2005年10月01日11時40分掲載  無料記事
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検証・メディア

「市民参加型メディアの力で世界を変えよう」 韓国オーマイニュース紙の呉代表が講演

 市民参加型メディアの成功例として国際的な注目を浴びている、韓国のインターネット新聞「オーマイニュース」の呉連鎬(オ・ヨンホ)代表が9月17日、東京都内で「市民参加型ジャーナリズムの国際連帯」と題する講演を行った。市民による市民のための新しいメディアを日本でもつくろう、という市民団体「人権と報道連絡会」の呼びかけに応じたもので、呉氏は映像説明をまじえながら、「市民が参加してつくるという21世紀の新しいジャーナリズムを世界中の市民とともに確立し、世界の問題を解決していきたい」と熱っぽく語った。(ベリタ通信) 
 
 
市民参加型ジャーナリズムの国際的連帯 
   呉 連鎬・オーマイニュース代表 
 
 明日は、韓国ではお祭りになります。チュソ、秋夕といって、日本のお盆みたいなお祭りです。私のふるさとは50世帯くらいの小さな村なんですけれども、お盆はとても大切な行事になります。私は今まで生まれてこの方、この秋夕のお盆の日を自宅、自分の故郷の家以外の所で迎えたことはありません。しかしこの掟は浅野先生(浅野健一同志社大学教授、人権と報道連絡会世話人)に破られてしまいまして、私は生まれて初めてお盆を自宅で迎えられなくなってしまいました。でもみなさんとお会いできたのでとてもうれしく思っています。 
 
 日本は島国ですよね。ですから日本は韓国と少し違いがあるようです。私は日本に来るたびに非常に好奇心を持って日本を見つめています。私は最近、もうひとつの「島」について関心を持っています。私はその島に本当に、ぜひ行ってみたいと思っています。みなさんがご覧になっているのは、南米の地図です。こちらはチリです。このチリから3700キロメートル離れたところに小さな島があります。その島はイーストアイランドという小さな島です。 
 
 4日前に、この島の原住民というか住人からオーマイニュースに記事が送られてきました。その人はオーマイニュースの市民記者になりました。その人は実際に記事も書きました。この島は人口3000人ほどの島だそうです。ですから私は太平洋のはるか離れた島の人が記事を送ってきて、世界的な市民記者になったということを大変うれしく思っています。 
 
 現在オーマイニュースには4万人ほどの韓国人市民記者がいますけれども、韓国人以外にも500人ほどの外国人市民記者がいます。日本も含めて54カ国の人が市民記者になっています。今年の6月にソウルにみんなが集まって、第1回の市民記者フォーラムというのを開催しました。最近私は夢を持っています。その夢は、第2回市民記者フォーラムをこのイーストアイランドという小さな島国で行いたいということです。 
 
▽20世紀ジャーナリズムとの決別 
 
 私たちオーマイニュースは、「20世紀のジャーナリズムと決別する」というモットーのもとに始めました。オーマイニュースは2000年の2月22日、午後2時22分にスタートしました。20世紀のジャーナリズムとは決別する、という意思をこめてこのような日にしました。要するに21世紀に新しいジャーナリズムの地平を切り開いていきたいと思ったのです。そのコンセプトとして選んだのは、「市民みんなが記者」ということです。 
 
 しかし、この市民みんなが記者というのは決して新しいことではありません。これは決して私自身が発明したものではありません。人類が生まれてこの方、すべてのコミュニケーションが生まれ、その中のコミュニケーションというのは、そこで暮らしている人すべてが記者という意味合いが込められていました。みなさんこのグラフをご覧になってください。これは今までメディアがどのように発達してきたかということをあらわしていて、新聞、テレビ、そしてインターネットが登場しています。しかし、紙の新聞が登場する前はどのような形でコミュニケーションしていたのでしょうか。 
 
