2007年07月01日09時41分掲載  無料記事
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安倍政権を検証する

目に余る安倍政権の猝篥無用瓠ゝ腸饑民主主義の危機の中で迎える参院選挙 池田龍夫

  日本の議会制民主主義が危うい。安倍晋三政権発足から約10カ月、強権的政治姿勢が国会審議を踏みにじっているだけでなく、不透明な政治資金報告で追い詰められた松岡利勝・農水相の自殺という前代未聞の大事件が政治不信を増幅している。本来なら政権崩壊につながりかねない重大局面だが、絶対多数の自・公勢力が猖蒜板薛瓩砲覆辰討い襦こんな危機的政治状況の中で、7月29日参議院選挙が実施される。 
 
 昨年9月26日組閣した安倍首相は、意表をついて10月初め中国・韓国を訪問。冷え切った外交関係改善に取り組む姿勢を示し、一定の評価をバックに狒ソ亅瓩靴燭茲Δ妨えた。ところが、その後スキャンダルが多発する一方、歴代内閣でも例を見ないような奇妙な人事・政策決定が目立ってきた。12月に入ると、「郵政民営化反対議員」11人の自民復党を強引に実現させて物議をかもした。さらに経済財政政策のブレーン本間正明・政府税調会長が新任早々、公務員宿舎への不正入居で失脚。年末には佐田玄一郎・行革担当相が政治資金疑惑の責任をとって辞任する騒ぎも続発した。今年3月には松岡農水相の犖熱水費疑惑瓩発覚、これが引き金になって悲劇的な自殺につながってしまった。 
 
 しかし、「戦後レジームからの脱却」を旗印にした安倍首相は昨年末「教育基本法改正」を強行採決→成立させ、年頭所感で「憲法改正」を明言するに至った。そして改憲のための「国民投票法」を衆院憲法調査委員会で強行採決のあと、5月14日に成立させてしまった。とにかく、安倍政権の強行採決連発は目に余る。野党を無視した「問答無用」の傲慢さを放置すれば、議会政治は形骸化するばかりである。「教育」「憲法」をめぐる問題点は既に本欄で取り上げたので、5月末以降のホットなケースを俎上に載せ、強権的で不条理な実態を分析、考察してみたい。 
 
▽「消えた!年金記録」5千万件 
 
 「国民投票法」を一気に成立させて押せ押せムードだった安倍政権を揺るがす難問が持ち上がって終盤国会の緊張が高まり、参院選を控えて政権与党は慌てふためいている。衝撃狢莪戝騰瓩蓮◆崗辰┐診金記録」5000万件だ。ズサンな「年金行政」について民主党の長妻昭・衆院議員らは受給被害者から広範な聞き取り調査する一方、社会保険庁が隠蔽し続けてきた資料を発掘、動かぬ証拠を政府に突きつけた。 
 
 5月末の衆院厚生労働委員会では、追い詰められて言葉に窮した安倍首相が「徒に危機を煽らないでほしい」と興奮する場面も。さらに血迷った自民党は解決策そっちのけで、「今回の事態の責任は、基礎年金導入時の菅直人元厚相にある」とのビラを大量に配って民主党を誹謗中傷、これに悪乗りして菅議員を名指しで非難した安倍首相の非礼な姿には呆れ果てた。 
 
 10ポイントもの内閣支持率急落に慌てた政府・与党は5月29日、急きょ「年金時効特例法案」を国会に提出した。「年金をすでに受けている高齢者の保険料給付の記録が訂正されて年金が増額された場合、未払いだった年金はこれまで時効で5年しかさかのぼれなかったが、時効を撤廃、年金を受け始めた時点までさかのぼって一時金として支給する。未払い分は、遺族も請求できる」との法案をたった2日ででっち上げたが、最高意思決定機関である総務会に諮らず決定したことに自民党内からも強い不満が高まっているという。「早く手を打たなければ参院選で惨敗する」と、首相の焦りを反映した違いない。31日の衆院厚労委で4時間の形式的質疑のあと採決を強行、6月1日未明の同本会議で可決してしまった。 
 
 「この問題は民主党が今年1月末の今国会冒頭から本格的に追及していた。ところが政府は当初は真剣に取り合ってこなかった。あわて始めたのは最近になってメディアが一斉に報じ始めてからだ。97年以来放置してきた責任だけでなく、今年に入ってからの対応もおよそ『国民のため』とは程遠かったのである。……首相は大量のデータ照合を1年以内で終えると約束したが、果たして可能なのか。記録がなく納付した証明がない人は、弁護士や税理士による第三者機関が判断するというが、どれだけの規模の体制を作るのか。ごく短時間の審議で不明な点が解消されないまま、『後は任せてくれ』と言っても、それは無理な注文だ」 
という指摘(毎日6・1社説)は尤もで、すべてが政権維持のための犹憶〜対策瓩任△襪海箸明白である。 
 
