2007年06月07日13時32分掲載  無料記事
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戦争を知らない世代へ

今、政府が目論む「戦える日本」、それは亡国への途 中谷孝(元日本軍特務機関員)

  まもなく87歳を迎える中谷孝さんの脳裏を行き交うのは、日本軍の特務機関員として中国戦線で過ごした青春時代である。さまざまな戦場体験の記憶は、歳とともに薄れるどころかかえって鮮明になっていく。それは、死と隣り合わせの時代だったからだけではない。今、自分たちの戦争体験が正しく伝えられず、日本がふたたび「戦争のできる国」へと突き進もうとしているためだ。日本は二度と亡国の道を歩んではならない、平和の大切さを次世代に訴えつづけなければならない、そのためには戦争の真実の歴史を戦争をしらない世代に遺すことが自分の使命ではないか。そう考える元皇軍兵士が書きとめた文章を随時お届けする。(日刊ベリタ) 
 
 今年は2007年。敗戦の1945年から62年も経ったのだ。速いものだと感じるのは齢のせいなのか。 
 
 昔話をして思うのは、すでに世間の多くの人が日本の国土にアメリカ軍が駐留していることに違和感がないことだ。今65歳以下の人なら、物心ついた時、すでに身近にアメリカ軍人が存在していたのだ。もちろん日本軍人を見た記憶はない。老人世代にとっては、これが独立国のあるべき姿だと思えない不自然な状態が、現代人にはあまり気にならないらしい。占領軍が講和成立後も居座って、その経費まで国民に負担させている、そんなお人好しの国など例がない。 
 最近ではアメリカ軍のアジア・中東を管轄する司令部を東京のベッドタウン座間市に迎え入れるという、驚くべき、否、恐るべき事態となっている。アメリカがアジアで戦争を始めたら核ミサイルの主要目標になる施設である。しかし依然、日本国民の関心は薄い。 
 
 昭和25年(1950年)、講和発効間近に起きた朝鮮戦争が直接の動機でアメリカは基地として日本の重要性を認識し、マッカーサーも日本に絶対不戦の憲法をつくらせたことを後悔したというが、日本にアメリカ軍を半永久的に駐留させるという方針はこの時期に立てられた。さらに警察予備隊と称する軍隊を作らせ漸次増強、現在世界トップクラスの戦力を持つ「自衛隊」を作り上げ、アメリカ軍の最も忠実な協力機構に育て上げた。憲法の「戦力不保持」はすでに蹂躙されているが、「不戦」だけは何とか守られている。 
 
 明治27年(1894年)の日清戦争から敗戦まで52年の間に10回出兵して35年戦った嘗ての軍国主義日本が、戦後62年間一度も戦わず、殺さず、戦死させず過ごして来ることが出来た有難味が現代人に伝わってこないのが残念だ。 
 
 今、日本の首相はアメリカにおだてられ、しきりに憲法改正を目論んでいる。日本をアメリカの橋頭堡(防禦陣地)にすることが如何に愚かなことか、わからないのだろうか。 
 
 愛国心を持つ日本国民ならば我等の国土・国民を護らなければならない。憲法九条を捨ててアメリカの先兵となる愚は絶対に冒してはならない。日本国民は沖縄戦で戦場の悲惨を知った。さらに内地でも空襲により多くの人命を失った。その記憶が今日まで平和憲法を守ってきた。然し今、戦場を知らず、想像すらできない愚鈍な政治家が多く現われ、眼前の欲に踊って憲法改正を計画している。 
 この売国行為に欺瞞されてはならない。一方的に日本を攻撃する国など存在しない。不戦の姿勢を貫くことこそ、安全保障につながる。 


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