 小さな村の単位で、その住民たちがコミュニケーションをとっていました。言うならば、そこに暮らしている住民みんなが記者だったわけです。お盆の時に私の故郷に帰ってみると、それがよくわかります。その村には、村が発行している新聞・テレビなどのいわゆるメディアと呼ばれるものはまったくありません。ですが、この50世帯くらいしかない村のニュースは、非常によくアップデートされています。お昼ごはんのときに、両親と一緒にご飯を食べると、村の隅々のことを両親は知っていますし、それを話してくれます。たとえばですね、隣の家の娘さんが見合いをしたんだけれども、たぶんもう少ししたら結婚するだろうというわけですね。しかし夕方になるとこのニュースはアップデートされます。見合いをしたんだけれども結局うまくいかなかった。だから結婚には結びつかないよというんですね。 
 
 ニュースがこのようにやり取りされるわけです。ここでは、誰が記者でしょうか。この村の人たち、おじさんおばさんが、みんな記者なんです。紙のメディアがなかった時代には、このように職業的にプロの記者がいなかった時代には、住民一人ひとりが全員記者だったわけです。ですから双方向性―お互いにやり取りする双方向性―はこの時代は非常に高かったと言うことができると思います。しかし、紙新聞、紙のメディアが登場するに従って、プロの記者が生まれ、その人と読み手となる読者との距離というものが生まれてきました。結局双方向性というのは低くなってしまいました。 
 
 もうひとつのグラフをごらんください。この赤いラインは双方向性を示すラインです。これは双方向性が高かった時代から、紙の新聞の登場とともに落ちてきています。 
 
 しかし、私たちはインターネット新聞に出会いました。こちらはインターネット新聞に出会ってから、私たちの双方向性が伸びてきたということを示したグラフです。私は、これこそがインターネット新聞の革命性を表したものだと思います。インターネットというのは、空間と時間の制約がありません。それは何を意味するのかというと、プロの記者だけではなくて、いわゆる素人と呼ばれるアマチュアの記者も参加できるということです。みなさん考えてみてください。学校にグラウンドがあるとしましょう。そこでサッカー選手がサッカーをしています。そうしたら、一般の生徒たちはそのグラウンドを使うことが出来ません。これが、紙新聞の、紙メディアの時代の空間の概念です。しかしインターネットの時代はこうです。そこで選手たちがサッカーをしているならば、自分たちがサッカーをしたければ、横にグラウンドを作ればいいんです。考えさえあれば、自分で無限大のサッカー場を作ることができます。また、観衆も、今までの選手だけではなくて、新しい選手にも注目します。これがインターネット新聞の空間の特徴です。 
 
 これまで、伝統的なメディアというのは一方向性でした。直線で、ひとつの方向にしか流れない。しかしインターネットメディアというのは、双方向性です。ですから、情報を受けたり、流したり、また読者同士でもお互いに受けたり流したりする関係にあります。インターネットというのは、時間や空間の制約を受けずに双方向性で流れていくという特徴があります。ですからこのような現代のインターネット時代を迎えて、私たちは記者という概念を覆そうと思いました。記者というのは何も特別な存在ではありません。市民みんなが記者になれます。ある人が何か伝えたいニュースがあります。そしてそれをほかの人に伝えたいという思いがあれば、その人は記者です。 
 
 このような思いで私たちはオーマイニュースをスタートさせましたが、最初は700人の市民記者が参加しました。この数はどんどん増えました。現在は約4万人に達しています。 
 
▽市民とともに生産、消費、社会変革 
 
 現在、韓国にはさまざまなインターネット新聞が登場しています。 
 
 この絵は、韓国のインターネット新聞をひとつの木になぞらえて書いてみたものです。一番最初の幹となるところ、最初に登場したのは、既存のメディア、普通の紙新聞のインターネット版でした。それから枝分かれをするわけですけれども、それは独立型インターネット新聞というものでした。しかしそれはネチズンが、自分たちが作りたいから作るんだといったような、ちょっとアマチュアっぽいものでした。しかしこの大きな幹がどんどん育っていきます。ここが、オーマイニュースを含めたオルタナティブメディアとなっていきます。 
 
