2006年08月14日16時18分掲載  無料記事
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日中・広報文化交流最前線

進化する日中青少年交流(2) 井出敬二(在中国日本大使館広報文化センター長)

  日中の青少年達が、相手国を訪問してどのような感想を持つのか以下の通り紹介したい。 
 
●日本を訪問した中国青少年の感想 
 
 週刊誌『瞭望東方周刊』5月18日号に、「中国の若者が日本を感じる」という記事が掲載された(同記事日本語訳は日本大使館ウェブ・サイトに掲載。http://www.cn.emb-japan.go.jp/media_j/media060518_j.htm)。同記事中に書かれた、中国人青年の訪日後の印象、感想: 
 「一般の日本人の友好的な態度と気配りの細かさを感じた。日本の自然環境、文化遺産保護、行き届いた社会保障及び日本人の団結等も強い印象を残した。」(四川の大学生) 
 「日本人は自分の納めた税金が如何に政府によって使用されているかについて非常に関心を持っているため、日本の市役所は税金の使い道を一つ一つ詳細にインターネットで発表する。」(北京の大学院生) 
 「もう一つの感想は、日本の若者達は政治には関心が無く、中国で強烈な反応を引き起こした歴史問題と教科書問題について、『少しも興奮していない』ことである。」(同上) 
 
 日刊紙『環球時報』3月15日付に、「日本の青年は私たちにどのように接するか」という記事が掲載された。日本を訪問し、日本の大学生と交流機会のあった北京大学国際関係学院の学生の感想を紹介している: 
 「日本の青年の歴史事実に対する態度は曖昧模糊としている。」「日本の青年の歴史観は単純である。」「日本の青年は歴史を学ぶことが好きではなく、思考は直線的で、極端に走りやすい。」 
 「中国の大学の多くの学生活動は形式のみで実質が無いが、日本は違う。」 
 「日本の学生は勤勉であり、学ぶべき点が沢山ある。」 
 
 湖北省の青年(社会人が多い)がJICA(国際協力機構)のプログラムで訪日した後、自発的に編集した文集に掲載した感想: 
 「中国人の8割が日本に親近感が無いというが、訪日してそのような状態は正常ではないと痛感した。」 
 「日本人の小学校一年の子供が中国人を警戒して、中国には行きたくないと言ったことにショックを受けた。」 
 「I市の市長の名刺が点字でも印刷され、また障害者が移動しやすい町作りに感心した。」 
 「ビルがコストを十分考えて建設されている。」 
 「日本企業の『整理』『整頓』『清潔』『清掃』『躾』は良い。」 
 「日本の教育は道徳、精神面、個性、総合的人格形成にも配慮がされており、良い。」 
 
 財団法人日中青少年旅行財団の機関誌『ニーハオ』に掲載された、中国人青少年の訪日後の感想: 
 「日本人の行き届いたサービスと親切さに感心した。多くの中国人は『日本人の礼儀には感情が込もっていない、ただの形式だけ』と言うが、そうは思わない。」(上海の高校生) 
 「日本の町がとても綺麗で、紙くずが見あたらない。環境を守るをことを皆自覚している。」(大連の小学生) 
 
 ある中国人教師が日本の教育事情、青少年事情を視察した後、自分のウェブ・サイトに掲載した感想: 
 「訪日前に北京で会った井出公使からは、『日本の教育は都会と農村で殆ど差が無い』と言われたが、本当にそうだった。これは中国とは本当に大きな違いだ。」 
 ある中国人若手記者が訪日後筆者に語った印象: 
 「日本滞在中、テレビで国会中継の論戦を見て、日本の民主主義が戦後の日本を支えてきたことを理解できたような気がする。」 
 
●中国を訪問した日本青少年の感想 
 
 沖縄県立のK高校は、中国との交流に熱心であり、北京市内の大学で短期中国語研修も行っている。同高校の出版物に掲載された、日本人高校生の約2週間の中国滞在後の感想: 
 「中国に来るまで『中国人は皆怒っていて怖い・・』というイメージを持っていた。しかしそれは全く大きな勘違いであった。怖い人もいれば、優しい人や面白い人も沢山いる。」 
 「中国の人はすごく頑張りやさんで、私たち日本人よりも何倍も何十倍も勉強していた。」 
 「中国に対するイメージや考えが変わった。中国人の優しさにも触れることができた。」 
 
 財団法人日中青少年旅行財団の機関誌『ニーハオ』に掲載された、日本人青少年の訪中後の感想: 
 「(上海の高校を訪問した際、)高校生が歓迎会を開いてくれた。驚いたことは皆日本語が上手で、・・会の運営も全てを生徒達がしていた。同じ年齢とは思えなかった。」 
 「中国の文化・歴史遺産に触れて感銘を受けた。」 
 
 以上からは、訪問の結果、それまでのステレオタイプ的な見方が打破されている面が非常に多いことが分かる。日本人の人間味のある面を中国人が訪日して実感し、また日本の社会、諸制度に関心を持ち、理解を深めてくれることは非常に歓迎されることである。 
 他方、日本においては歴史認識についての突っ込んだやりとりをしたい人、あるいは中国人が議論したいような歴史の問題について議論をする用意のある人は、日本の青年の間に必ずしも多くはないようである。そのため、「日本の青年は歴史に関心が無い」という中国人のステレオタイプが打破されていない面もある。この点は、日本の受け入れ側が念頭に置いておくべき点の一つかもしれない。 
 日本から中国を訪問する青少年には、文化・歴史・自然遺産に触れ、同世代の中国人青少年と交流し、更には中国社会が直面する問題について、そして日中間で相互依存が深まりつつあり、先人達が努力してきたことについての見聞と理解を深めて頂きたいと思う。(つづく) 
 
(本稿中の意見は、筆者の個人的意見であり、筆者の所属する組織の意見を代表するものではない。) 


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