2007年02月19日12時22分掲載  無料記事
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日中・広報文化交流最前線

バレンタインデー(情人節)から「春節」へ 井出敬二(在中国日本大使館広報文化センター長)

  今年の2月19日〜22日は、中国の旧正月(「春節」)であり、中国全体で25日まで含めて、この1週間は仕事は完全にストップする(日本大使館も19〜22日は休み)。また2月全体が大学が春休みであり、教職員とも連絡がつかなくなる。中国人達は一斉に故郷に帰省するので、電車や飛行機の切符も入手しにくくなる。日本の政府官僚や、ビジネスマンにとっても、中国と仕事をしている人達は、中国の旧正月を念頭に仕事を組み立てる必要がある。それとともに西洋伝来の祝祭日にも要注意である。 
 
●中国のバレンタインデーは要注意 
 
 中国でもバレンタインデーを祝う習慣が定着し、派手になってきている。2月14日は、2月17日(旧正月の大晦日)からの春節連休直前ということで、だんだんと祝日の雰囲気が盛り上がっていく、その序曲という感じであった。 
 デパート売り場でもチョコレートが沢山売られている風景は、日本に似てきている。チョコレートを派手にプレゼントするのは日本で始まった習慣とのことである。日本と中国とで異なるのは、中国では男性が女性にプレゼントをするのである。チョコレートと共に、バラもプレゼントとして定番であり、バレンタインデー前にはバラの値段も高騰する。職場などで「義理チョコ」を配る習慣はまだ無いようだが、チョコレート消費は今後増えていくであろう。 
 
 バレンタインデーのことを、中国語では「情人節」という。「情人」とは、「恋人」という意味だが、「愛人」という意味もあるようだ。2月14日の夕方から、カップル達が外出するためか、北京市内の道路も車で混雑し、レストランもどこも賑わいを見せた。知り合いのレストランの店長も、「2月14日は久しぶりに沢山の予約が入って、稼がせて貰いました」と筆者に話してくれた。 
 春節前の中国では、よく迎春レセプションなどが開催されているが、この2月14日の夜には仕事の食事やレセプションなどのお誘いがなかった。これはカップル達への配慮であるが、家庭を持つ男性達には家庭で奥さんと一緒に過ごすようにとの配慮でもある。もしこの夜、夫が「仕事で夕食を外でとる」と言えば、奥さんは「もしかしたら愛人と一緒に外で夕食をとっているのではないか」と心穏やかではないことになるかもしれない。ということで、この日に仕事の夕食を入れるのは野暮というものなのである。これが中国人の知り合いから受けた助言である。 
 
●中国伝統の祝祭日と西洋の祝祭日の対立? 
 
 中国ではクリスマスも賑やかに祝われているようになっている。クリスマスやらバレンタインデーなどの西洋の祝祭日が、中国で商業主義とともに広まってきたことに対しては種々の議論が起きている。 
 2月14日付人民日報には、中国の伝統的な祝祭日を忘れるべきではないし、祝祭日を商業主義で煽るべきではないとの馮驥才・中国文聯副主席による論が掲載されている。この馮驥才氏は多くの著書を著している。同氏がまとめた文化大革命についての本については、昨年10月8日に日刊ベリタに掲載した記事(「日本人が読むべき中国人の著作は何か」を参照頂きたい。同氏の主張は、多くの中国人が、自国の歴史と文化を知らないことに対して向けられているようである。 
 
 クリスマスについても、中国では「なぜ西洋の祝祭日を中国で祝う必要があるのか」との論争がある。筆者は、昨年12月、北京市内の某大学の日本語学部学生約100名に講演をしたのだが、「中国の若者がクリスマスを祝うことの是非についてどう思うか」との質問を受けた。 
 これに対して筆者は、「クリスマスを祝うか祝わないか論争するのも良いが、より大切なことは、皆さん達中国の学生さん達がキリスト教をバックボーンにする西洋文明を、そしてそれと共に非キリスト教文明であるアジアの文明を共に理解することだと思う。それは学生の皆さんにとって、たとえばアジアの近代化の意味を考察する上で必要なことである」と発言させてもらった。学生には、自国の、そしてそれ以外の文明圏の文化、伝統、歴史について理解を深めて貰いたいと思う。(つづく) 
(本稿中の意見は、筆者の個人的意見であり、筆者の所属する組織の意見を代表するものではない。) 


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