 そのほかにも韓国ではさまざまなメディアが発達してきています。しかしこの中でもオーマイニュースが独特だと言われるのは、市民記者のシステムがあるからです。市民記者を分析してみますと、20代から30代の若い世代が多いです。この市民記者の人たちはさまざまな記事を書きます。一番人気があってよく書いているのが、「暮らしの中の話」というコーナーです。もちろん市民記者の人たちは時には政治的な内容で記事を書きます。市民記者の記事というのは、編集スタッフによって一度編集にかけられます。市民記者が送ってくる原稿は1日160本から200本に上ります。しかし、スタッフによってより分けられて、70パーセントが記事として採用され、30パーセントは記事になりません。 
 
 でも一般の人たちは30パーセントの記事にならない記事も見ることはできます。なぜかといいますと、記事にならない記事を読みますと、市民記者たちが、「ああこういう風に書いたら記事にならないんだ」ということをよく理解することができるからです。しかしまた一方で、この人は記者としては能力が劣るかもしれないけれど、情熱を持っているんだ、何か伝えたいことがあるんだということをわかることができます。 
 
 オーマイニュースが大きくなるにしたがって、市民記者制度の問題点も出てきました。そこでオーマイニュースは、プロ記者に倫理綱領があるように、市民記者としての倫理綱領というのを作りました。ここにお示ししているのが、市民記者の倫理綱領です。たとえば、市民記者となる人は、自分や自分が所属している団体のために記事を誇張してはならない、というようなことも含まれています。 
 
 また、オーマイニュースは紙新聞が出しているインターネット新聞とも違います。今ここでご覧になっているのは、オーマイニュースとニューヨークタイムズを比較したものです。オーマイニュースは創刊当時から、すべての記事の最後に読者の意見欄を設けるようにしました。ですからその記事を読んだ読者が、一つひとつの記事に対して読者の意見を書き込むことができるようになっています。しかし、ニューヨークタイムズや日本の一般新聞もインターネット版があるようですけれども、そのようなシステムにはなっていないようですね。これまでの紙新聞もインターネットを使ってはいるんですけれども、インターネットの特徴を生かしきれていなかったわけです。ですからニューヨークタイムズのような権威ある新聞は、プロの新聞記者が書くから、あなた方は生産したものを消費すればいい、読んでさえいればいいといったそういったやり方でした。しかしオーマイニュースは一緒に生産して、そして一緒に消費して、共に世の中を変えようと、そのようにできています。 
 
▽インターネットの特徴を生かした報道 
 
 オーマイニュースが、今お話したように市民記者の参加によって大きくなったというのは事実ですが、しかし一方で、スタッフ陣の努力も大変大きなものがあります。オーマイニュースを語る多くの人が、市民記者制度があったから成功したんだと言われますけれども、それはオーマイニュースの半分しか見ていないことになります。私たちはスタート当時から、市民記者と常勤記者の「夢のような結合」というものを目指していました。市民記者の人たちは、自分の身の回りのこと、それから近くにあることを報道していましたが、常勤記者の人たちは、真相取材や特ダネ取材などを行っていました。それでオーマイニュースは毎週のように大きな特ダネが飛び交うというように言われていました。特にオーマイニュースはこの常勤記者たちによって、世の中で焦点化させるべき争点を浮き彫りにさせてきました。 
 
 またオーマイニュースはインターネットの特徴を十分に生かしてきました。それは何かといいますと、インターネットだからできること、文字だとか写真、そして動映像なども含めてアップしてきました。2003年にノムヒョン大統領に対する野党の弾劾があったとき、オーマイニュースの真相報道がマルチメディアをいかに駆使して報道したかがひとつの例です。私たちはこのとき、文字、写真、動映像を100パーセント生かして報道しました。今ご覧になられているものは、動映像をアップデートしているところですが、同時に紙のオーマイニュースも発行しました。特別号外というものを作って道行く人に配りました。 
 
