2019年09月19日15時48分掲載  無料記事
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文化

「表現の不自由展・その後」の再開を目指して

「表現の不自由展」をめぐっては、会場となっている愛知県内はもとより、日本全国の市民から展示の再開を求める声があがっており、企画展の中心となった「表現の不自由展実行委員会」も、中止決定から現在まで一貫して展示の再開と会期中の継続を求めている。しかし、大村秀章愛知県知事を会長とする「あいちトリエンナーレ2019実行委員会」は、展示会場の保全に同意し、検証委員会を設置したものの、再開に向けた両者間の協議は未だに行われておらず、あいちトリエンナーレの会期末である10月24日まで、既に一カ月を切っている。 
 
このような状況を受け、「表現の不自由展実行委員会」は、9月13日に「〈壁を橋に〉プロジェクト」を立ち上げ、展示再開に向けた活動をさらに活発化している。このプロジェクトは、アメリカの黒人運動活動家であるアンジェラ・デービスの「壁が横に倒れると、それは橋だ」という言葉から命名。まさに展示会場を覆った「壁」を倒すべく、9月15日の名古屋に続き、17日には東京都内で「〈壁を橋に〉プロジェクト・今こそ集会in東京」を開催した。 
 
東京集会の中では、「表現の不自由展実行委員会」のメンバーがこれまでの経緯や現状を説明。実行委員の1人である岡本有佳さんは、「『表現の不自由展・その後』は、排外主義や性差別、日本の植民地支配の責任を含む戦争責任の否定を背景とした不当な攻撃が予想される中で、表現の自由を守るとはどういうことかを問うために企画されたものです。表現の自由の中には、作家と観る側との交流や情報伝達も含まれており、展示会場の『場そのもの』が、表現の自由を実現するための私たちの『作品』でした」と語り、会期末が迫る中での「苦渋の決断」として、展示再開を求める仮処分の申し立てを行ったことを報告した。 
 
また、「表現の不自由展・その後」に対する否定的な意見の中で、もっとも批判が集中したとされるのが「平和の少女像」である。今回の集会会場には、ミニチュア版の「平和の少女像」が設置されたが、同像について岡本さんは次のように語る。 
 
「平和の少女像の作家の1人であるキム・ソギョンさんは、展示中止後に閉鎖された会場に入り、『作品たちは監獄の中に閉じ込められているよう。静かですね…。人と会って意思疎通したいだろうに』と言っていました。少女像そのものが、観る人との交流をコンセプトとしていて、表現者と観客との交流の場をつくるという意味においても、私たちにとって大事な作品だったことは間違いありません。展示作品に対する攻撃の50%が少女像に対するものでしたが、少女像は女性の人権と尊厳の回復を願う作品です。あいちトリエンナーレはジェンダー平等を目玉に掲げていましたが、政治的圧力と理不尽な攻撃によって女性の人権を破壊した歴史・記憶が消されそうな今だからこそ、声をあげるべきだったと思います」 
 
「〈壁を橋に〉プロジェクト」では仮処分申し立てを始め、展示再開に向けた活動を継続しており、仮処分についての審尋が9月20日と27日に予定されている。弁護団の一員である李春熙弁護士は、「『あいちトリエンナーレ実行委員会』は公的な公的な性格が強く、だからこそ安易な展示中止は許されないとの判断が下るはず」と述べており、「表現の自由」をめぐる司法判断に注目が集まっている。 
 
表現の不自由展実行委員会公式ホームページ 
http://fujiyu.net/fujiyu/ 


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