2005年12月03日11時27分掲載  無料記事
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検証・メディア

小泉強権政治の対米従属に唖然 米軍再編・日米軍事一体化の加速に危惧と池田氏

  自衛隊と米軍の一体化運用を盛り込んだ「在日米軍再編」中間報告が10月末に発表された。ジャーナリストの池田龍夫氏は、各紙の報道を一市民の視点から丹念に分析、日米の軍事協力関係のさらなる強化について多くの問題点を提起している。そして、問題点を探れば探るほど「小泉強権政治」の対米半従属国ぶりに唖然とさせられる、と怒りをぶちまけている。(ベリタ通信) 
 
●軍事的一体化が加速 米軍再編後の日米関係への危惧 
      池田龍夫(ジャーナリスト) 
 
 自衛隊と米軍の一体化運用を盛り込んだ「在日米軍再編」中間報告が10月29日発表された。 
 
 米国防総省は2001年以降、世界に展開している米軍配置の見直し作業を行なってきた。軍事技術の飛躍的発展によって、大部隊を世界各地に配置しておく必要性がなくなったとの背景があるわけで、「軍縮」の選択でないことは明らか。要するに、海外駐留を縮小しても米国の軍事的プレゼンスを従来以上に維持できるとの確信に基づくものである。中間発表の骨子は別項の通りで、米軍の世界戦略に果たす日本の役割が高まると言えるだろう。普天間飛行場の移設や沖縄駐留海兵隊約7千人のグアム移転、住宅密集地・厚木から空母艦載機部隊の岩国移駐計画など地元の負担軽減を考慮した点は認められるものの、米国の狙いが「米軍―自衛隊の一体化運用」にあると読み取れる。 
 
 限られた紙幅で論じるには、重すぎるテーマだが、「一市民の疑問を提示する」観点で問題点の幾つかを探ってみた。 
 
▽普天間飛行場は、辺野古沿岸部に移設 
 
 昨年8月の米軍ヘリ墜落で、地元民を激高させた普天間飛行場。1996年(橋本龍太郎政権)に名護市辺野古沖への移設を日米が合意したものの、地元との調整がつかず、9年もの歳月が流れた。今回狄兇蟒个靴北瓩辰伸畄舛婆掌郢圓貿魃の矢が立ってしまった。しかし最初の海上埋め立て案ではなく、米側の「浅瀬案」をのんで、キャンプシュワブ基地前の浅瀬を埋め立てて滑走路を造ることを強引に決定したのである。沖縄県や地元住民には相談も説明も一切しないまま決定したことに、稲嶺恵一知事をはじめ沖縄県民は怒り、「県外移転」を求める声が高まっている。 
 
 「こうした地元無視の拙速ともいうべきやり方が、米軍再編の目的が『沖縄の負担軽減』より『抑止力の維持』にあることを端的に示していると思う。その視点から、訓練などの本土移設を見ると、もう一つの意味『本土の沖縄化』が見えてくる。多くが自衛隊基地との統合や施設利用で、日米軍事提携強化の下地となる動き。これが小泉純一郎首相が昨秋、ぶち上げた『沖縄の負担を全国で』の正体だった」と、毎日「記者の目」(11・9朝刊)が喝破した通りの狆泉強権政治瓩任△襦K姫卍D拘韻蕕説得に狂奔しているが、またぞろ「沖縄振興策」を匂わせ爛▲瓠淵ネ)瓩鉢爛爛銑瓩巴聾気魏,気┨もうとする魂胆が透けて見える。 
 
 「普天間移設とパッケージとされる北部への基地集中も問題である。再編に伴う沖縄の負担軽減策は中南部の基地の大半を北部に集約する形となっている。…人口密集地でない地域へ基地を移転することが、沖縄の負担軽減につながると考えるのはあまりにも安易である。沖縄の基地問題の解決はほど遠いと言わざるを得ない。北部への基地集中は地方を切り捨て、負担を押し付けるものにほかならない。沖縄の立場に立たない政府の姿勢が、県民を基地被害で苦しませている要因であることをしっかり認識するべきだ」(琉球新報10・27社説)との主張は、県民の声を代弁している。 
 
 また「日米両政府は那覇港湾施設や牧港補給地区などの全面返還を前提に協議しているが、キャンプシュワブの一部を軍港化する案が明らかになった」と、毎日11・13朝刊が伝えた。那覇軍港を一方的に手放すはずはないとの予感が当たった。要するに、何もかも「負担軽減」は名目だけで、犂霖呂燭蕕げ鵑鍬瓩鵬瓩ないのである。 
 
▽海兵隊のグアム移転費用を日本が負担 
 
 沖縄に司令部を置く米第三海兵遠征軍の兵力数は約1万5千人で、中間報告によると約7千人をグアムなどに移す計画。住民感情に配慮したと受け取られているが、引き揚げの対象者は司令部要員や整備・補給に当たる後方支援要員という。約2千人の海兵遠征部隊、歩兵連隊や砲兵連隊、ヘリ50機以上を持つ航空群などの実戦部隊は削減しないというから、司令部のグアム移転による米軍内部の組織替えに過ぎない。中間報告には明記されていないが、削減された後方要員の代わりに日本側の高速輸送艦を活用すると推測されている。 
 
