2006年09月24日11時26分掲載  無料記事
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日中・広報文化交流最前線

大学生の手づくり日中学生交流(1) 井出敬二(在中国日本大使館広報文化センター長)

  本年の夏休みを利用して、日中の大学生どおしが自ら企画し、お互いに往き来して交流している。筆者も北京で、いくつかの交流を見る機会があったので、紹介したい。 
 
●日中韓大学生交流”OVAL”(http://www.oval-official.org) 
 
 日本、中国、韓国の大学生によるOVALという交流が行われている。 
 これまで4回の会合が開催されており、毎回、日中韓から30名ずつの学生が参加している((1)05年2月東京、(2)05年8月北京、(3)06年2月ソウル、(4)06年8月東京)。 
 ビジネスモデルを作るという切り口から、日中韓三カ国大学生が三人で一チームを作り、30チームの間で、どこのグループが一番素晴らしいモデルを作るかを競う。 
 
 中国からは、第1回は北京大学、清華大学、人民大学、北京対外経済貿易大学、北京師範大学、第2回から北京理工大学が参加、第4回から北京外国語大学が参加している。以上は北京の大学であるが、これ以外に第4回から南開大学、復旦大学、アモイ大学、アモイ集美大学という地方の大学も加わった。中国の各大学には学生組織がある。しかしOVALは、様々な大学を横断的に組織している点、目新しい。 
 日本からも東大、早稲田、慶應、上智、筑波、ICU、法政、麗澤、聖心、白百合などの様々な大学の学生が参加している。05年、日本から学生が訪中した際、「中国新聞週刊」という中国の週刊誌の記者は、日本の若者がどのような考え方をしているのかについて熱心に取材をしていた。 
 
●同志社大学・人民大学のアイセック(AIESEC)交流 
(http://www.aiesec.jp) 
 
 アイセックというのは国際的な組織であり、学生の海外インターンシップを通じて、学生が勉強し見聞を広めることを支援している。日本、中国の多くの大学でアイセックが活動している。日中の経済関係と人的交流が緊密化した今日、日中間で、学生の相互インターンシップが発展することも理にかなっていると言える。 
 9月6日、同志社大学と人民大学のアイセックメンバーの交流会が北京市内で行われた際に、筆者も顔を出させてもらった。筆者から日本での歴史教育、平和主義、ODA等を日中の学生に説明したところ、中国の学生達からは、盛んな質問を受けた。同志社大学の学生達にとっては、中国の学生に日本をどう説明するかということが問われたので、改めて日本について考える良い機会にもなったようである。 
 
●東京大学・北京大学の「京フォーラム」(http://jingforum.org) 
 
 9月10〜16日まで、東京大学の様々な学部の学生達約20名が訪中して、北京大学の学生達との交流を行った。北京大学の学生団体は、SICAという団体で、これまでスタンフォード大学、イエール大学と交流事業を行ったことがある由である。 
 歴史、環境、安全保障、経済の四グループに分かれて活発な議論、視察を行った。北京にある中日友好環境保護センターを訪問して、JICAの活動等についての説明を受け日本の対中ODAについても理解を深めたそうである。北京の高校を訪問して、歴史教育の現場も見たそうである。 
 一日の活動に参加した後、睡眠時間を削って翌日の討論の準備をしたということであった。一週間の北京での行事の後、いろいろ新鮮な発見があったと、大学生達は筆者に教えてくれた。筆者からも、学生達に対して、幅広い人に会い、沢山の本を読み、そして交流と討論を通じて、思索を深め、相互理解を増進するようにと励ました。 
 
●新時代の交流にエールを送る 
 
 大学生による交流プログラムは、学生達が自ら歩いて汗を流して資金集めをしている点が素晴らしい。交流を支援してくれるスポンサーには感謝しないといけない。 
 コミュニケーションは多くの場合英語を通じて行うことになるので、英語能力は必須である。英語で表現することを通じて、独りよがりではない、論理的な表現をすることが迫られるというプラスの面もある。 
 じっくりと議論するために、時間を十分とることも必要であろう。 
 何よりも日中の学生が自らプログラムを作り上げていくことで、苦労を分かち合いながら本当に共同作業をした実感を持ち、友人になっていけるであろう。 
 
 筆者が大学生時代を過ごした1970年代後半は、中国、韓国とこのような学生交流を自らの手で作ることなどとても考えられなかった。 
 上記の交流では、日本の学生チームの中に、中国人留学生も含まれている。これも以前は考えられなかったことである。 
 今の大学生達が、積極的に交流を自ら企画し、実現する様子を見て、本当に感心する。幅広い交流をして視野を広げるよう、応援していきたい。 
 日本の学生達が中国と交流を行うにあたっては、やはり中国の良いパートナーを見つけることが成功の鍵である。北京大学は、中国の大学の中では開放的な雰囲気があり、国際交流にも慣れており、教授達も国際交流に理解があるので良いパートナーになり得る。しかし勿論他にもパートナーとなり得る大学生を擁する大学が中国には沢山ある。日本にいる中国人教授達に相談して、紹介してもらうのも良いと思う。(つづく) 
 
(本稿中の意見は、筆者の個人的意見であり、筆者の所属する組織の意見を代表するものではない。) 


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