2006年05月02日21時44分掲載  無料記事
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検証・メディア

議会制民主主義の危機をメディアは見過ごしていないか 池田龍夫(ジャーナリスト)

▽国会審議せずに、不毛な駆け引き 
 
 猴浩解散→刺客劇瓩房,亜↓犁競瓠璽覿諺曲瓩農界は騒然、喧騒をきわめている。米軍再編、BSE(牛海綿状脳症)、ライブドア問題など重要案件の国会審議が停滞している現状は、議会制民主主義を揺るがす深刻な事態だ。本稿で既に指摘したことだが、昨年8月、小泉純一郎政権の猴浩解散瓩遼週鵑、政治的・社会的大混乱を加速させたことは否めない。 
 衆院で可決された「郵政法案」が、参院で否決されるや、衆参両院の協議も経ずに、衆院解散を断行した小泉首相の政治手法は「憲政の常道」を逸脱したものである。「解散は、いわば郵政法案への国民投票」と宣伝して国民を煙に巻き、問題選挙区に犹謬勠瓩鯊真立候補させたゲリラ的戦術は到底許容できない。代議制民主主義を踏みにじって狹劼鵜瓩暴个新覯未、絶対多数を小泉政権与党にもたらしてしまったが、さらに憲法改正や日米防衛一体化、医療・年金改革等の強行突破を企む猊枩亅瓩飽磴い覆ぁまさに独断専行の政治。ある評論家が「今の社会状況は、満州事変前夜(1935年ごろ)に似てきた」と指摘していたが、国民もメディアも安易に見過ごしていると、「何時か来た道を招きかねない」と案ずるのは杞憂であろうか。 
 
▽未熟な議員…国会猴鎮娜牴臭瓩殆柿魁
 
 「今や、政治という芸術が分からず、立候補する選挙区には縁も地盤も持たず、国会議員として役に立つ経験もない政治家が驚くほど増えた。松下政経塾の出身者に立派な政治家はいるが、いきなり国会議員になった『塾生』には未熟性が残っている。小泉チルドレンの中にもいい素材はいるかもしれないが、その多くは、よくいっても政治家の卵である。国会が『政界の幼稚園』と化してしまうと、メール問題のようなことが起こる。組織政党の長い伝統がある日本で、政党所属の国会議員が根拠のない情報という『爆弾』を党機関の精査もなく、無責任に国会の委員会で落すことが許されたというのは、あきれるばかりだ。組織政党としての徹底的な立て直しが新執行部の急務である」――日本政治の研究者・ジェラルド・カーティス米コロンビア大教授の痛烈な指摘(東京新聞4・2朝刊)は、ズバリ本質を衝いている。 
 
 永田寿康衆院議員の軽率な言動をチェックできなかった民主党の失点は大きく、前原誠司代表の辞任→小沢一郎代表誕生の波乱につながった。一方、民主党のお粗末さ追及の陰に隠れてしまった自民党の責任も厳しく問いつづけなければならない。世間を騒がせた「ライブドア事件」は、堀江貴文社長逮捕で牋豬鑞鄰絖瓩任呂覆いらだ。堀江氏が彗星のように登場した背景には、小泉・竹中経済政策(市場経済原理主義)があり、堀江氏を総選挙に利用した責任は極めて重い。郵政法案反対の急先鋒、亀井静香議員の選挙区(広島6区)に、自民党は堀江氏を犹謬勠瓩箸靴徳り込んだ。社長の肩書きを外すことを拒んだため、「無所属」となったものの、武部勤幹事長が「爐錣弟瓩魑垢靴」と絶叫し、竹中平蔵大臣が選挙カーで訴える様は、尋常ではなかった。何回もテレビ放映された異様さは、自民党政治と爛曠螢┘皀鶚瓩量着を物語っていた。 
 ホリエモン逮捕後、小泉首相は「事前に彼の行為を知ることは難しい」と釈明していたが、政治責任がないのだろうか。民主党の失態は然ることながら、狹┝梱瓩傍澆錣譴深民党のシタタカサを黙認できない。「ライブドア事件」の牋き金瓩砲覆辰燭反篁,気譴訃泉経済政策のヒズミを、新聞各紙は執拗に検証してもらいたい。牾丙抗搬膈瓩琉撤世世間を覆っている今、日本経済や社会を混乱させている構造的問題にメスを入れる必要性を痛感する。 
 
▽BSEの安全性審議に政治圧力? 
 