 オーマイニュースはこのようにマルチメディアを駆使した報道を取ってきましたけれども、市民の参加の方法もいろいろな方法を取りました。記事を書くとか、読者が意見をアップするとか以外の方法もとりました。それは何かといいますと、読者が書き手に原稿料を払うというシステムです。今までは記事を書いたら、会社がその記者に対してお金を払うシステムですよね。しかしオーマイニュースには会社ももちろん少しだけお金を払いますけれども、読者が書き手に対してお金を払うという独特なシステムがあります。読者は自分が持っている携帯電話とクレジットカードの番号を入力するというシステムで、お金を払うようになっています。あるソウルの教授が書いた記事がとてもいいということで、6000人の読者がこの記事に原稿料を払いました。合計約3000万ウォン、日本円で約300万円近くになりました。ひとつの記事に対してこれだけの額の原稿料をもらったのは、世界でもあまり例のないことではないかなと思います。 
 
 オーマイニュースは先ほどお話しましたように、2000年にスタートしました。2003年までは正直言って赤字続きでした。しかし2003年以降からは黒字に転換しています。私たちの収入構造を見てみますと、約70パーセントが広告収入です。そして約20パーセントがニュースコンテンツの販売となります。残りの10パーセントが読者の有料購読という風になります。自発的有料購読です。しかし広告収入を得るのもたやすいことではありませんでした。特にオーマイニュースは大企業や政府に批判的な記事を書いていたわけですから、大企業が広告を出そうとしませんでした。 
 
 オーマイニュースが創刊されて1年くらいで、私が5本の指に入る大企業を尋ねていったことがあります。広告を取ろうと思って行ったわけです。もちろん私が行ったときには、大新聞の広告部の人も来ていました。私はずっと待たされていましたが、大企業の人たちは、取締役だとか副社長とかにすぐに通されて、会って帰ることができていました。私は決して取締役だとか副社長とかに会いにいったわけではありませんでした。私は次長に会いに行った、部長ですらなく、次長に会いにいったわけですけれども、2時間も待たされてしまいました。2時間過ぎてやっと次長に会うことができました。そうすると次長は自分の部下を呼んで、「じゃあ1回この人の話を聞いてごらん」というふうに言いました。でもその部下はコンピューターをやっていて、私の話をろくに聞いてくれませんでした。 
 
 このような過程を経て私は考えました。広告をとるのではなくて、編集を強化して読者をたくさん獲得しよう、と。そして編集を強化したら、読者が増えました。広告も自然に増えていきました。あのように私を無視した大企業も今ではオーマイニュースの広告主になっています。 
 
 このようにオーマイニュースは編集に力を入れて影響力を行使してきました。影響力調査を見てみますと2001年では1.5パーセントでした。しかし年毎にだんだん影響力が上がり、昨年2004年には17.9パーセントで6位に浮上しました。6位というのは、韓国のテレビ局や新聞社などすべてのメディアのなかでどれだけの影響力があるかという順位です。韓国の民主化闘争の時に大きな役割を果たしたハンギョレ新聞や民放のSBS放送なんかも私たちより下位になってしまいました。 
 
▽オーマイニュースの成功要因と次の課題 
 
 なぜオーマイニュースの実験というのは韓国で成功したのでしょうか。ひとつの要因としては、韓国でインターネットのインフラが整っていたということが言えます。しかしテクノロジーだけで説明できるものではないと思います。これまで韓国のメディアというのはメディア自体が歪曲報道や偏向報道をしてきて、多くの国民、市民からそっぽを向かれているという状況がありました。にもかかわらず、既存のマスメディアは何か特権を持っているとかのような勘違いをしていたわけです。しかしこのような状況を批判し続ける市民の力は大きくなり続けてきました。特に1980年代の韓国民主化運動のときに、既存メディアに対する監視の戦いも大きくなりました。 
 
