2007年04月11日07時21分掲載  無料記事
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日中・広報文化交流最前線

温家宝総理訪日と北京の外国メディア 井出敬二(在中国日本大使館広報文化センター長)

  4月11日から13日まで、温家宝総理が、中国の総理としては6年半ぶりに訪日する。筆者は、日本大使館のスポークスパーソンを務めているので、この訪日をどう受け止めるかという質問を中国のメディアから受けている(中国中央電視台、新聞「新京報」、「China Daily」、「(香港)文匯報」;雑誌「瞭望東方周刊」、「環球」等)。 
 北京にいる欧米アジアのマスコミにも日中関係を説明しないといけない。4月6日に、日本大使館に欧米、アジアのマスコミに集まってもらい、温家宝総理の訪日に関して、筆者から説明する機会を設けた。 
 日本として、日中関係についての説明は、世界に対して行わないといけないと言える。以下、北京での欧米アジアのマスコミとの付き合いについて報告したい。 
 
●日中関係への関心は高い 
 
 北京には、外国人記者クラブという組織があり、そこの幹事に依頼して、連絡網で情報を流して、4月6日、日本大使館に集まってもらった。日中関係への関心は高く、以下の22社の記者達が集まってくれた。 
 ─米英:Wall St. Journal, DowJones Newswires, Bloomberg, McClatchy, US Public Radio、AP, UPI, Global Radio News 
 ─欧州大陸(独、仏、スペイン、デンマーク):German TV EDF, Frankfurter Allegemeine, German Business Weekly, DRTV、AFP, Figaro、ABC Spanish News Agency, El Pais, La Vanguardia Newspaper、Danish Broadcasting Corp. 
 ─アジア、中東:Straits Times, 連合早報、アルジャジーラ、Kazakh News Agency 
 
 筆者からより昨年10月の安倍総理訪中後の日中関係の動向と今後の課題について背景説明した。(「背景説明」というのは、温家宝総理訪日の結果がどうなるのかは、4月6日時点ではまだ分からないので、その前に、これまでの日中関係における諸懸案について経緯・背景や日本の立場などを説明するという趣旨である。日頃、日中関係を専門に追っている訳ではない欧米アジアの記者達にとっては、頭の整理になる。) 
 記者達からは、中国の対日外交の動向、日中国民間の相互理解、ODA、靖国神社、慰安婦、拉致、東シナ海ガス石油開発、日中の経済分野の協議、日中貿易動向、日中FTA、防衛交流、欧州の対中武器禁輸解除問題、台湾、国連改革等について、沢山の質問が出された。 
 
●アジア報道の拠点が中国に 
 
 2005年4月に、北京では反日デモと町村外務大臣(当時)の北京訪問があったが、その際にも、筆者は、欧米アジアの記者達に日本の観点を説明する作業に忙殺された。筆者自身、ドイツ、英国、フィンランド、オーストラリア、香港、アルジャジーラなどのテレビ、ラジオのインタビューを受け、日本の立場を説明した。また欧米アジアの記者50名位を日本大使館に集めて、筆者から日中関係の歴史、日本の対中政策について説明した。 
 印象的だったのは、筆者が1972年の日中共同声明等の重要文書の英文コピーを配布し、既に日中間の「不正常な状態」は終了しており、戦争に関する問題は決着済みであると説明したところ、イタリアの女性記者が、「え、そうだったの」と驚いていたことである。彼女には、早速、1972年の日中共同声明の英語版を読んでもらった。このこともあって、日本大使館のウェブ・サイトは、それまでは日本語と中国語のみであったが、急遽英語のウェブ・サイトも簡単なものながら開設し、これらの基本文書の英語版を収録することとした。 
 
 欧米メディアの中には、コスト削減の観点から、日本には特派員を置かないで、北京にのみ特派員を置いている社もある。また、日本にいる特派員は、日本の社会面的なネタばかりを追い、北京にいる記者が、これからのアジアの展望といった、より大所高所の記事を書いている場合もある。 
 昨年10月の安倍総理訪中の際にも実施したが、節目の重要な出来事の際には、北京においても、これらの欧米アジア記者達に、基本的な事実関係と日本の考え方を理解してもらうように説明を実施していくことが重要だと考えている。 
(つづく) 
(本稿中の意見は、筆者の個人的意見であり、筆者の所属する組織の意見を代表するものではない。) 


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