2006年04月02日07時49分掲載  無料記事
http://www.nikkanberita.com/print.cgi?id=200604020749290

日中・広報文化交流最前線

中国のランキング? 〜中国人の自己イメージ〜 井出敬二(在中国日本大使館広報文化センター長)

  筆者は中国人学生とよく交流するが、今までで最も鮮烈な印象を受けた学生の意見は、「外国に侮られないよう中国は強国にならないといけない」というものであった。筆者は、以来、中国人が自分の国についてどう思っているのかという点に強い関心を持っている。 
 その関連で、本年(2006年)、相次いで中国国内の興味深い報告書、調査結果が発表・報道されたので以下の通り紹介したい。 
 
●「中国の総合国力は世界第6位」(1月6日付『新京報』紙記事より) 
 
 1月5日に中国社会科学院経済・政治研究所が公表した2006年版『世界経済黄書』と『国際経済黄書』は、中国の「総合国力」なるものを、米、英、ロシア、仏、独に次ぐ第6位と位置づけた。各国が持つ、「技術力」「人的資本」「資本力」「情報力」「自然資源」「軍事力」「GDP」「外交力」「政府のコントロール力」という各項目で採点をし、総合点で順位をつけている。第7位以下は、日本、カナダ、韓国、インドが続いている。日本と中国を比較すると、日本が中国より勝っているのは「技術力」「資本力」「情報力」「GDP」であり、残りは中国が日本より勝っている由である。筆者は、例えばオランダは個人の能力が自由に発揮でき、また国際場裏で重要な貢献をしている国だと思うが、記事中には言及がない。 
 
●「中国の総合社会現代化水準は世界第60位」(2月8日付『人民日報』紙記事より) 
 
 2月7日に中国社会科学院中国現代化センターが公表した『中国現代化報告2006』は、中国社会(2003年時点)の総合現代化水準は世界第60位としている。84の指標を用いての調査結果だそうである。平均寿命、嬰児死亡率、成人識字率、電話普及率、テレビ普及率、医者の人数の6つの指標において、中国は中進国のレベルに到達したとされる。他方、公的教育費、公的衛生費、インターネット普及率、大学進学率、エネルギー使用効率などで、まだまだ遅れが大きいとしている。中国は、米、英、独、仏、スウェーデンなどの先進国から、80年以上も遅れているとされる。このランキングは、中国の位置は、1980年は世界第62位だったのが、2003年は僅か2つだけ上がって第60位になったに過ぎないとしている。地域別では、進んだ地域として香港、アモイ、台湾(以上皆100点)、上海(97点)、北京、天津(共に95点)とあり、最下位は雲南と貴州(共に65点)、中国全体の平均は83点とされている。 
 
●「幸せ度」は?(2月後半発行『南風窓』記事より) 
 
 中国人が自分が幸せと感じているかどうかの世論調査が発表されている。これは各国別ではなく、中国国内の各都市別である。総合的に「幸せ度」が高い都市は高い順に、杭州、成都、上海、重慶となっている。逆に低い都市は低い順に、広州、天津、西安、北京となっている。これは収入の金額が高額ならば「幸せ度」が高いという結果ではない。広州は比較的高収入な都市であるが、ランキングは最下位であり、比較的低収入である成都、重慶がランキング第2位、第4位に入っている。 
 
●興味深い点 
 
 以上の「ランキング」の算出方法等の詳細には立ち入らないことにするが、社会科学院という中国の公的な機関が、中国の「ランキング」を確定する作業をしているということが、まず興味深い。どの国の政府機関でも各種データを整備して、国際比較は行っているのであろう。しかし、「総合国力」とか「総合社会現代化水準」という「総合」的なランキングを算出することは、そのデータの処理基準が難しい。 
 次に民間機関によるものであるが、「幸せ度」という主観的な世論調査が行われ、公表されたことも興味深い。世界の中には、「自分の国が『大国』、『強国』であるかどうかよりも、自分個人が『幸せ』かどうかが重要」と考える人も少なからずいるであろう。中国でも、「中国は個々人が『幸せ』を感じられる国にならないといけない」と指摘する若者も将来出てくるのだろう。(つづく) 
 
(本稿中の意見は、筆者の個人的意見であり、筆者の所属する組織の意見を代表するものではない) 
 
*井出敬二(いで・けいじ):1980年外務省入省。OECD日本政府代表部一等書記官、在ロシア日本大使館広報文化センター所長・参事官(報道担当)、外務省アジア大洋州局地域政策課長、経済局開発途上地域課長を経て、2004年2月より在中国日本大使館公使・広報文化センター所長(報道担当)。昨年12月に出版した『中国のマスコミとの付き合い方』(日本僑報社)は注目を集めている。 


Copyright (C) Berita unless otherwise noted.
  • 日刊ベリタに掲載された記事を転載される場合は、有料・無料を問わず、編集部にご連絡ください。ただし、見出しとリード文につきましてはその限りでありません。
  • 印刷媒体向けの記事配信も行っておりますので、記事を利用したい場合は事務局までご連絡下さい。