2007年05月10日12時00分掲載  無料記事
http://www.nikkanberita.com/print.cgi?id=200705101200274

日中・広報文化交流最前線

広東テレビが在日中国人留学生を紹介 井出敬二(在中国日本大使館広報文化センター長)

  5月5〜7の3日間、夕6時から30分間、日本に留学・研修している中国人達を取材したテレビ番組「彼らは日本留学している」が、広東テレビで放送された。このテレビ局は、広東省という地方のテレビ局だが、衛星を通じて中国全国に放送されており、筆者は北京の自宅でこの番組を見た。日本の外務省、在中国日本大使館と在広州日本総領事館が、広東テレビおよび元日本中国人留学生組織と協力した結果、制作、放送されたものである。日本で中国人がどう暮らしているかということを長時間かけて報道した番組は大変珍しいので、紹介したい。 
 
●「留日同学会」との共同企画 
 
 昨年9月、既にこの「日中・広報文化交流最前線」でも紹介したが(昨年9月10日)、筆者は、広東省広州市を訪問し、広東テレビ(「広東電視台」)のトップ(「台長」)と面会し、日本と中国の協力の歴史と現状を取りあげた番組を作り、同テレビで放送するというアイデアについて意見交換した。これは中国で活動している元外国留学生組織である欧米同学会・海外留学人員聯誼会の中にある「留日同学会」のメンバーが、広東テレビと考え出した企画であり、それを日本側に持ちかけてきたものである。 
 
 広東テレビは既に昨年、「留学100年」と題するテレビ番組を制作、放送しており、その中で、近代において、日本をはじめ世界各国に留学した中国人を紹介した。日本編を見たが、近代中国建設に大きな役割を果たした錚々たる面々が日本留学経験者であることが紹介されている。 
 その続編として、現代の日本において、中国人留学生、研修生達がどのような生活をしているのかを取りあげた番組を制作しようというアイデアが持ち上がり、在中国日本大使館、在広州日本総領事館を通じて外務省にも協力を求め、日本国内の様々な大学、関係機関に話しをつないで、この番組が制作されたものである。 
 
 中国の改革開放以来、現代化のために、日本留学、日本での研修などの面で日本が中国に様々な協力をしてきたことについては、中国ではまだよく理解していない人がいる。また日本では中国人がいじめられているのではないか、といった誤解を持っている中国人達もいる。中国のメディアでは、中国人留学生、研修生が日本で苦労をしている、悪い待遇を受けている、といった報道が時にされるが、多くの中国人の若者が日本で順調に留学・研修生活を送っていることはニュースにならないとして、報道されていない。筆者は、かねがねこのような報道状況は、中国における対日理解を助けないと思っていたので、この企画の実現には強く期待していた。 
 
●研究生活に打ち込む大学院生たち 
 
 番組自体は中国人の取材チーム、カメラマンと欧米同学会・海外留学人員聯誼会の中の「留日同学会」のメンバーが訪日取材し、制作したものなので、中国人から見て、日本での留学生生活で、どのようなことが興味深いか、という視点で制作されている。 
 日本の官庁(外務省、文部科学省など)、多くの大学(北海道大学、京都大学、広島大学、早稲田大学、法制大学)、研修・留学関係機関(国際協力機構(JICA)、海外技術者研修協会(AOTS)、日本学生支援機構)、友好団体(日中友好会館など)、中国人が研修・アルバイトをしている日本企業を実際に訪問して、インタビューも多数行っている。 
 
 各大学では、幹部、留学生受け入れ担当者達のインタビューがあるが、改めて各大学で多くの中国人留学生達が勉強していることが紹介される(北海道大学850名、京都大学500名、早稲田大学840名)。大学において留学・研究生活を送っている多くの中国人達にもインタビューがされており、日本で順調な研究生活を送り、世界的な学術雑誌に論文を発表している中国人大学院生、研究者達も紹介されている。 
 日本でどのような生活を送っているのか、費用はどの位かかるか、アルバイトはどうしているか、ということも紹介される。興味深いのは、広島に住んでいる中国人留学生夫妻は、廉価で設備の整ったマンションに住んでおり(写真参照)、中国人が想像する以上に快適な生活を送っていることも紹介されている。 
 
 また留学生のみならず、防衛研究所が多くの外国人研究者を受け入れており、その中には中国人も含まれていること、この分野での国際交流が日本では積極的に行われていることも紹介している。 
 またJICAなどによる技術研修の一環として、水上測量、国際課税などの専門的分野で日本で研修を受けている中国人も紹介している。 
 
●バイト先の餞別に感激する若者 
 
 中国人の若者達が、日本で、多くの日本人達から暖かい支援を得ていることもわかるような番組作りになっている。 
 たとえば、ある中国人は、アルバイト先の日本人から餞別をもらったことに感激して、餞別袋を二枚大切に保存して、部屋に飾っていた(写真参照)。 
 またこれまで4千人もの中国人留学生達を支援してきた日本人の企業経営者Iさんが、「自分は若い時勉強したくても、貧しくて勉強できなかった。だから今の中国人の若者達を応援したい」と述べ、その企業でアルバイトをしている中国人留学生達がこの経営者から様々な支援を受けて恩義に感じていることを述べる。 
 
 この番組を通じて、中国人達が、日本に対して、また幅広い分野での日中協力の進展ぶりについて、理解を深めてくれることを期待したい。日中双方の多くの関係者から番組制作のために多大なるご支援、ご協力をいただいたことに深く感謝したい。(つづく) 
(本稿中の意見は、筆者の個人的意見であり、筆者の所属する組織の意見を代表するものではない。) 


Copyright (C) Berita unless otherwise noted.
  • 日刊ベリタに掲載された記事を転載される場合は、有料・無料を問わず、編集部にご連絡ください。ただし、見出しとリード文につきましてはその限りでありません。
  • 印刷媒体向けの記事配信も行っておりますので、記事を利用したい場合は事務局までご連絡下さい。