2020年05月31日14時42分掲載  無料記事
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【メール通信5月】コロナ禍とベーシック・インカム  池住義憲

 国連ラテンアメリカ・カリブ経済委員会(CEPAL、以下委員会)は、5月12日、報告書を出しました。COVID-19パンデミックが、ラテンアメリカ・カリブ地域にどのような社会・経済的影響を与えているか、についてです。そのなかに、「緊急ベーシックインカム」へ向けた提言があります。日本政府の特別定額給付金(一律10万円)と共通する部分もありますが、この委員会提言はその理念と考え方が明確に示されています。 
 
 報告書はまず、現在の経済活動停滞が低所得層、とりわけ貧困層・極貧層など社会的に弱い立場に押しやられた人たちに、さらなる所得の減少と格差拡大というかたちで重くのしかかっている現状を分析しています。そして、中長期で新型コロナウィルスと共存することが想定される世界で、一時的な政策対応だけでなく、新しい社会現実に対応する政策を提言しています。その提言が「緊急ベーシックインカム」へ向けて、というものです。 
 
 委員会は、人びとの生活のベーシックニーズを満たし、家庭の消費を支えるため、現金給付(緊急ベーシックインカム)を保障するよう政府に求めています。確実にできるだけ早く、生活・経済を立ち直らせるために必要である、としています。国の違いによって違いはあるものの、基本的には期間は6ヵ月間、貧困ラインを下回らない額の給付を提言しています。この現金給付は、長期的にみて将来の「ユニバーサル・ベ―シックインカム」に向かっていくことも考えられる、と述べています。 
 
 報告書は、これまでの社会経済モデルが今日のコロナ禍を増幅させていること、新自由主義(グローバリゼーション)の矛盾が露呈しているのではないかということ、の二つを指摘しています。そこから如何にして脱却するか。 
 
 「誰一人取り残さない」という持続可能な開発目標(SDGs)の理念。そのために人権に焦点を当て、今が連帯して普遍的な再分配政策を実行するときである、と報告書は強調しています。すなわち福祉国家の強化が課題であり、この中軸に「健康への権利」がある、と結論づけています。 
 
 ベーシックインカムは、全ての人が生活に必要な所得を無条件で得る権利として、「基本所得」、「生存権所得」と言われています。1960年代後半に議論が始まり、いくつかの国々では、社会実験も行われてきています。コロナ禍をきっかけに、その一つの方策として「ベーシックインカム」を議論することが現実味をもち、意味をもってきたと思っています。7月下旬に、日本ベーシックインカム学会が研究会を開催(下記参照)されるようです。私も参加して学んで来ようと思っています。 
 
以上 
 
<日本ベーシックインカム学会 第3回関西研究会> 
        記 
 【日時】 2020年7月26日(日)10:00〜16:20 
 【会場】 国労大阪会館中会議室(大阪市北区錦町2−2) 
 【テーマ/内容】  「ベーシックインカムと社会保障制度の共存 
  ・新型コロナ問題と10万給付、反緊縮とベーシックインカムの行方」 
   (松尾匡さん) 
  ・日本ベーシックインカム学会と活動とベーシックインカム実施での課題 
   (山中鹿次さん) 
  ・ベーシックインカム導入と社会サービスの充実 
   (小沢修司さん) 
 【参加費】1,000円(学会員は無料) 
 【参加申込】当日参加も可能のようですが、できたら下記へ事前連絡を 
   → yamashika0217@gmail.com 
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