2006年06月01日11時38分掲載  無料記事
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沖縄/日米安保

「在日米軍基地縮小」に目を奪われて米軍戦略のワナに陥るな 池田龍夫(ジャーナリスト)

 「日米安全保障関係を中核とする日米同盟は、日本の安全及びアジア太平洋地域における平和と安定にとって不可欠の基礎であり、地域における米国の安全保障政策の要である。……日米同盟が、地域及び世界の平和と安全を高める上で極めて重要な役割を引き続き果たすよう、協力を拡大したいと考えていることを確認した」 
 日米両政府は5月1日、外務・防衛担当閣僚による「日米安全保障協議委員会」(2プラス2)を開き、在日米軍再編の最終報告を決定した。冒頭に掲げた「共同発表文」のリードが示している通り「日米同盟」を強調し、「日米軍事一体化」を鮮明にした政治決着である。「9・11同時多発テロ(01年)」以降世界の戦略地図が大きく塗り替えられ、超軍事大国・米国はトランスフォーメーション(米軍再編)を推進してきた。米国は現在、地域別統合軍として、太平洋軍(太平洋全域とインド洋、東アジア、東南アジア、オセアニアに展開)北方軍(北米大陸)南方軍(南米大陸)欧州軍(欧州からロシア)中央軍(中東、中央アジア)を編成し五地域に睨みを利かせている。今回の日米協議は「在日米軍再編」の名のもとに進められているが、全地球的な「米軍再編」の一環との視点で分析する必要がある。�犧瀑�米軍基地縮小�瓩砲里潴椶鮹イ錣譴襪函∨楴舛鮓�誤る。 
 
▽「日米同盟」協力は、「軍事一体化」 
 
 「三年半にわたって続いていた米国との協議の結論は、単なる米軍移転や再配置にとどまらない。日米同盟の協力は『新しい段階に入る』と政府が言うように、同盟の形を変えようとするものだ。……共通の戦略目標のもとに日米の軍事協力が位置づけられ、自衛隊や米軍基地の新しい役割が描かれるとなると、きちんとした歯止めが必要だ。ましてイラク戦争をはじめ、ブッシュ政権の単独行動主義的な戦略には危うさがある。共通戦略を掲げたからといって、どこまでも付き合うわけではないことを明確にする必要がある」(朝日5・3社説)との指摘はもっともで、「共同発表文」「ロードマップ」からは「軍事一体化」の狙いが読み取れる。�狷�米同盟の新段階�瓩箸篭饌療�に何を意味するのか、日本側にどんな負担が新たに生じるのか。政府が断固たる国家意思を示さないと、米戦略に取り込まれる危険性は増大する。 
 
 1999年の日米防衛協力指針(新ガイドライン)関連法成立によって、「日米安保条約」は変質し、自衛隊の行動範囲が拡大された。さらに「9・11テロ」を契機に海上自衛艦のインド洋派遣、イラク・サマワへの陸上自衛隊派遣へと一気にエスカレートした。ここ数年ブッシュ政権の要請を鵜呑みにして�狷�米防衛一体化�瓩魘�引に進めてきたわけで、その枠組みを強固にするための「米軍再編・日米決着」と位置づけられる。日米安保条約に規定された「極東条項」(第6条=基地の範囲)や「事前協議」(交換公文)は、全く形骸化してしまったのである。 
 
 「米軍と自衛隊の一体化は、米国が設定した中東から北東アジアに連なる『不安定の弧』に共同で対処する戦略と唱えられているが、これは安保条約の『極東条項』から逸脱している。憲法の前文と第9条にも深くかかわる問題であり、憲法をないがしろにして、なぜ米軍との一体化を急ぐのか。政府はきちんと説明すべきだろう」と沖縄タイムス(5・2社説)は指摘。信濃毎日(5・4社説)も「日米安保条約の在り方は、冷戦終結を経て大きな変容を遂げてきた。1996年の日米安保共同宣言で目的は『アジア太平洋地域安定の基礎』に拡大されている。昨年2月には日米同盟の強化を目指す『共通戦略目標』で合意、その延長線上に今回の米軍戦略がある。日米安保体制はかねて、戦争放棄を定めた憲法や専守防衛を基本とする日本の防衛政策との整合性が問われてきた。今回の合意は、問題を一段と鋭い形でつきつける。おいそれとのむわけにはいかない」と、米軍戦略のワナに厳しい警戒の目を注いでいる。 
 