 年金ジャーナリストの岩瀬達哉氏は「年金行政で国民はこれまで散々だまされてきた。国民はようやく気づいてきており、参院選は反発を示す大きなチャンス」(東京6・2朝刊)と述べていたが、3年前の参院選で「年金未納いろいろ発言」がたたって小泉自民党が惨敗した轍を踏む恐れに、政権与党は頭を抱えている。 
 
▽松岡農水相自殺と首相の任命責任 
 
 安倍政権への衝撃狢萋鹵騰瓩蓮⊂床農水相の首吊り自殺だ。国会で「消えた年金」追及が火を噴いた直後の5月28日昼過ぎ、衆院赤坂議員宿舎での自殺だけに、その衝撃波は大きかった。安倍首相の驚愕ぶりは想像に難くないが、1時間後に慶応病院で遺体と対面した直後の首相の冷徹で言語感覚の乏しい発言に唖然とさせられた。「残念です。慙愧に堪えない思いです。…大変安らかなお顔でした」との言葉には「大臣を死に追いやった任命責任」など微塵も感じられない。「安らかな顔」であるはずがないし、「慙愧に堪えない…」も場違いな表現ではなかろうか。 
 
 同日夕の記者会見で「私の内閣の閣僚がとった行動に対して責任を感じている」と、任命権者としての責任に触れていたものの、靖国・従軍慰安婦問題などで無反省・無責任な発言を繰り返す首相の思考パターンと同根の危険性を感じるのは杞憂だろうか。 
 
 「安倍首相は任命責任を認めているものの、それは決して形式だけのものではないはずだ。松岡氏には、以前から政治資金をめぐる疑惑が報じられていた。それをあえて閣僚に起用したのは、自民党総裁選での論功行賞ではとの見方が強かった。その後スキャンダルが噴出しても、首相はかばい続けた。昨年末の佐田行革担当相の辞任に続く閣僚更迭となれば、政権への打撃が大きすぎるとの思惑もあったのではないか。政治とカネの問題で、国民の不信は高まっている。それに正面から応えるのが政治家としての、そして首相としての王道である。政治は改めて襟を正す必要がある」(朝日5・29社説)との指摘に共感する人は多い。 
 
 松岡氏を自殺に追い込んだ直接の原因は「緑資源機構談合事件」で司直の手が迫ったことにあると観測されている折、首相が「捜査当局から『松岡大臣や関係者の取調べを行っていたという事実もないし、これから取り調べを行うという予定もない』と発言があったと聞いている」と、自殺当日の夕刻記者団に語ったことを奇異に感じた。東京地検特捜部の捜査で同機構理事数人が逮捕されているが、5月29日朝、同機構の前身「森林開発公団」元理事が取調べを苦に自殺した。官製談合の悪を捜査している最中に重要人物の相次ぐ自殺――首相が間接的とはいえ、捜査中の問題に言及するのは越権行為ではないか。「緑資源機構談合事件」捜査にこれ以上の展開は望めまい。松岡氏を終始かばい、爛淵将瓩鯢印して政権維持に狂奔する姿が垣間見えるのである。 
 
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 もう一つ、「米軍再編特別措置法」を可決、成立させた問題も重大だ。昨年5月に日米両政府が合意した「米軍再編計画」を促進させるために編み出した法律で、5月23日の参院本会議で野党の反対を押し切って成立させてしまった。沖縄県名護市など米軍再編にからむ自治体に対し、受け入れ協力の度合いに応じて交付金を支給する仕組み。普天間飛行場移転など多くの難題が残っているのに、犖切り発車疆に立法を急いだことに爛▲瓩肇爛舛遼[Л瓩箸糧稟修根強い。 
 
 「米軍再編特別措置法は2017年3月末までの時限立法。再編実施が遅れる場合は交付金の交付期間を最大5年間延長する。だが、地元の摩擦を強める強硬姿勢だけで再編が進展するかどうか疑問だ。……分権が進む一方、地方の財政事情は悪化している。再編交付金は基地関係自治体の国依存をより強め、地域の自立心をむしばむ結果を招くだけだ」と、沖縄タイムス(5・24社説)は指摘していたが、ここにも安倍政権の強引すぎる政治手法が潜んでいる。 
(池田龍夫=ジャーナリスト) 
 
*本稿は、「新聞通信調査会報」7月号に掲載された「プレスウォッチング」の転載です。 


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