2005年09月08日02時02分掲載  無料記事
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ITフロント

ネットに氾濫する医学情報 米紙が弊害を指摘

 インターネットによって、医者と患者の関係も、従来のような一方通行から双方向の時代に入っている。ウェブサイトでは、病気に関する情報があふれており、患者は以前に比べれば、はるかに多くの医学情報を学んでいる。それだけに情報を持った患者が、医師と病気をめぐって問答を繰り返すことも目立つようになった。しかし、ネット情報は、間違った内容のものも多く、その弊害も指摘されている。(ベリタ通信=有馬洋行) 
 
 米紙サンディエゴ・ユニオン・トリビューンによると、米カリフォルニア州サンディエゴのエド・マグワイヤーさん(60)は5年前、がんと診断された。医者から治療方法はないと告げられた。絶望の淵の中で、何とか最新情報を得ようとインターネットで検索を開始し、支援組織を探し当てた。 
 
 そこからマグワイヤーさんは、新たな試験治療が行なわれていることを知り、メリーランド州に飛んで、新療法を受けた。効き目は大きく回復した。「インターネットがなかったら、今頃死んでいたか、末期を迎えていた」と、マグワイヤーさん。 
 
 米国では、健康問題や薬などについてオンラインで情報を得ている人は、年間9300万人といわれる。しかし、情報の多さで判断がつかなくなり、途方に暮れる人も増えている。 
 
 ケリー・シーハンさん(33)は最近、発疹に悩まされた。ネットで検索したところ、様々な皮膚疾患の名前が現われ、頭が混乱してしまった。結局、その後よくある湿疹とわかった。これはネット情報に振り回された一例だ。 
 
 ネットの医学情報に関しては、「質・正確性・有益性」の観点から、情報を選択することが必要という。 
 
 多くの病院、研究所、個人などはホームページを持ち、医学情報を提供している。従来、専門家が読む医学雑誌に掲載される最新の学会情報も、ネットで読めるようになり、患者の情報量が格段に増えている。 
 
 このほか、健康促進のビタミン剤からダイエット剤まで、医薬品関連の情報も氾濫している。 
 
 しかし、情報量が多いために消化不良を起こしているケースも目立っている。間違った情報も多く、ある医師は、インターネットの世界は、混沌としたジャングルのようだ、と形容する。 
 
 確かにネット時代の中で、かつてのように医師が、短時間の治療で診断を下すというパターンに劇的な変化が起きている。しかし、ネットで得た情報で“武装”した患者が、診察を受ける前に、一方的に診断名を決めてくることがあり、医師を当惑させている。 
 こうした状況から、診察時間が長引くケースも増えており、医師の苛立ちもエスカレートしている。 
 
 治療薬についても、必死で探している人たちが、インチキな薬品を大金を払った購入してしまう被害も出ている。ネットには、こうした人たちの心理を巧みに利用しようとする人間も入り込んでいる。 
 
 どこが優良サイトかを見極めるのは容易ではないが、コンテンツ(内容)についての責任者名が載っており、また連絡先などを明示されているのが望ましい。このほか、医学的な事実や統計の出所などが明示され、さらに信頼すべき情報筋へのリンクも表示していれば、一応合格点のようだ。 


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