2019年10月04日16時04分掲載  無料記事
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経済

消費税アップと安倍首相のドヤ顔 根本行雄

 消費税率が10月1日午前0時、8%から10%に引き上げられた。公共料金を含む幅広い商品・サービスが値上がりし、家計には新たな負担になる。一方で、飲食料品(外食・酒類を除く)や定期購読の新聞を対象に税率を8%に据え置く軽減税率や、ポイント還元も同時にスタートしたが、制度は複雑で混乱も予想されている。政府は今回の税収増加分の約5・6兆円の全額を社会保障に充てるとしている。しかし、マスコミは軽減税率やポイント還元などの複雑な制度の解説に終始し、消費税に反対する声が聞こえてこないのはどうしたことだろうか。このようなマスコミに税金の使い道をチェックすることはできるのだろうか。 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 安倍晋三首相は2017年9月、消費税の増収分の使途を変更し子育て支援に振り向けると表明し、衆院を解散し、選挙で勝利した。その時の安倍首相のドヤ顔を忘れることはできない。 
 
 
 
 消費税率が10月1日午前0時、8%から10%に引き上げられた。税率2%の引き上げで見込まれる増収分は約5.6兆円である。このうち、約1.7兆円を幼保無償化などの少子化対策、約1.1兆円を低所得高齢者の暮らしを支援する社会保障の充実、残る約2.8兆円を赤字国債の発行抑制など将来世代の負担軽減に充てるとしている。 
 
 幼保無償化は10月から、全世帯の3〜5歳児、住民税非課税世帯の0〜2歳児を対象にスタートする。増収分は待機児童の解消、保育士の給与アップにも使われる予定になっている。 
 
 来年4月からは大学や短大などの授業料や入学金の減免も行われる。年収380万円未満の世帯が対象だが、新入生だけでなく在校生も減免が受けられる。返済が不要な給付型奨学金も拡充される。 
 
 所得の低い高齢者向けには、介護保険料の軽減、最大年6万円の年金生活者支援給付金も実施する。 
 
 
 
 
 
 □ わかりずらい制度 
 
 
 
 今回の消費税の税率アップは、8%に据え置く軽減税率や、ポイント還元など、制度は複雑でわかりにくい。 
 
 
 
 10月1日から鉄道やバス、郵便などの各種公共料金が約2%分値上がりする。電気・ガス・水道料金は経過措置があり、新税率の適用は多くの家庭で11月分からになる。外食チェーンなどでは、持ち帰りは軽減税率の8%が、店内飲食には10%がそれぞれ適用されるため、同じ商品でも税込み価格が異なるケースが出てくる。 
 
 全国の中小店舗など約50万店で10月1日からポイント還元事業がスタートする。増税後の消費冷え込みを抑えるため、クレジットカードなどキャッシュレス決済で買い物した場合、中小店舗は5%、大企業傘下のフランチャイズチェーン(FC)店では2%を還元する。 ただ大手スーパーなどは事業の対象外で、中小でも参加しない店舗が多い。軽減税率が適用されるか否かの線引きも分かりづらい。 
 
 
 
 
 
 なぜ、今回の制度が複雑でわかりずらいのかと言えば、公式には増税による消費落ち込みを防ぐためである。しかし、一番の狙いは、「痛税感」をごまかすためである。 
 
 
 
 税金とは、本来、直接税を中心にすべきものである。主権者である国民が税金を払っているということを意識し、政府がどのように税金を使っているかをチェックしていくことが肝腎要だからである。だから、「痛税感」は必要不可欠である。しかし、現在、世界中の政府は間接税である消費税を利用している。その理由は、給料の増減や企業の業績に応じて税収が大きく変動する所得税や法人税とは異なり、景気の動向に左右されにくい消費に課税するため、安定的に財源を確保できるためだ。 そのうえ、主権者である国民に「痛税感」を感じさせずに容易に税収をふやすことができるからである。 
 
