2007年03月05日14時21分掲載  無料記事
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検証・メディア

ロイター、アフリカ・サイトで市民記者と提携  ベッキー・ホッジェ

openDemocracy  【openDemocracy特約】「ロイターは外部ソースから提供された内容について責任を負わない」。国際通信社ロイターの新しいポータル、africa.reuters.com.にあるブログのリンク・リストの下にそう注意書きがしてある。その免責条項とともに、2月21日に開始されたロイターのサイトは、ハーバード大学に本部があるGlobal Voicesを含む多くのソースからアフリカのニュースを集めるとしている。 
 
 Global VoicesはGeekCorps(訳注:第3世界でコンピュータ・ユーザーを養成する平和部隊)の創設者であるEthan ZuckermanとCNNのジャーナリスト、Rebecca MacKinnonによって、2004年12月に開かれたブログに関する会議の結果、Berkman Center for Internet and Societyを拠点にして設立された。Zuckermanの基本的な認識は、米国のブログは互いに話をしながら、既成の報道機関に多くの露出を得ているが、米国以外の他の世界から発せられるブログはもっと多くの読者を必要としているというものであった。 
 
 二人は、均衡を取り戻すことに乗り出した。ボランティアの地域エディターのチームを募り、英語を使う世界が世界的な会話に耳を傾けるよう、国際的なブログ界での活動の毎日のダイジェストである、「ブリッジ・ブログ」をたくさん作った。2005年後半、ロイター財団の資金的な支援を受け、ロンドンの本社で最初の国際会議を開いた。 
 
 当時、多く人たちがロイターと関係を持つことでプロジェクトがどうなってしまうのか考えた。新しいアフリカ・ポータルについての2月22日の発表は、これに一部答えている。Global Voicesの内容はReuters Africaの最初のページには見えないが、"News by Country"のページを選ぶと、その配信ははっきり見える。 
 
 例えば、ロイターとその人道的危機に関する通信であるAlertNetによるコンゴ民主共和国からの最新ニュースの見出しの右に、"Blogs ... Provided by Global Voices*"(*は内容の免責条項を示す)とある下にリンクがある。あるリンクは、同国の北西部で広く話されているバンツー語系のリンガラ語の豊かさについての議論につながる。別のリンクはコートジボアールのサッカー選手のスター、Didier Drogbaの動きに触発された新しいアフリカのダンスの流行についてのコメントにつながる。 
 
 ZuckermanはMediaShiftのMark Glaserに対し、「新しいアフリカ・ポータルに興奮している。なぜなら、戦争と悲劇というお決まりの記事を越えた、日常の生活と意見を示しているからである」と答えている。Reuters Africaの編集長、John Chiahemenもこれに同意見で、ガーディアン紙のメディア欄で次のように述べている。「アフリカは災害の記事ばかりでなく、ビジネスの記事としてもカバーできることを示したい。アフリカの情報は他のソースからも手にいられるのは事実だが、ロイターほど幅広い内容を持ったメディアはない」 
 
スクリーンの後ろで 
 
 アフリカからの報道は困難な仕事である。リシャルト・カプシチンスキの影響は彼が1月23日に死んだ後も生き続けている。ポルトガル人が脱出した後のアンゴラの物語、「Another Day of Life 」はopenDemocracyに執筆している多くの人々を含む多数の記者を触発させ、世界に向けて報じるためにアフリカに向かわせた。それでも、そうした記者たちは新聞や雑誌からの援助を受けずに仕事をしている。 
 
 ロイターのような大通信社以外では、西側のメディアは広大な大陸の生活をカバーするのに必要な通信員を置く意欲も資金もますますなくしている。それによって、報道の生彩や奥行き、内容が損なわれている。冒険的で勇敢な若いストリンガーが自分で手配し、安全は自分で確保せざるをえなくなっている。(わたしは、わたしと同世代の通信員が暴動の直前にコートジボアールから送ってきたメールをいつも覚えている。「国連は必要要員を除いて全員引き揚げています。わたしは何が起きるのか見守り続けます」) 
 
 西側の記者の中には、独立メディアではなく災害救援の国際NGOの支援でアフリカに向かう者もいる。大陸についてのあるベテランはかつて、この新しい仕組みについて警戒を表明した。その報道によって、読者や視聴者に悲劇的イメージがあふれる懸念がある。餓えた子供たちや難民の姿のむこうに、報道されない文化や背景がある。そうした状況は、アフリカの問題を解決するうえで西側の想像力を妨げることになりかねない。 
 
 ロイターが当初、Global Voicesと提携した際、多くの人たちは、Global Voicesが育てている市民ジャーナリストが西側ニュース機関が世界中に派遣している記者に取って代わると信じた。実際このシナリオは、いつでも無料で手に入る新しいメディアに収入を奪われると文句を言うメディア伝統主義者に示された。それはしばしば嘲りの響きを持っていた。 
 
 ロイターが当面選んだ道はずっと微妙なもののようだ。ロイターのChris Ahearn社長はMediaShiftに対して、「ジャーナリストの世界には懸念がある。『彼らがわれわれの代わりをするようになるのか』。答えはノーである」と述べている。そうではなく、ロイターのGlobal Voicesの記事は、伝統的な西側報道が、どのような理由があるにせよ、見過ごした深みと背景を提供できる。 
 
 しかし、インターネットの普及が非常に遅れている大陸の姿を伝えるのに、ブログに頼ることは本当に可能なのであろうか。アフリカの首都は全部、インターネットに接続しているが、携帯電話によって通信革命が進んでいる農村部はまったく異なる。大陸ではネットの接続が急速に伸びているが、2007年当初の全体の普及率は人口の3.5%でしかない。これに対し、アフリカ以外の世界を合わせた普及率は18.8%である。表現の自由とネットワーク・コミュニケーションに関する会議でナイジェリアの代表団と2週間前に会った際、こうした状況を痛感した。どの代表もブログの経験をしたことがなかった。 
 
 Global Voicesの編集長、Rachel Rawlinsは、ロイターの動きは「報道機関が取材する出来事への洞察や背景を提示するうえで、信頼できる声の力量が評価されていることを示している」と思う。しかし、彼女はこれが提供する価値は初期段階のものであることを認識している。ロイターのプロジェクトを発表するに当って、Rawlinsはこう結んでいる。「このようなプロジェクトへのブロガーが関与することで、これまで彼らの声が無視されてきた人々に舞台が与えるられるばかりでなく、その他の人々に会話に加わり、話したくてもできない人々の代わりに圧力をかけることになるよう期待する」。 
 
*ベッキー・ホッジェ openDemocravcyの前テクニカル・エディター。Open Rights Group http://www.openrightsgroup.org/の事務局長。 
筆者のブログはhttp://www.machine-envy.com/blog/ 
 
本稿は独立オンライン雑誌www.opendemocracy.netに発表された。 
原文 
http://www.opendemocracy.net/media/africa_blog_4390.jsp 
 
ロイター・アフリカ 
http://africa.reuters.com/ 
http://about.reuters.com/pressoffice/pressreleases/index.asp?pressid=2825 
 
Global Voices 
http://www.globalvoicesonline.org/ 
 
Mediashift 
http://www.pbs.org/mediashift/2007/02/digging_deeperreuters_looks_to_1.html 
 
(翻訳 鳥居英晴) 


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