2006年01月23日13時02分掲載  無料記事
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カトリーナ大災害

米ハリケーン、命の恩人の記者にお礼が言いたい 人気ブログの威力で身元判明

 「もしあの時、二人の取材班が現場にいなかったら、私は死んでいただろう。あの時のお礼が言いたい」──。昨年8月末に米南部ニューオリンズ市を襲った超大型ハリケーン「カトリーナ」の際、重傷を負った女性が昨年暮、ジャーナリストの管理する人気ブログに、こんな投書を寄せた。女性は当時、混乱した災害現場で暴漢に襲われ、足から大きな出血を起こしていた。ブログの威力で二人の身元がすぐに判明し、1人は米NBC放送の記者、もう1人はフリーの番組プロデューサーであることがわかった。(ベリタ通信=苅田保) 
 
 この女性は、ニューオリンズの不動産会社で働いていたシンシア・サレノさん(53)。8月29日、サレノさんはフィアンセの男性と市内のフットボール場「スーパードーム」に避難した。しかし、ドーム内は避難民であふれ、治安もよい状態ではなかったため、二人は市内の自宅に戻った。 
 
 翌30日、サレノさんは、自転車に乗り、青果店の前で電話を見つけ、母親に電話をした。電話が終わった直後、後ろに並んでいた一人が、突然サレノさんに殴りかかり、堤防の決壊で浸水し始めていた道路にサレノさんをたたきつけた。 
 
 運悪くガラスの瓶があったため、サレノさんの左ふくらはぎが大きく裂け、大出血した。ヒッピー風の青年が、サレノさんを救出し通りかかったバンに乗せ、救護施設に向かった。 
 
▽「撮影するぞ」で警察の対応変わる 
 
 その後警察や消防の車に遭遇したが、けが人が多くて面倒はみれないとの返事だった。ヒッピー風の青年が警官と、サレノさんの救護で押し問答をしているのを、たまたま現場で取材中のNBCのカール・キンタニリャ記者と、番組プロデューサーのドーグ・ストッダード氏が目撃、警官にサレノさんの救助を要請した。 
 
 これに対し、警官は記者たちにしつこいと「逮捕するぞ」と脅した。このため記者たちがカメラマンを呼び、カメラを回させると、渋々警察の車に乗せたという。 
 
 しかし、警察は「スーパードーム」に着く前に、数ブロック離れたホテルの前で、サレノさんをで降ろし、立ち去ってしまった。しかし、たまたまそばにいた英国人観光客の助けで、救援トラックに乗せられ、バトンルージュ市の病院へ運ばれたという。 
 
 フィアンセの男性は、サレノさんの消息が突然途絶えたため、一時絶望視したが、3日後にサレノさんが生存していると知った。病院では、神経が切れていたため、完全な回復は危ぶまれたが、手術が順調に行なわれた結果、以前のように歩けそうだという。 
 
 サレノさんは、多くの人の善意のリレーで一命を取りとめたと思っている。特に二人の記者や、ヒッピー風の青年には命の恩人として感謝の気持ちがいっぱいだ。 
 
 サレノさんは、記者を探すため多くの放送局や新聞社に照会したところ、ジャーナリストのジム・ロメネスコ氏の管理するブログを使うようアドバイスを受け、投書を送った。 
 
 キンタニリャ記者ら二人は、救出した見知らぬ女性が、自分たちを探していたと聞き、驚いている。しかし「特別なことをしたわけではない。誰でもおなじことをしただろいう」と話しているという。 


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