2006年07月23日00時34分掲載  無料記事
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中東

「眠れない、家に帰して」と子どもたち 食事はパンと缶詰、衛生状態も悪く ベイルート避難所の声

  【ベイルート22日=IRIN】シーア派民兵ヒズボラがイスラエル兵を拉致したことへの報復としてイスラエルが7月12日からレバノン攻撃を始めて以来、レバノンでは少なくとも50万人が家を捨てて避難している。イスラエルの攻撃は激化、地上軍の攻撃も恐れられており、避難民の数は今後も激増する可能性がある。戦乱によって家を追われ、さまざまな困難に直面している避難民の声をベイルートの避難所で集めた。 
 
 
▼リンダ・カリルさん(31) 
 
 ロケット砲がマンスリー村(南部国境地帯の村)にある私たちの家を破壊した。車で夫と赤ん坊と一緒にベイルートまで逃げてきた。避難先の学校を見つけるまで車の中で10時間過ごした。逃げてくる途中、私たちの背後で戦闘機がすべてを破壊しているのを見た。 
 (避難民への)援助は非常に遅れている。私たちはほとんど何も持っていない。食料も不定期にしか届かないし、薬はまったく手に入らない。3日前に家を出て以来、私たちが食べたのはパンと、時々のマグロの缶詰だけ。もし所持金が尽きたら路頭に迷ってしまう。戦争をやめてほしい。家に帰りたい。 
 
▼ヒアム・ユネスさん(17) 
 
 私たちはダムール(ベイルートの南20キロ)から早朝に救援トラックに乗ってやってきた。トラックには25人が乗っていた。橋をトラックが通過した直後に、イスラエル機が橋を破壊した。私はあの時のことを忘れないだろう。私たちの後方で煙が上がっていた。家がどうなったのかはわからない。家を出た時、家のガラスは既にめちゃくちゃになっていた。 
 
 ベイルートに着くまでは9時間かかった。服も食べ物も何も持っていない。(ベイルートの町は)よく知らないので通りに出ることもできない。私たちをここに降ろした男は、ナバティエ(南部ナバティエ州都)に残した遺体を埋めると言って戻って行った。ここには何もない。私たち25人は三つのスポンジのマットレスを分け合っている。パンとシャケ缶、マグロ缶があるだけだ。 
 家族や近所の人たちとも連絡がつかない。まだ自分の家が残っているのか聞ける人もいない。 
 
▼ラジェ・ハッサンさん(23) 
 
 家を追われてから5日目になる。私の家から見て上の方にある橋に爆弾が命中したのを見て、家を去るべき時だと思った。真夜中にミニバンに乗せられ、この学校まで連れてこられた。持ってきたのはパジャマだけだ。近くのビルのガラスは粉々になっている。この学校の衛生状態はひどい。子どもたちは熱さでいたんだマグロ缶を食べてアレルギーを起こしているし、ミルクもない。 
 
 とにかく戦争を止めてもらいた。そうしたら家に帰れる。神の思し召しですぐ終わるだろう。たとえ、私たちがこの戦争は長く長く続きそうだと感じていても。ここではだれも私たちの世話をしてくれない。彼らの目には私たちなど価値がないのだ。 
 イスラエルが二人の、たった二人の兵士のためにやったことを見てくれ。レバノンでは人権など安いものなんだ。もし機会があったら、とっくの昔に国を脱出して逃げていたが、その機会はなかった。 
 
▼ハディ・アリ・ヤシンちゃん(8つ) 
 
 パパが僕と妹のイスラーをきのうの夜に車に乗せて、『空港の近くに落ちる爆弾から逃げなければいけない』って言った。夜中にパパが僕を起こしたんじゃなくて、僕は眠れなくて起きていた。イスラーが怖がって、叫び声を上げていた。ママは泣いていた。着替えなかったからパジャマのまんまなんだ。くつをはく時間もなかった。はだしなのでここに来てからも、ほかの子と一緒に走れないんだ。 
 ここに来る前にベイルートのいろんな学校に行った。ベイルートなんか嫌いだよ。イスラーは病気になっちゃたし。熱があるんだ。イスラーも学校なんかに住むのはいやだと思うな。食べているのはパンとマグロ缶だけ。水が汚いよ。戦争が終わったら、蚊取り線香を買いに行きたい。 
 
▼メーディ・ジャベール(6つ) 
 
 私の名前はメーディです。年は6歳です。イスラエルが私たちに爆弾を落とし始めたので、空港の近くの家から逃げてきました。パパがこの学校に私たちを連れてきたんだけど、パパは扇風機とエアコンを家に忘れてきちゃった。この学校は好きじゃない。夏なので、教室では眠れないと思う。 
 蚊が一晩中、私たちを刺すし、トイレは臭い。とても暑くて眠れない。私と妹は1枚のマットレスに一緒に寝ているんだけど、マットレスは低いし、妹は私のことを蹴るんです。パパにエアコンのある家に帰してと言ったら、まず戦争が終わらなければだめだと言われた。いつ爆撃が終わるか知ってる? 
 
(翻訳・編集/ベリタ通信=河合敦) 


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