帯同を認めないこと等。基本的な立場として、外国人を労働力としてではなく、人として受け入れを行うべきである。 
 
 引き続き、以下の方々が新しい制度の課題について発言した。 
■ 旗手明(技能実習制度権利ネットワーク) 
・「技能実習生の廃止を!」。 
 
■ 高橋済(東京弁護士会「外国人も権利に関する委員会」) 
・「追いつめられる難民申請者と非正規滞在者」 
 
■ 大川昭博(移住連) 
・「医療・社会保障と外国人パッシング」 
 
■ 鈴木江理子(国士舘大学) 
・「外国人材の受け入れ・共生のための総合的対応策」は十分か? 
 
■ 師岡康子(外国人人権法連絡会) 
・「人種差別撤廃基本法の制定を!」 
 
 また、この日外国人労働者の多数参加していた中で当該2名が発言した。 
 栃木県の農家(とち乙女栽培)で2005年から就労する中国人男性は、朝5時から夜8時まで1日15時間も働かせられ、残業代は時給500円、手取り月給8万円で、部屋は鍵をかけられ外出の自由もなかったと奴隷的な状態を語った。 
 
 もう一人の神奈川シティユニオンに所属するイメルダさん(女性)は、南米からの移民労働者で46年も滞在するが、会社内の外国人差別(厳しい仕事、残業の強制、ノルマの脅し、契約書へのサイン、社会保険なし)などを告発した。 
 
 集会の最後に、本格的な移民法が必要という佐藤信行さん(移住連)が集会宣言『1121決議』を提案し、採択した。 
<報告と写真:高幣真公> 
 
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<集会宣言> 
「今こそ、包括的な移民政策を!」11.21院内集会アピール 
〜外国人労働者が「人間」として暮らすために〜 
 
「『単純労働者』は受け入れない」 
「移民政策ではない」 
 もう建前は十分だ。その建前の陰で、外国人労働者・移民、外国にルーツをもつ人びとの権利や尊厳がないがしろにされてきた。 
 
「外国人が増えると治安が悪化する。日本人の雇用条件が悪化する」 
「外国人が日本の保険制度にただ乗りをしている」 
 もうデマは十分だ。そうして日本人と外国人の対立が煽られ、多様な人びとがともに暮らすこの社会の現実は見えなくさせられてきた。 
 
 外国人技能実習生の過酷な労働実態に再び注目が集まっている。 
 周知のように、技能等の移転を通じた国際貢献を目的とする外国人技能実習制度は、実際には、安価な労働力を受け入れる経路として利用されてきた。 
 この制度は、技能実習生に家族の帯同や転職の自由を認めないことによって、「労働力」が「人間」として暮らす局面を最大限制限している。それは「『単純労働者』は受け入れない」「移民政策ではない」という建前を維持するために作り出され、維持されてきた制約ともいえる。 
 しかし、今明るみになっている技能実習生の数々の人権侵害は、結局、この制度が彼・彼女らの労働者としての権利を制限し、生活のあらゆる部分を管理下に置くことによってしか維持され得ないことを示している。 
 つまり「人間」を「労働力」としてしか見ない制度は、「人間」としての暮らしを制限することによってしか成り立ち得ないのだ。そうして「人間」としての移民を「労働力」としてしか扱ってこなかったのが、日本の過去30年間のいわば「移民政策なき移民政策」である。 
 
 今、ようやく、政府から外国人労働者を正面から迎え入れる案が出されたことを私たちは歓迎する。しかしその中身は、またもや移民を「労働力」としてしかみないものである。 
 今、私たちは岐路に立っている。過去30年の「過ち」を再び繰り返すのか。それとも現実を直視し、「人間」が「人間」として暮らすことのできる社会をともにつくる方向に踏み出すのか。 
私たちは「人間」が「人間」として暮らすことのできる社会を求める。 
 なぜなら外国人労働者、移民、外国にルーツをもつ人びとは、すでに「ここにいる」からだ。彼・彼女らは「人間」としてここにいる。国家がいかにコントロールしようとしても、社会がいかに「労働力」として扱おうとしても、この厳然たる事実は変わらない。 
 とするならば、彼・彼女らが「人間」として暮らせるための権利と尊厳が保障されなければならない。 
 
 この原則に立ち、現在の政府案に関し、以下のことを求める。 
 
1.多くの人権侵害を生み出して来た外国人技能実習制度を新たな受け入れ制度への入り口とはしないこと。 
 技能実習制度は直ちに廃止すること。 
 
2.「特定技能1号」「特定技能2号」の区別をやめ、就労可能な他の在留資格と同じように、はじめから家族帯同が認められ、永住につながり得る在留資格を設けること。 
 また、新しい在留資格による受け入れは直接雇用によるものとし、技能実習制度の構造に酷似する受入れ機関や登録支援機関などの仕組みは排除すること。 
 さらに外国人労働者に、日本人と同一の賃金を実質的に保障するための体制を整備すること。 
 
3.「外国人材の受入れ・共生のための総合的対応策」の検討にあたっては、管理強化の体制を全面的に改めること。 
 そのためには、出入国管理を司る法務省には司令塔的役割を与えないこと。内閣府もしくは専門的省庁がその役割を担うこと。 
 
4.外国人労働者が社会の一員として暮らすための体制を整備すること。 
 すなわち家族帯同、日本人と平等の社会保障(健康保険、年金等)、日本語教育、子どもの教育など、生活者としての権利を実質的に保障すること。 
 非正規滞在者については、彼・彼女らの日本社会とのつながりを考慮し、正規(合法)化を認めること。 
 
5.国籍差別や人種差別の実態を踏まえ、移民基本法、差別禁止法を制定し、移民の権利保障の体制を整えること。 
 
 以 上 
 
2018年11月21日 
特定非営利活動法人 移住者と連帯する全国ネットワーク 
11.21院内集会参加者一同 
 
〔日中労働情報フォーラム(Japan China Labor Information Forum = JCLIF)ウェブサイトから転載〕 
 
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日中労働情報フォーラム 
(Japan China Labor Information Forum = JCLIF) 
(住所)〒144-0052 東京都大田区蒲田5−10−2 
    全日本港湾労働組合気付 
(URL)http://www.chinalaborf.org/ 


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