2019年02月06日12時36分掲載  無料記事
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文化

独仏共同出資の放送局ARTEのドキュメンタリー”Le piège des Kim ”(キムの策略) 核兵器をめぐる北朝鮮とアメリカの交渉の歴史を見つめる

  ARTE(アルテ)と言えばドイツとフランスの共同出資でできた放送局で、欧州では高い評価を得ているようです。ARTEはその作品の中からいくつかをYoutubeに設けたチャンネルに放流しているため、フランス語を学ぶ学生やテーマになっている歴史や文化に関心のある人は一見の価値のあるプログラムのように思われます。前回紹介したのはヒトラーとスターリンの独ソ不可侵条約がどのように結ばれたかを振り返るもので、豊富な映像資料を駆使して歴史を語っていました。国境を超えることで相互に持っている映像を足し算ではなく、掛け算にできるということが感じられ、それまで活字でしか触れることのできなかった欧州史を映像で見ることができた、という希少な経験となりました。 
 
  ARTEが2月にUPしたのは北朝鮮とアメリカとの核開発をめぐる交渉の記録ですが、第二次大戦終了直後、そして朝鮮戦争や広島・長崎の原爆まで歴史を振り返り、その経緯がどうなって今日に至っているかを振り返っています。今回は多くのアメリカや朝鮮半島のこの件に関わってきた詳しい人々が証言しています。タイトルは”Le piege des Kim ”(キムの策略)となっていますから、北朝鮮の視点に立つ人にすればアンフェアだと感じるかもしれません。piegeには策略という意味や罠、落とし穴、と言った意味があります。また、Kimには金日成から金正日、そして金正恩という一族の意味があります。その時々の彼らのカウンターパートであった米大統領の映像が登場します。 
 
  少なくとも欧州の放送局はある事象を「現在」という1点だけ切り取って善悪を決める、というスタンスを取っていないであろうことが感じられます。もちろん全作品を見たわけではありませんから決めつけることはできないでしょうが。ただ、少なくともこれまで見た番組から言えることは、ARTEには歴史をかなり長いスパンで追いかけて、その歴史の中になぜ今、こうなっているのかを見つめる視点があるということです。ヒトラーとスターリンの独ソ不可侵条約に関する番組でも、その背景にあった英国チェンバレン首相のナチスへの宥和政策のことがかなりきちんと検証されていたものです。私は大いに学ぶところがあると感じました。 
 
 
■ARTE ”Le piege des Kim ”(キムの策略) 
https://www.youtube.com/watch?v=mPZRk0UA24k&fbclid=IwAR3Y9hfsNUrKJDGUBEglJ3PPySSVEPCaEXmqPHGZVNwXyqXEq8McwkO3WCk 


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