2006年11月11日22時45分掲載  無料記事
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日中・広報文化交流最前線

大学生の手作り日中学生交流(2) 井出敬二(在中国日本大使館広報文化センター長)

●早稲田大学と北京大学の学生交流 
 
 今秋、様々な日中大学生交流が北京で行われた。筆者は、日中の大学生達を何回かに分けて北京の拙宅に招き、学生交流の後の感想を教えてもらう機会があった。(中国の大学生達も、誘えば、臆せず、日本大使館館員の自宅に遊びに来る。) 
 早稲田大学政経学部の某ゼミの大学生(学部生)達も北京に来て、北京大学国際関係学部学生(大学院生も含む)達と交流(1日のディスカッション)を行った。以下、早稲田大学の学生達の感想を紹介したい。 
 
【A君の感想】 
 一日のディスカッションを通じて、私達は終始彼ら(北京大学の学生、大学院生)の優秀さに驚かされた。こちらは学部3,4年生、中国側は院生もいたという差もあるが、それにしても特に彼らの論理的な考え方、そしてそれを伝える英語力は自分も見習わなくては、と思うばかりであった 
 
 私は中国人に対し、何か「怖い」感情を抱いていた。話しかけられればギョッとしたし、その辺を歩いている中国人も怖い人に見えた。タクシーの運転手などもってのほかだ。しかし今回、様々な中国人と話し、気さくな人、優しい人、やっぱり無愛想な人等々多くの人達に出会う中で私の中の中国人に対するイメージは大きく変わり、一人で街中を歩くのも、食堂に入るのも、中国人と間違われて道を尋ねられるのも楽しい異文化体験になった。次来た時にはまた違った中国が見られる様、これからも中国語の勉強は継続していこうと思う。あ、あと英語も… 
 
【B君の感想】 
 私の中国に対するイメージはいわゆる「反日」であった。・・・結論から言えば、私が抱いていたほどの反日的な事象を経験することはなかった。韓国人を装わなくとも、危険な目にあうことはなかった。 
 北京大学の学生と反日・反中感情について議論を交わす機会があった。議論を通じて、彼らが日本に対して私が想像していた以上に博識であり、日本に対して友好的な立場をとっていたことは私にとって驚きであった。 
 
【C君の感想】 
 北京大学国際関係学院の学生とのディスカッションを1日という短い時間だったが行った。私にとって初めての中国ということもあり、相手側の学生がどの様に考え、またどの様な情報を持っているのか非常に興味があり、同時にお互いの立場・情報に差があるのではないかと当初考えていた。 
 このディスカッション全体を通して一致した事は、日中相互の対話を通して誤解の解消・理解の推進を進めるのが日中友好の一番の方法だということだった。この様な中国側の意見を生で聞くという貴重な経験は、是非来年のゼミ生にも経験してもらいたい。また自分も来年もう一度この北京合宿に参加しようと思っている。 
 
【D君の感想】 
 今回の合宿を通じて、語学力の大切さを痛感した。日本語学科でない学生とアカデミックなことをやるにはやはり、英語か中国語が必要だと思う。通訳を介しては伝えたいことがうまく伝わらないことがあると感じずにはいられなかった。実りある内容にするには、私たち自身の語学力を向上させる必要があると思う。また、学生同士なのだから、もっと忌憚無く自分の意見を言い合えたらよかったと思う。それをできなかったのはやはり“言語の壁”というものだろうか。 
 そう思わざるをえない合宿だったが、語学を勉強すれば来年はもっと良いものになるという確信も私はある。来年に向けての良い刺激になったことを考えると、結果的には良い経験だったと思う。 
 
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 筆者は、大学生どおしが自力で(大人の力を全く借りないで)このような交流と議論を行っていることは本当に素晴らしいと思う。日本の大学生にとっても、様々な議論を通じて、大いに刺激を得、問題意識を養ったようである。日本の若者にとって、外国語能力、論理的なコミュニケーション能力が必要との意見には、筆者も全く同感である。 
 上記の感想では早稲田の大学生は謙遜しているが、中国の大学生との交流を持ちかけ、訪中するというイニシャチブを発揮したこと自体、最近の日本の大学生の優れた特質の一面を表していると思う。 
 欧州の学生ならば隣りの国に気軽に行くことができるが、日本の学生にとっては、まだまだ隣りの国に行くのもいろいろと面倒があり、コストがかかる。しかし、それをものともせずに乗り越えて、日本の学生が積極的に交流を展開し、様々な刺激を得、キャンパスに戻って勉学に励み、読書も沢山し、更に隣りの国の学生達と交流を盛んにして頂くことを期待したい。(つづく) 
 
*本稿は2006年9月24日掲載の「大学生の手作り日中学生交流」の続編である。 
 
 
(本稿中の意見は、筆者の個人的意見であり、筆者の所属する組織の意見を代表するものではない。) 


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