 米国の対日交渉テクニックの巧妙さを痛感するが、中間報告の中に「日本政府は、このような兵力の移転が早期に実現されることへの沖縄住民の強い希望を認識しつつ、米国政府と協力して、これらのグアムへの移転を実現可能とするための適切な資金的その他の措置を見出すための検討を行う」と明記した猗瓦洩椶覆記瓩剖辰い拭D日11月6日朝刊によると「約七千人のうちグアムに移転するのは約六千人で、米側はグアムでの基地整備費などに5千億円前後を見込んでいる。日本政府関係者は『他国と違い、(沖縄の負担軽減という)日本側の事情で米軍が移転する』と説明しており、特別協定などで負担額を手当てする方針だ」と報じている。 
 
 これと符節を合するように、R・ローレス米国防総省副次官は「海兵隊のグアム移転費は約35億ドルを大きく上回る予定」と、琉球新報ワシントン特派員に語っている(同紙11・10朝刊)。とんでもない話に驚き、筆者の調べた限りではドイツも韓国も、駐留米軍の移転経費など負担していない。1978八年から米軍に払い続けている「思いやり予算」(01年は約6千億円)と同種の卑屈な日本外交の犇眩的取り引き瓩飽∩海箸気擦蕕譴襪里任△襦 
 
 座間・厚木・横田・岩国基地での「日米防衛一体化計画」にも、隠された多くの問題点があり、日米安保条約の「極東条項」は完全に死文化してしまった。中間報告冒頭の「日米同盟に基づいた緊密かつ協力的関係は、世界における課題に効果的に対処する上で重要な役割を果たしており、安全保障環境の変化に応じて発展しなければならない」との記述の背後に、日本を米世界戦略の一員に位置づける意図があることは明白だ。 
 
 犲衛軍畤篆頁匹了嵯个蓮崑佇道抉腓粒搬腓蓮国連の基準である任務遂行を妨害する行為を排除する武器使用すら認めていない自衛隊で対応できるかを問うことになる。さらに集団的自衛権の行使を認めていなくて共同防衛が成立するのかという問題がある。米国防長官は『日本は国際システムから多くの利益を得ている』と指摘した。平和のコストをいかに担うかを自らの問題として考えたい」と、日米一体化推進の主張(10・31朝刊)を掲げているが、軍備強化を煽っているように感じられる。 
 
▽横須賀港に原子力空母配備へ 
 
 最後に、「米軍再編中間報告」とは別の重要テーマ、原子力空母の横須賀基地配備について問題を提起したい。米国防総省は10月27日「08年から横須賀基地に原子力空母を配備する」と突然発表、通常型空母を要請してきた横浜市民を驚かせた。原子力艦船は1200回も日本に寄港しているというが、原子力空母の配備は初めて。米側は「通常型廃棄に伴う配備に過ぎない」と簡単に言うが、これまた地元への説明抜きの決定だ。 
 
 そもそも米海軍が、横須賀港と佐世保港を事実上の母港として自由に使用していることが腹立たしい。フィリピンのスービック港から撤収後、米海軍が「母港」にしているのは現在、キューバのグアンタナモ港と日本の2港のみという。グアンタナモ港は20世紀初頭から、反米カストロ政権後も恒久条約を結んで租借し続けているのだから、日本よりきちんとした関係だ。日本は講和条約後もズルズルと使用を認めてきており、これまた奇奇怪怪。明らかに「母港」なのに、米海軍の「海外家族移住計画」との名目で、日本政府が便宜供与を続けているのは、半従属国に甘んじているようで、情けない。 
 
   <「在日米軍再編」中間報告の骨子> 
一、米軍キャンプ座間に米陸軍第一軍団司令部を改編して移設、陸上自衛隊中央即応集団司令部も移設 
一、米軍横田基地に航空自衛隊航空総隊司令部を移設、日米の共同統合運用調整所を設置 
一、米軍普天間飛行場をキャンプ・シュワブ沿岸部に移設 
一、米第三海兵遠征軍司令部をグアムに移転、沖縄駐留海兵隊を約7千人削減 
一、日本は有事関連法を踏まえ、米軍に切れ目のない支援を提供 
一、共同作戦計画策定の検討の必要性や民間空港・港湾の米軍と自衛隊の緊急時使用を確認 
一米軍厚木基地の空母艦載機部隊を岩国基地に移駐 
                (ワシントン共同) 
 
(本稿は、「新聞通信調査会報」12月号に掲載された「プレスウォッチング」の再録です) 
 
*池田龍夫氏のプロフィール 
 1930年(昭和5年)生まれ。成蹊大学政治経済学科卒業。毎日新聞整理本部長、中部本社編集局長などを歴任、現在はフリージャーナリスト、日本記者クラブ会員。著書に『崖っぷちの新聞』(花伝社)、『新聞の虚報・誤報』(創樹社)など 


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