 
 
 
 
 
 
□ 幼保無償化 
 
 
 
 安倍晋三首相は2017年9月、消費税の増収分の使途を変更し子育て支援に振り向けると表明し、ドヤ顔をしてみせた。そして、彼の狙い通り、選挙に勝利した。だから、今回の増税の目玉は幼保の無償化である。 
 
 
 
 全国の待機児童数は2年連続で減少しているが、依然として約1万7000人(2019年4月1日時点)に上っている。無償化は子育て世帯の負担軽減を目的としているが、その実態はとてもお粗末なものである。多くの人々が認可保育所どころか認可外の施設にすら入れるか分からないという状況が続いている。保育所の数は足りないし、立地場所も悪い。そのうえ、保育士の給与は低く、待遇もよくないから、人材不足に陥っている。 
 
 
 
 
 
□ 高等教育無償化 
 
 
 
 2020年度から始まる高等教育無償化制度の対象は、年収270万円未満の住民税非課税世帯から年収380万円未満の低所得世帯であり、大学や専門学校などの高等教育機関の授業料・入学金の減免と給付型奨学金の支給が柱となっている。日本学生支援機構の2015年調査では、住民税非課税世帯の高等教育進学率は推計40%で全世帯平均(80%)の半分にとどまっており、経済的な理由で進学を諦めている子どもは少なくない。 
 
 今回の無償化には年収制限がある。これに対して、中間所得層からは不公平との声があがっている。 
 
 
 
 
 
□ 景気後退 
 
 
 
 税率を5%から8%に引き上げた2014年4月の増税では、その前後で消費動向が大きく変動した。同年4〜6月期の実質国内総生産(GDP)の個人消費は、増税直前の1〜3月期に比べ4・8%減少した。実質GDP成長率は年率換算でマイナス7・3%と大きく落ち込んだ。生活に直結する飲食料品の値上がりに加え、住宅や自動車、家電を中心に駆け込み需要と反動減が大きかったためだとされている。 
 
 
 
 帝国データバンクが今年6月に全国約2万3600社を対象に行った調査によると、50・8%の企業が「(増税は)マイナスの影響がある」と回答したという。 
 
 
 
 
 
□ ポイント還元、キャッシュレス化の促進 
 
 
 
 安倍政権は私たちに手放すよう政策で仕向けている。2025年までに、買い物代金の4割をキャッシュレス決済にしたいそうだ。消費増税にあたり、景気への悪影響を軽減する策として、9カ月間、ポイント還元制を実施する。消費者が中小規模の店舗で買い物をし、現金以外で支払えば最大5%が返ってくるものだ。 
 
 消費税を上げながら、新たに総額3800億円をポイント還元の財源や、商店が導入するキャッシュレス決済用端末機の補助金などに使う。これは納税者のお金を使ってするものだ。 なぜ、これほどまでにキャッシュレス化を促進したいのだろうか。ネモトにはわからない。 
 
 しかも、キャッシュレス化には効率化などのプラス面もあるが、サイバーセキュリティーには問題がある。そして、大災害があれば、停電などによって使えなくなってしまう事態も起こる。まだまだ信頼性は低いものなのだ。 
 
 
 
 
 
 
 
□ マスコミの対応はこれでいいのか 
 
 
 
 消費税率の引き上げに対して、マスコミは軽減税率やポイント還元などの複雑な制度の解説に終始し、消費税に反対する声が聞こえてこないのはどうしたことだろうか。このようなマスコミに税金の使い道をチェックすることはできるのだろうか。 
 
 
 
 現在の日本では、国民の90%がサラリーマンになっていると言われている。マスコミで働いている人々の大半はサラリーマンである。日本のサラリーマンは源泉徴収が当たり前のことだと思い込んでいるから、納税者としての自覚に乏しい。だから、マスコミは消費税に反対する声に耳を傾けることができないのだろうか。 


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