 この運動の中心にいたのが「386」世代と呼ばれる人たちでした。386世代というのは、現在30代で、80年代に学生運動をして1960年代生まれという人のことです。私も当時学生運動をしていまして、1年間監獄に送られたこともあります。この世代の特徴というのは、社会全体の利益のために自分の出世だとかそういうものを犠牲にできるというものです。また社会に何か問題があった場合にはみんなが力を合わせてその問題に対して立ち上がらなければならないということをよく知っている世代です。この世代がインターネットと出会ったとき、世の中を変えようという勢いになって噴出したのだと思います。 
 
 それからこれは副次的な問題かもしれませんけれども、ハングルがキーボードをたたく上でとても便利だということもあるかもしれません。また韓国は小さい国ですからどこでもアクセスできるといった便利さもあるかもしれません。ですから、市民記者が書いた記事を常勤記者が事実かどうかチェックすることも可能です。また政治的にも社会的にも何かがあったときに集中する、そういった勢いが強い国です。ですからオーマイニュースのような小さなメディアでもそれを集中して取り上げて、深く掘り下げることによって、それが世の中に注目されるということが、非常に大きいです。 
 
 現在オーマイニュースは5年がたちました。私たちは次のステップに差しかかっています。そのうちのひとつが、マルチメディアの機能を強化することです。皆さんが今ご覧になっている画面は、市民がニュースのアンカーとなって登場してきた場面です。これまでテレビでは、テレビのアンカーはプロでなければならないといった固定概念がありました。でも私たちのアンカーには大学生もいますし、おばあさんもいます。最近では携帯電話が普及しています。特にカメラつき携帯が多くなっていますから、これを利用して動映像の画面をどんどん普及させていきたいと思っています。 
 
 先ほど見た(オーマイニュスを紹介した)NHKの番組に、朝鮮日報が出てきました。これは韓国で1位の発行部数を誇る大新聞です。その朝鮮日報の記者がある夜遅く、真夜中にお酒によっぱらってある市民を暴行したことがありました。タクシーの運転手に殴りかかってしまいました。通りかかった市民が止めようとしたらその人にも殴りかかりました。しかしタクシー運転手は、自分が殴られたときにカメラつき携帯を取り出してその場面を写し始めました。彼はちょうど1分間くらいのその映像をオーマイニュースに送ってきました。それで私たちは記事とともにこの動映像を流しました。結局この大新聞の記者は懲戒となってしまいました。 
 
▽初心を忘れず世界を舞台に夢を追求 
 
 先ほどオーマイニュースの市民記者が4万人くらいいるとお話しましたけれども、その人たちはみんなカメラつき携帯を持っていることでしょう。ですからこの人たちがアップしてくれば大変な力となりえます。これは国際的なニュースでも同じことです。私たちは今回のニューオーリンズのハリケーンのニュースをCNNの画面で見ています。しかし私たちは、これは満足いくものではないと考えています。多くの人が自分の身の回りで起きていることをニュースとして流せば、世の中は変わると思います。特にオーマイニュースが力を入れていることは、マルチメディアを強化することと同時に世界に市民記者を作ることです。 
 
 韓国でオーマイニュースが成功したのは、もちろん韓国の特性もありますけれども、一方でインターネットというものを使ったからです。インターネットであるから可能なこと、特に双方向性ということはほかの国でも同じことが言えると思います。現在皆さんがご覧になっているのはオーマイニュースの英語版です。ここには多くの市民記者が参加しています。この場面は先ほどお話した、6月に行われた世界市民記者フォーラムです。この顔を皆さんご覧になってください。このときは26カ国の人が参加しましたけれども、現在は54カ国の人がここに参加しています。このように私たちオーマイニュースはマルチメディア化、それからグローバル化を目指して日々努力しています。 
 