▽「不安定の弧」睨む世界戦略を構築 
 
 小泉外交5年間を振り返ると、米国ペースでお膳立てが進み、「米軍再編」協議も米国主導だったことは明らかだ。小泉政権は「郵政改革」にしか関心を示さず、日本の命運を左右する重大外交案件を米側に�犂歸蠅沖瓩靴榛瓩和腓�い。最終決着した「ロードマップ」を詳しく検証する紙幅がないため、三点に絞って問題点を提示したい。 
 (1)米陸軍司令部のキャンプ座間移転=米ワシントン州にある「米陸軍第一軍団司令部」を、2008年9月末までに日本(座間)へ移す狙いは、中国・朝鮮半島有事、さらに中東までも見据えて即応できる�狄兄蔑疆祗畊獣曚紡召覆蕕覆ぁ�このあと12年度中に陸上自衛隊中央即応集団司令部を座間基地に併設することも明記された。このほか横田・岩国など主要基地改編を考え合わせれば、「日米軍事一体化」の推進であることは明白である。 
 (2)沖縄駐留海兵隊のグアム移転=約1万5000人の海兵隊員のうち約8000人とその家族約9000人を、2014年までにグアムへ移転させる。沖縄・米軍の�猜捨郎鏝梱瓩里茲Δ坊�伝されているが、米国の軍事戦略の一環と捕えるべきだろう。グアムの方が、テロの温床になっている中東・東南アジアへの前方展開基地としての地政学的・戦略的意味があるからだ。また、北朝鮮弾道ミサイル「ノドン」の射程外にある地点でもあり、ハワイ(太平洋軍司令部)―グアム―日本の「トライアングル」の配置で、「不安定の弧」に対処する米軍の拠点づくりと位置づけられる。 
 (3)普天間飛行場の名護市移設=2014年までにキャンプ・シュワブ区域の辺野古岬へ移設する。そもそも辺野古沖移転案は1996年SACО(日米特別行動委員会)で合意され、2003年末までには普天間飛行場返還が実現する段取りだった。しかし、地元との折衝が暗礁に乗り上げ、徒に十年を空費した。今回も結局は振り出しの「辺野古」に戻り、日米政府間合意のあと、名護市の「二本の滑走路」妥協案を入れてやっと最終決定にこぎつけた。ところが稲嶺恵一知事は反対を表明し、「県外移設が実現するまでの間、米軍キャンプ・シュワブ内の辺野古先陸上部に暫定的ヘリポートを設けて普天間からの移設を早急に実施せよ」と暫定案を提示。地元への根回し抜きに「米軍再編」合意を急いだため、国内調整は難航、8年先(2014年)の移設完了も危ぶまれる事態だ。 
 
 ロードマップ「沖縄における再編」の末尾に「沖縄からグアムへの第三海兵機動展開部隊の移設は、�”疆郡嵌�行場代替施設の完成に向けた具体的な進展�▲哀▲爐砲�ける所要の施設及びインフラ整備のための日本の資金的貢献に懸かっている」と�爛僖奪院璽厳菽絖瓩鯑探�した点に、米国の対日外交圧力の凄みを感じた。「日本側が約束した資金を提供し代替施設を作らなければ、沖縄基地からは動きませんよ」と主張しているに等しいではないか。 
 「海兵隊の8000人削減は2014年までに完了することが明記された。だが、グアム移転と嘉手納飛行場以南で返還が決まった六施設と普天間飛行場の代替施設が『パッケージ』にされている。SACО合意でも大部分は返還が予定されていたではないか。それを代替施設と連動させるのは県民を愚弄するものであり容認できない。予定施設はすぐにでも返す手続きに入るべきだ」という沖縄タイムス社説(5・2)の怒りは当然である。 
 
 海兵隊グアム移転経費として約60・9億�法別鵤沓娃娃芦�円)の日本側負担を押しつけた。米側負担41・8億�砲鮠絏鵑覲曚剖辰�。積算根拠も明示せず、グアム基地建設に日本国民の血税投入など容認できない。さらに、ローレス米国防副次官は「米軍再編に伴う日本側の負担総額は3兆円」と勝手に述べたが、両国間で具体的な詰めもせずに巨額要求を迫る米国の圧力に、全く無力な小泉政治が情けない。小泉首相は「移転費用関連法案は次国会へ先送り」を表明し、逃げの一手。「国会では満足な議論が行なわれていない。政府の説明責任と同時に、野党も論戦を通じて問題を明らかにし、ただしていく責任がある。そのうえで改めて政府に求めたい。米軍再編の前に立ち返るべきは民意と憲法である」(道新5・3社説)――国家的危機の認識を新たにして、難局に立ち向かわなければならない。 
 
(本稿は、「新聞通信調査会報」6月号に掲載された「プレスウォッチング」の再録です) 


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