 BSE対策をめぐって米国産牛肉輸入問題は暗礁に乗り上げているが、安全性を議論してきた食品安全委員会プリオン専門調査会メンバーのうち半数の6人が3月末に辞任してしまった。道路公団民営化委員会でも専門委員の大量辞任(残ったのは2人)騒動があったが、「またも…」の感が深い。毎日新聞は4月5日朝刊の一報に続き、8日夕刊で六委員辞任の背景を追って「『残れば学者として信用を失う』『科学的思考さえ許されない』。辞めた委員は安全性に慎重な姿勢だったが、その言葉からは、学者としての危機感と同時に、政府に利用される諮問機関のあり方に対する批判も浮かび上がる」と指摘している。同調査会を辞任した座長代理の金子清俊・東京医科大教授は「安全対策の管理側(厚労省、農水省)は、彼らが求める答えを引き出す諮問しかせず、あり方自体がおかしい」と記者に語っており、「安全性より、輸入再開を急ぐ官僚の圧力」を示唆している。 
 
 そもそも、輸入再開後の今年1月空輸された米国産牛肉に背骨付き危険部位が見つかって問題化しただけに、専門委員会の慎重論議が求められていた。一方、米農務長官は「6月の日米首脳会談までの輸入再開」を再三要請してきており、米外交圧力が犧っこに瓩△襪反篁,任る。前号で考察した「米軍再編問題」と同様、「小泉政治」はどっちを向いているのか…国民不在の政治が嘆かわしい。 
 
▽日歯連一億円献金のナゾ解けず 
 
 もう一つ、奇々怪々な政治献金に触れておきたい。東京地裁は3月30日、自民党旧橋本派の一億円ヤミ献金事件で、同派会長代理だった村岡兼造・元官房長官に無罪判決を下した。橋本龍太郎元首相、野中広務氏、青木幹雄氏が2001年7月、日本歯科医師連盟幹部と会食した際、一億円の献金(小切手)を受けたという事件。政治資金収支報告書に記載せず、裏金処理をした容疑で村岡氏と元同派会計責任者が起訴された。会食に出席していなかった村岡氏は、当初から倏┐谿瓩任廊瓩飯颪れていたが、元会計責任者の「村岡氏の指示」というウソ供述によって猗鏐隲瓩留名を着せられてしまった。しかし、村岡氏の疑いが晴れても、橋本氏への疑念がなお残る。判決でも「元会計責任者としては、橋本会長に累が及び派閥が大打撃を受ける事態だけは避けたいと考えるのが自然である」と述べており、真相はいぜん藪の中だ。 
 
 橋本氏は一昨年秋の衆院政倫審(非公開)で「一億円は私が受け取ったのだろう」と証言しただけで、あとは「記憶にない」と言い逃れたという。日歯連は2000年から02年にかけ、自民党の「国民政治協会」に約15億円もの政治献金をしている。そのうち数億円が特定議員へ渡る牘回献金瓩世辰燭茲Δ世、検察も真相を解明できなかった。事件後の法改正で、政治団体間の献金は年間5000万円に制限されたが、「迂回献金禁止」にまで踏み込んでいない。各紙論説が主張している通り、一国の宰相だった橋本氏が公開の国会証人喚問に応じるのは当然の義務であろう。「巨悪は眠る」政治風土を払拭するため、「政治とカネ」の透明化に向けて、言論機関は引き続き警鐘を乱打しなければならないと思う。 
 
▽白か黒か…政界の爛セロ現象瓠
 
 最近の政治案件について考察してきたが、前段で指摘したように、日本の議会政治は崖っぷちに立たされている。内外とも危機管理がズサンで、国会審議そっちのけの狆豎依霪瓩目立つ。ポスト小泉の自民党に抜本的な政治改革を期待できるか。小沢民主党はドラスチックな政策提言を打ち出せるだろうか。「当世オセロ現象考」と題して、東京新聞『特報面』(3・3朝刊)が危険な時代に警告を発していたので紹介しておきたい。 
 「送金指示メール問題では自民党を攻めるはずの民主党が、お粗末な危機管理で一転し、批判にさらされた。まるで白が黒に裏返されるオセロゲームを見るようだ。このオセロ現象は、政界にとどまらず、産業界や社会心理にも現れる。……政界のオセロ現象と言えば、昨年9月の総選挙が記憶に新しい。民主党は総選挙のたびに議席数を大きく伸ばし、政権奪取をうかがう勢いだったが、小泉首相の『郵政民営化』の一念で敗れ、次々に議席を失った。自公両党は小選挙区で約49%、比例区で約51%の得票ながら議席は三分の二を超える圧勝。制度自体がオセロ現象をはらんでおり、次の選挙では逆の結果もあり得ることになる。……政治評論家の森田実氏は、一気に流れが変わる社会に警告を発する。<政治にとっての最大の価値基準は戦争をするか、平和をとるかだ。戦前と今は似てきている。戦争は反対だと、危険な社会組織に歯止めをかける社会組織を持たないといけない。メディアが権力の手先になったら、チェックするのは市民組織のはずだ>……」。 
 
 自由な言論によって、強固な民主社会を構築しなければならない。 
 
(本稿は、「新聞通信調査会報」5月号に掲載された「プレスウォッチング」の転載です) 
 
*池田龍夫氏のプロフィール 
 1930年(昭和5年)生まれ。成蹊大学政治経済学科卒業。毎日新聞整理本部長、中部本社編集局長などを歴任、現在はフリージャーナリスト、日本記者クラブ会員。著書に『崖っぷちの新聞』(花伝社)、『新聞の虚報・誤報』(創樹社)など 


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