 しかし私たちオーマイニュースがどのように発展し、どのように変わっていこうとも、最初の初心、市民と共にあるということは決して変えないつもりです。この画面はオーマイニュース5周年を記念して作ったものです。この真ん中にいる記者は、昨年最も一生懸命記事を書いた記者だということで特別モデルに採用されました。これがオーマイニュースの創刊号です。創刊の前に会議をしている場面が出ています。私たちが最初から追求していたもの、先ほどお話したように21世紀に新しいジャーナリズムを、特に市民が参加して作るオルタナティブメディアを目指すということは今も変わっていません。 
 
 この人たちが私たちの市民記者の人たちです。この写真を見てください。これは韓国の一番南にある小さな島、済州島(チェジュドウ)で、ある牧師さんが撮った写真です。この牧師さんは早朝祈祷というものをして、それからオーマイニュースに記事を送ってきます。この写真は何かといいますと、地面から新しい芽が出て、それが石を動かしているという写真です。ですから私は市民が参加するオルタナティブメディアがこのような現象を起こしているというふうに思っています。 
 
 皆さんがご覧になっている写真は、アメリカの爆撃場になっているメヒャンニ(梅香里)の場面です。米軍の爆撃の訓練場になっているわけですけれども、その訓練の砲弾が落ちた跡にタンポポが芽を出しているという写真がここに写っています。健康な市民が荒れた土地を耕して新しい花を咲かせるという思いがここに象徴されていると思います。 
 
 オーマイニュースは報道活動の一方で、いろいろなイベントもやってきました。市民マラソン大会というのもありますが、イベントの中で一番大きいものは、記者クラブの解放というものです。オーマイニュースはメディアであり、言論である一方でNGOです。特に私たちが力を入れたのが記者クラブの解放ということです。一番上の写真をご覧ください。右側にいるのがオーマイニュースの記者で、左にいる既存メディアの記者が彼を追い出そうとしている場面です。記者クラブからオーマイニュースの記者を追い出そうとしている場面です。私たちはこのとき、すべての国民は知る権利がある、そしてまたすべてに平等に情報にアクセスする権利があるという平等権を持って、訴訟に打ってでました。そして私たちは勝ちました。その経験がもとになって2002年にノムヒョン政権が誕生して以後、すべてのインターネット新聞も記者クラブに出入りすることができるようになりました。 
 
 しかし、韓国にはまだ変えなければならないメディア文化があります。オーマイニュースはそのような問題点を洗い出し、そしてそれを変えるために初心を忘れずにやっていこうと思っています。特に今力を入れていることは、地方にオーマイニュースをもっと広げようということです。私はこの2ヶ月の間に韓国の地方都市20箇所あまりを回ってきました。それぞれの地域でどのように市民記者が活動しているかということをつぶさに見て周り、オーマイニュースをどのように自分たちのものにするかということを話し合ってきました。 
 
 このように、韓国では地方に、そして世界には各国に市民記者のネットワークを広げていきたいと考えています。 
 
 最後に私たちの市民記者の1人を紹介したいと思います。この人は外国人市民記者の中で一番若い人です。アメリカ人ですが、韓国で今暮らしています。この少年がその市民記者です。この少年は「友達同士で皮膚の色は関係ないよ」という記事を書きました。 
 
 今世界中にいろいろな問題が起きています。現在はご存知のように中国の北京では北朝鮮の核をめぐって6者協議が行われています。また、ハリケーンの問題や地球温暖化の問題もあります。ある問題は自国の中だけで解決できる問題もあるかもしれませんが、世界中のみんなが考えていかなければならない問題もあると思います。オーマイニュースはそのような問題、世界の市民が共に参加して、そして共に解決すべきそのような問題に対処するためにこれからもがんばっていきたいと考えています。 
 
世界の市民の中には、インターネットの情報インフラが敷かれている人もいますし、敷かれていないところもあります。ですからこのようなインフラが平等に敷かれることを願っています。それが、私がこの太平洋の小さな島イーストアイランドで次の世界市民フォーラムを開きたいという夢の理由です。もしもこの夢がかなったら、ここにいる皆さんもぜひ参加してください。どうもありがとうございました。 


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